2010年07月07日

宇宙:従来と違う型の超新星

暗い超新星 SN 2005E の新規の特徴は、今までに確立された超新星の分類に容易にはあてはまりません。

Tb 型、Tc 型、U型、重力崩壊型超新星は、大質量星がその生涯の終わりに爆発するときに生じ、Ta 型は質量降着している白色矮星の熱核爆発で生じると考えられています。


Perets たちは分光データから、 SN 2005E がTb 型のようにヘリウム過剰で、Ta 型に特有の水素、シリコン、硫黄のスペクトル線を欠くと結論しています。

しかし、 SN 2005E が「古い」星の環境に存在し放出物の星が少ないことから、重力崩壊型起源ではなく、低質量で古い前駆星、おそらく連星系でヘリウムが降着している白色矮星であろうと彼らは考えています。


川端弘治(広島大学)たちはそれとは異なる見方をしており、 SN 2005E は SN 2005cz に似ており、楕円銀河の中で見つかることは異例とされるTb 型超新星であるとしています。

彼らは、 SN 2005E と SN 2005cz は共に、爆発を起こす質量の低質量側(太陽質量の 6 〜 12 倍)の大質量の重力崩壊型爆発の結果生まれたとすると、最もうまく説明できると考えています。


D Branch は News & Views で、星爆発の機構についての最新の考え方からみた、これら 2 つのモデルについて論じています。



### database ###
nature 465,261-390 20 May 2010 Issue no.7296
Letters pp.322 / A faint type of supernova from a white dwarf with a helium-rich companion / H B Prets et al. (The Weizmann Institute of Science , Harvard-Smithonian Center for Astrophysics)
Letters pp.326 / A massive star origin for an unusual helium-rich supernova in an elliptical galaxy / K S Kawabata et al. (Hiroshima University)
News and Vews p.303 / Supernovae : New explosions of old stars ? / David Branch

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2010年06月03日

超大質量星:超新星 2007bi から得られた根拠

太陽のような星は、白色矮星としてその一生を終えます。

太陽質量の 140 倍以上の質量を持つ星は天の川銀河にはありませんが、もし存在するならば、それは太陽とは違う運命をたどることが理論的に予想されています。

このような星が酸素からなるコアをもつ段階まで進化すると、圧力でコアを支えていた光子が電子−陽電子対に代わり、エネルギーを吸い込んでコア崩壊が起き、「対不安定」型超新星が生じます。

近隣の矮小銀河内で生じた明るい超新星(SN) 2007bi のスペクトルと光度曲線の解析によって、このような爆発の証拠が得られました。

SN 2007bi の前駆天体は、太陽質量の 100 倍より重いコアをもっていたと推定されています。

計算から、太陽質量の 3 倍を超える量の放射性ニッケル 56 が生成した爆発であることが示され、これは体質量の酸素コアからの予想と一致しています。

このことは、初期宇宙には多くあったであろうこうしたタイプの星を目の当たりにする機会を与えてくれる、非常に重い星が近傍宇宙に存在することを意味しています。


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nature 462,535-688 3 December 2009 Issue no.7273
Letter p.624 / Supernova 2007bi as a pair-instability explosion / A Gal-Yam et al. (The Weizmann Institute of Science)
News and Vews p.579 / Astrophysics : Different stellar demise / Norbert Langer
www.nature.com/podcast


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2010年05月31日

顕微鏡法:超高解像度の顕微鏡

回折限界を超える分解能での画像化の場合、例えば細胞内の微小な特徴を解像するような場合には、画像化対象を蛍光発色団で標識する方法か、或いは、蛍光にはよらないものの、はるかに感度の低いほかの顕微鏡法を使うかしなければなりませんでした。

今回、ハーバード大学の研究チームは、以前ほかの多光子顕微鏡法で使われたことのある実験手法を取り入れた、誘導放出顕微鏡として知られる別の方法を開発しました。

この方法の感度は、標識されていない微小血管画像化や発色レポーターを用いた lacZ 遺伝子発現の検出などへの応用で実証されました。

この手法は、吸収測定より感度が何桁も高く、資料中のほかの発色団に干渉されず、三次元切片法に適しています。

重要なのは、すべての分子が誘導放出顕微鏡法の対象となりうることであります。

したがって、この方法は、かつて超解像顕微鏡では見ることができなかったヘモグロビンなどの非蛍光性物質の画像化に使うことができます。


### database ###
nature 461,109-1162 22 October 2009 Issue no.7267
Letter p.1105 / Imaging chromophores with undetectable fluorescence by stimulated emission microscopy / W Min et al. (Harvard University)
News and Vews p.1069 / Microscopy : Light from the Dark / Stefan W. Hell and Eva Rittweger


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2010年05月27日

医学:軽く触れても痛い

外傷や炎症、日焼けの後には皮膚が知覚過敏となり、ごく軽く触っただけでも激しい痛みを感じることがあります。

この症状は普通すぐに消失しますが、ずっと続いて消耗性の疼痛(とうつう)となる場合もあり、どの神経回路が関与しているかが突き止められていないこともあって、その治療は困難であります。


今回、この慢性疼痛症候群に新規なクラスの一次感覚ニューロンが関与していることが、明らかになりました。

特殊な小胞グルタミン酸輸送体 VGLUT3 を欠損する変異マウスでは、強い機械的疼痛刺激に対する感受性が低下し、外傷後の触覚刺激過敏性は消失します。

脊髄後根神経節の VGLUT3^+ ニューロンは、ヒトで快感を感じる触覚に関与するとされていた髄鞘をもたない低閾値機械受容器ですが、外傷後の痛覚過敏時には痛みの感覚を伝達するらしいです。

このことは、研究や治療的介入に新たな道を開くと考えられています。


### database ###
nature 462,535-688 3 December 2009 Issue no.7273
Letter p.651 / Injury-induced mecanical hypersensitivity requires C-low threshold mechanoreceptors / R P Seal et al. (University of California, San Francisco School of Medicine)
News And Vews p.580 / Newroscience : Unbearable lightness of touch / Liam J. Drew and Amy B. MacDermott


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2010年04月11日

細胞:こっそり隠されている変異

細胞が適切に機能するためには、メッセンジャー RNA をタンパク質に翻訳する過程が、全体として正確に行わなければなりません。

しかし、HeLa 細胞を使った研究から、タンパク質合成に使用されるメチオニン残基はおよそ 1% がアミノアシル化されて、「教科書では誤りとされる」tRNA ができることが示されました。

ウイルス感染や、ウイルスあるいは細菌という Toll 様受容体リガンドの投与によって細胞がストレス条件下にあると、メチオニンが誤ってアシル化された tRNA の割合が、以外にも大幅に増加します。

ほかのアミノ酸について調べたところ、この現象は Met に限られたものであることがわかりました。

Met 残基は活性酵素種による損傷からタンパク質を保護することが知られているので、Met の誤ったアシル化はストレスに対する本来的な防御応答かもしれません。

自然免疫および化学的に引き起こされた酸化ストレスにより翻訳忠実度が変化することが(下記の論文により)示唆されました。


### database ###
nature 462,381-534 26 November 2009 Issue no.7272
Letter p.522 / Innate immune and chemically triggered oxidative stress modifies translational fidelity / N Netzer et al. (National Institute of Allergy and Infectious Diseases)


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posted by 梵 at 22:08| Comment(2) | natureのこぼれ話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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