2006年04月18日

細胞ではたらく分子たち (3)

 前回の「細胞ではたらく分子たち (2-3)」の話の続きですが、今回は炭水化物の話です。


炭水化物

炭水化物( carbohydrate )は糖質( sugar )ともよばれ、もとは「炭素( C )と水( H2O )の化合物」に与えられた名で、多くの場合( CH2O ) n で表されます。

 炭水化物には単体である単糖、これが 2 個つながった二糖、数個つながったオリゴ糖、さらに多数つながった多糖があります。


単糖

 よく知られている単糖にグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースがあります。これらは、 6 炭糖( n = 6 )でいずれも C6H12O6 で表されますが、分子の構造がそれぞれ異なり、その性質も異なります。

単糖類のいろいろ

  3 種類の単糖類はすべて C6H12O6 で表せますが、それぞれ違った分子構造をもっています。このため、それぞれに化学的に異なった性質があります。

 グルコースは生体の主なエネルギー源であり、それを分解することにより生体エネルギーの通貨である ATP を合成します。

 血中のグルコースは血糖と呼ばれ、その濃度は厳密に制御されています。n = 5 の糖は 5 単糖とよばれ、リボースは RNA の、デオキシリボースは DNA の構成成分です。


二糖

 二糖は 2 個の単糖がゴリコシド結合したものです。マルトース(麦芽糖)、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)などがあり、それぞれグルコース 2 個、グルコースとフルクトース、グルコースとガラクトースが結合してものです。

代表的な二糖類

 マルトースは 2 個のグルコースより、スクロースはグルコースとフルクトースよりできています。

 グリコシド結合は、左側の単糖の OH と右側の単糖の H が脱水縮合してできます。スクロースは甘味量(砂糖)として用いられます。


単糖

 多糖( polusaccharide )は単糖がいくつも繋がってできます。

 動物は糖質をグリコーゲンに変えて肝臓や筋肉にエネルギー源として貯えますが、グリコーゲンはグルコースからできた多糖です。

 単糖には OH 基が複数あり、二ヶ所の OH で縮合すると枝分かれした鎖ができます。

 多糖類の中でもグリコーゲンはよく枝分かれした構造をしています。

 このよく枝分かれした構造は、グリコーゲンを迅速に合成したり分解したりするのに都合がよい構造になっています。一方、植物のデンプンもグルコースの多糖ではありますが、枝分かれが少ないものとなっています。これは、急いで合成したり分解したりする必要がないためであると考えられます。

 植物の細胞壁を作っているセルロースもグルコースの多糖でありますが、枝分かれがない構造になっており、グリコシド結合も異なります。

 糖類はタンパク質と結合して糖タンパク質を作り、脂質と結合して糖脂質を作ります。これらを複合糖質とよびます。

 これらの複合糖質は生体組織の構成物質として働くのみならず、細胞間の認識や情報伝達に重要な働きをしています。



(...to be continue...)
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2006年04月02日

細胞ではたらく分子たち (2-3)

 前回の「細胞ではたらく分子たち (2-2)」の続きとなります…。



▼タンパク質の構造

 タンパク質はひものように伸びているわけではなく、折りたたまれて立体的な構造をとっています。立体構造には、二次構造、三次構造、および四次構造とよばれる3つのレベルがあります。二次構造はペプチド鎖の主鎖間でつくられる規則的な立体構造で α へリックス、 β シート構造などがあります。

α へリックス構造 逆平行 β シート構造

 タンパク質はさらに複雑に折りたたまれて三次構造をつくります。一般に、親水性アミノ酸は表面に、疎水性アミノ酸は内部に集中します。

 タンパク質の立体構造は基本的には一次構造(アミノ酸配列)によって決まります。

 三次構造には、リボヌクレアーゼ A などが挙げられます。α へリックスや β シートや不規則な構造がさらに折りたたまれて、ほぼ楕円系の立体構造( 20 Å )を作っています。

 四次構造は三次構造をもったタンパク質どうしがさらに会合してつくる複合体構造をいい、サブユニット構造がこれにあたります。

 タンパク質はこうした高次構造をとってはじめて機能することができます。


▼タンパク質のはたらき

 生体には実に多くのタンパク質が存在し、生命活動を支えています。タンパク質の主な働きを下記に示します。

  参考資料:「タンパク質の主な働き

 構造タンパク質は、細胞や生体の構造を維持する働きを持ちます。生体に存在するタンパク質で最も多いのは構造蛋白質であり、哺乳類ではコラーゲンが全タンパク質の約 1 / 3 を占めます。コラーゲンやエラスチンは細胞外マトリックスに存在し、細胞外から生体を支えていますが、細胞内ではチューブリンやアクチンなどが重合体をつくり細胞の支持体としてはたらいています。

 細胞は数千種類もの酵素を含んでおり、個々の酵素は特定の反応を触媒します。化学実験では、酸やアルカリを加えたり高温にしたりしないと起こらないような多くの反応が、生体内では中性 pH , 37 ℃という温和な条件下で起こりますが、これは酵素のはたらきによります。

 骨格筋細胞にあたるミオシンやアクチンは動物の運動をつかさどってます。また、キネシンは微小管とともに細胞小器官の移動をつかさどり、ダイニンは織毛や鞭毛の運動にかかわります。

 血液中のヘモグロビンは酵素を、血清アルブミンは脂肪酸などを、トランスフェリンは鉄を運搬します。また、細胞膜にはいろいろな輸送体があり、イオンや少分子を、細胞膜を横断して輸送しています。

 その他、インスリンや成長ホルモンなどのペプチドホルモン、免疫グロブリンやサイトカインなどの生体防御に働くタンパク質、ロドプシンやホルモン受容体などの受容体タンパク質、多くの転写因子やヒストンなど遺伝子の活性調節にはたらくタンパク質などがあります。



(...to be continue...)
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2006年03月08日

細胞ではたらく分子たち (2-2)

 持病の再発につき、闘病中で寝込むことが多いことから、すねネタ挙げの更新が非常に遅くなっている梵であります…。さて…。まだまだ寝込みがちの梵ではありますが、科学技術が発達している分、基礎は何よりも大切です…。…というわけで…。

 前回の「細胞ではたらく分子たち (2-1)」の続きの話となります。



▼タンパク質の一次構造

 タンパク質はアミノ酸がペプチド結合で直鎖状に繋がったものです。ペプチド結合は隣り合う2つのアミノ酸の間で、一方のアミノ酸のカルボキシル基の OH と他方のアミノ酸のアミノ基の H が水( H2O )として外れてできる結合で、 HO ― CN で表されます。

ペプチド結合のでき方

 ペプチド結合のでき方は、上記の図のように、 R1 アミノ酸の OH 基と R2 アミノ酸の H が水( H2O )として外れてペプチド結合ができます。ポリペプチドはこの結合が繰り返しに起こることでできます。タンパク質はポリペプチドから成ります。

 生体内では、遺伝子 DNA の塩基配列情報に従ってアミノ酸が繋がっていき、タンパク質ができます(これについての詳細は、後の章で説明します)。

 タンパク質の中には 100 個ほどのアミノ酸からできた分子量 1 万ほどのものから、1000 個以上のアミノ酸からできた 10 万以上のものまでありますが、数 100 個のアミノ酸でできた分子量数万のものが多く存在します(アミノ酸残基の平均分子量は約 110 となりますが、これを覚えておくと便利です)。

 アミノ酸のアミノ基とカルボキシル基はタンパク質に合成される時にペプチド結合しますが、ペプチド結合に使われないアミノ基がアミノ(または N )端末に、ペプチド結合に使われなかったカルボキシル基がカルボキシル(または C )端末に存在します。

 細胞内でタンパク質は N 端末から C 端末へ向かって合成されます。ペプチド鎖中のシステイン残基の間ではしばしばジスルフィド( S ― S )結合を形成し、同じペプチド内、または異なるペプチド間で架橋構造をつくります。

 タンパク質にはアミノ酸だけから成る単純タンパク質と、アミノ酸類似外の成分を含む複合タンパク質があります。複合タンパク質には、糖タンパク質・リボタンパク質・ヘムタンパク質・金属タンパク質などがあります。

 分子量の大きいタンパク質の多くは、複数個のサブユニット、すなわち複数のポリペプチドより成ります。サブユニットは同じ場合もあり、異なる場合もあります。



(...to be continue...)

 次回は「タンパク質の立体構造」の話になります。
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2006年01月31日

細胞で働く分子たち (2-1)

 前回は「細胞ではたらく分子たち (1)」と題して細胞を作る分子の話をしましたが、第2回目の話は「アミノ酸とタンパク質の話:第1話」です。


▼アミノ酸とタンパク質

 アミノ酸とタンパク質の話については、簡単に説明することが出来ないので、「(1) アミノ酸」、「(2) タンパク質の一次構造」、「(3) タンパク質の立体構造」、「(4) タンパク質の働き」と4回に分けて進めていきます。


▼アミノ酸

 タンパク質( protein )はアミノ酸( amino acid )が繋がってできています。

アミノ酸の一般式

 アミノ酸の側鎖( R )には20種類あり、上記の図の「アミノ酸の一般式」を見てわかるように、中性 pH ではアミノ基( − NH2 )もカルボキシル基( − COOH )もイオン化し、解離型となっています。

 アミノ酸は上記の図の「アミノ酸の一般式」に示すような基本構造を持ち、炭素( α 炭素と呼ばれる)に水素( H )、アミノ基本( − NH2 )、カルボキシル基( − COOH )、それに側鎖( R )が結合しています。

 アミノ酸は中性の中溶液中ではイオン化して解離型となります。アミノ酸には互いに鏡像の関係にある L 体と D 体の立体異性体がありますが、自然界には原則として L 体が存在し、タンパク質を構成しているのは L 体のみです。

 自然界には側鎖の異なる 100 種類以上のアミノ酸が存在しますが、タンパク質中には 20 種類のアミノ酸しか使われていません。

アミノ酸側鎖(R)の種類と性質

 側鎖の性質により、親水性のアミノ酸と疎水性のアミノ酸、酸性アミノ酸(アスパラギン酸とグルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニンなど)、芳香性アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)などがあります。



(...to be continue...)

 次回は 、「(2) タンパク質の一次構造」の話です…(^-^)

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2006年01月23日

細胞ではたらく分子たち (1)

 生物は千差万別の姿を持ち、成長したり子孫を作ったり、その生命活動の多様さと複雑さと精巧さは驚くばかりのものがあります。人類の歩みの流れの中で、生命体エネルギーは計り知れないものであるがゆえに、一般的な物理現象以外の特別なエネルギーだと考えられてきただけに、これまでの学者の見解から見ても、このような生命活動が科学反応であるとはとても思えませんでした。

 事実、19世紀までは、生物には生命の力が宿っていて、その働きで独特の性質があると考えられてきました。

 しかし、今日では、生命体はすべて化学と物理学の法則に従うことがわかっています。すなわち、生物は( DNA や RNA などの物質…といった物理を元に)化学反応ではたらくシステムに過ぎません。

 とはいっても、生命の化学が特別(他の化学現象より緻密で複雑といった意味で特別)であることも確かです。

 生命の化学には大別して4つの特徴があります。第一に、その大部分が有機化学(炭素化合物の化学)に基づきます。第二に、化学反応のほとんどが水溶液中で起こり、反応温度も pH も狭い範囲に限られています。第三に、極めて複雑であり、既知のどんな化学反応系よりもはるかに込み入っています。そして、最後の第四は、生命の化学を支配しているのは、重合体よりなる巨大な高分子物質であることです。

 本章では、数回にわたって、細胞や生体をつくる物質とその性質、またそれらの物質がどのような働きを担っているかについて見ていきましょう。



細胞をつくる分子

 生体や細胞は、単純な無機物から極めて複雑な高分子有機化合物まで、多くの分子からできています。

 大腸菌とラット肝臓を例に、代表的な細胞の組成を次に示します。

   (参考資料として:代表的な細胞の生化学構成

 細胞によってその割合は異なりますが、細胞や生体に最も多く含まれる物質は水です。水は生体で起こるすべての反応の媒体です。水を除くと、残りの生体成分のほとんどを生体高分子が占めます。主要な生体高分子タンパク質核酸( DNA と RNA )多糖類の3つです。

 主要な生体高分子の中で最も多いのはタンパク質で、多くの動物細胞ではおよそ20%を占めます。

 タンパク質は細胞の構造をつくったり、酵素として生体の化学反応を支えたりしています。DNA は遺伝物質として、RNA はリボソームRNA 、メッセンジャー RNA などとして働いています。

 多糖類においては、炭水化物はエネルギー源として、動物ではグリコーゲン、植物ではデンプンの形で貯蔵され、また植物ではセルロースとして存在します。脂質はリン脂質として膜を構成したり、中性脂肪として蓄えられエネルギー源となります。

 これらの他に、アミノ酸やヌクレオチド、ペプチド、脂肪酸などの低分子有機物質や、Ca^2+ , Na^+ , K^+ , Mg^2+ , Fe^2+ , Cl^− , リン酸などの無機物が存在し、それぞれ重要な役割を果たしています。




(...to be continue...)

 次回より、各物質についての細かい話になります…。
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2006年01月18日

細胞生物学から細胞を学ぶ

 私たちの体の中には、およそ60兆個の細胞があります。1個の細胞の大きさは、種類によって異なっていますが、およそ(平均的なものは) 5 〜 10 μm です。国際的なヒトゲノムプロジェクト(ヒトのもっているすべての DNA の塩基配列情報を読み取ろうとするプロジェクト)が終了し、ヒトはおおよそ3万2千程度の遺伝子をもっていることが明らかになりました。

 これらの DNA を一列に繋ぐと、1個の細胞の中に含まれている DNA の長さはおよそ 1.8 m にもなります。即ち、わずか 10 μm ほどの球の、そのまた小さな一部である核の中に、 1.8 m もの DNA が折り畳まれているのです。

 私たちの ゲノム DNA のもつ情報量の総数は、およそ 30 億塩基対であり、これを各巻 1000 ページからなる大英百科辞典に換算すると、280 巻の厚さにもなるという計算があります。一方、私たちの体の中のすべての細胞の DNA をもし一直線に並べたら、地球と太陽の間を 300 往復する長さ( 1000 億 km )になるよいう驚くべき換算もあります。

 個々の細胞は、とても目には見えない極少の存在です。しかし、その内部には驚くべき量の情報が詰まっており、その情報に従って、さまざまな分子が相互作用し、構造を造り、そして生命活動を営んでいるのです。

  細胞生物学でちょっとした豆知識

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2006年01月16日

細胞生物学で見る生物の起源 (3)

 ちょっと前に戻りますが細胞生物学で見る生物の起源 (1)細胞生物学で見る生物の起源 (2)の続きです…。



▼細胞説の成立

 1665年、英国のフック( Robert Hooke )は、自作の顕微鏡を用いて、はじめて細胞の観測を行いました。フックは、コルクやシダの茎などの観察を通じて、それらが多くの区画からできていることを見出し、これを《セル》( cell :小さな部屋の意)と名付けました。

 Cell は「細胞」と訳されますが、最初に「細胞」という言語を用いたのは、江戸時代の学者宇田川榕菴であり、1833年(天保 4 年)のことであるといいます。

 1838年にはドイツの植物学者シュライデン( Mathias Schleiden )が、翌年39年には同じくドイツの動物生理学者シュワン( Theodor Schwan )が、生物の基本単位は細胞であることを主張し、ここに所謂「細胞説」が確立することになりました。

 1855年にはドイツの病理学者ウィルヒョウ( Rudolph Virchow )が、有名な「すべての細胞は細胞に由来する」"Omnis celluae e cellule" という言葉によって、細胞が細胞から生まれるものであることを示唆しました。

 このことを実験的に厳密に証明したのは、フランスの微生物学者パスツール( Louis Pasteur )でした。パスツールは特別に細工したフラスコの中に煮沸した酵母エキスを入れ、外から微生物が侵入しない限りは、そこに新たな微生物は生まれないことを証明し、それまでの「生命の自然発生説」を根底から否定したのです。
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2006年01月10日

細胞内部の構築 (5)

 さて…。細胞内部の構築 (1)では、細胞内部にある、核の構造についての話を述べ、細胞内部の構築 (2)では、小胞体構造についての話を述べ、細胞内部の構築 (3)では、ゴルジ体とリソソームの話をしました。細胞内部の構築 (4)では、ペルオキシソームとミトコンドリアの話をしましたが、植物以外はこれらによって細胞が形成されています。

 今回は、植物細胞では上記のものにさらに加わる葉緑体の話です。

 
▼葉緑体

 葉緑体はクロロプラスト( chloroplast )ともよばれ、高等植物や紅藻などの植物に存在し、光合成を行う細胞小器官です。高等植物の葉緑体は直径 10nm 、厚さ 20 〜30nm の円盤状またはフットボール状で、細胞あたり数十個含まれていますが、紅藻やコケの中には1個しか存在していないものもあります。

 葉緑体は内外2層の包膜( envelop )で包まれ、その内部はストロマ( stroma )とよばれる水溶性部分と、扁平な袋状の膜が重なった膜系に分かれています。これを電子顕微鏡で観察すれば、内部にある扁平な袋(チラコイド)が重なったグラナという構造が見られます。チラコイドを除いた基質(ストロマ)はでんぷん顆粒や脂肪滴などを含んでいます。

 膜系には小型のチラコイド( thylakoid )が積み重なったグラナ( grana )と、それを繋ぐ大型のチラコイドがあります。チラコイドには光合成色素、電子伝達系、ATP 合成酵素が存在し、光エネルギーを化学エネルギー( ATP と NADPH )に変換する明反応を行います。チラコイドにはクロロフィルを含むため緑色を呈します。

 ストロマまではチラコイドで生成したエネルギーを使って炭酸固定をする暗反応が行われます。

 葉緑体は独自の葉緑体 DNA とその複製・転写・翻訳系をもち、部分的な自己増殖性を示します。
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2006年01月07日

細胞内部の構築 (4)

 細胞内部の構築 (1)では、細胞内部にある、核の構造についての話をしました。細胞内部の構築 (2)では、小胞体構造についての話をしました。細胞内部の構築 (3)では、ゴルジ体とリソソームの話をしました。第四回目の本日は、ペルオキシソームとミトコンドリアの話をします。



▼ペルオキシソーム

 ペルオキシソーム( peroxisome )は直径 3 〜 10 nm の球状の細胞小器官で、一枚の膜と、それに囲まれたマトリックスにより成ります。ペルオキシソームのマトリックスの中にはしばしば電子密度の高い core が見られます。

 最初はミクロボディー( microbody )と名付けられましたが、その後この顆粒中に過酸化水素( H2O2 )を生成する一群のオキシダーゼと、それを分解するカタラーゼが局在することが見出され、ペルオキシソームという機能的名称が提唱されました。現在はこの名称が定着しています。

 上に述べたH2O2 のほかに、極長鎖脂肪酸のβ酸化やプラスマローゲンなどのエーテリン脂質の合成など多くの機能を有します。坑脂血剤などの薬物の投与により、肝臓のペルオキシソームが著しく誘導されることが知られています。

 ペルオキシソーム病は、ペルオキシソーム酵素が欠損したり、ペルオキシソーム形成が傷害されたりする先天性代謝異常症です。ツェルベーガー症候群( Zellweger syndrome )では形態的にペルオキシソームが認められず、その形成が障害されています。ペルオキシソーム形成に関与する遺伝子が多数単離されており、これらの異常はペルオキシソーム病の原因になることがわかってきました。

 ペルオキシソームおよび類似の顆粒は植物やカビにも存在し、植物の脂肪性種子の発芽過程で現れるグリオキシソーム( glyoxisome )も基本的にはペルオキシソームと同じです。


▼ミトコンドリア

 ミトコンドリア( mitochondrion , ( pl. ) mitochondria )は、糸状あるいは顆粒状の細胞小器官で、栄養物質の酸化によるエネルギーを用いて ATP を合成する酸化的リン酸化を主な役割としています。

 独自の DNA とその複製・転写・翻訳系を持ち、分裂により半自律的に増殖します。高等動物では 1 細胞あたり 100 〜 2000 個ほど含まれます。

 ミトコンドリアは内外2枚の膜に包まれており、外側から外膜、膜間腔、内膜、マトリックスの4つの区画に分かれています。

 内膜はマトリックスに向かって櫛状またはひだ状に折れこんでクリステを形成しています。ミトコンドリアを電子顕微鏡で観察すると、内膜がマトリックス内に櫛状またはひだ状に折れこんでクリステを形成していることがわかります。

 内膜には電子伝達系や酸化的リン酸化の系が存在し、ATP を合成します。

 ミトコンドリアの ATP の合成については、その詳細の一部を「ミトコンドリアの構造 (1)」と「ミトコンドリアの構造 (2)」で述べています。
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2006年01月06日

細胞内部の構築 (3)

 細胞内部の構築 (1)では、細胞内部にある、核の構造についての話をしました。細胞内部の構築 (2)では、小胞体構造についての話をしました。第三回目は、ゴルジ体とリソソームの話となります。



▼ゴルジ体

 ゴルジ体( Golgi body )はゴルジ装置( Golgi apparatus )ともよばれ、ゴルジ( C. Golgi : 1898年)により発見されました。核周辺に存在し、扁平な袋状の小のうが数層重なって層板の粗面小胞体に近接する面(凸面)をシス部、反対の面(凹面)をトランス部、その中間を中間部とよびます。

 一般に、ゴルジ層板は杯状に湾曲しており、シス部は凸面、トランス部は凹面となります。

 ゴルジ体は分泌タンパク質などの細胞内輸送の最も重要な中継基地であり、粗面小胞体でつくられたタンパク質はゴルジ体のシス側に運ばれ、中間部を経てトランス側へ輸送されます。この過程でタンパク質の糖鎖は種々の修飾を受けます。

 トランス部の最外層はトランスゴルジ網( trans Golgi network )を形成し、タンパク質はここで目的地ごとに選別され、分泌顆粒、分泌小胞、リソソーム小胞などが形成されます。一方、シスゴルジ網からは小胞体に向けて逆向きの小胞輸送が行われます。細胞分裂期にはゴルジ体が断片化します。


▼リソソーム

 リソソーム( lysosome )は細胞内外の物質の加水分解・消化を行う一重膜の細胞小器官で、ドデューブ( C. deDuve )により lyso (溶かす) some (顆粒)の意から命名されました。

 リソソームにはゴルジ体から生成される一次リソソームと、一次リソソームが食胞(ファゴソーム: phagosome )と融合してできる二次リソソームとがあります。

 一次リソソームは直径 2.5〜5nm の高電子密度の顆粒として観察されます。リソソーム膜上には ATP 依存性のプロトンポンプが存在し、リソソーム内は pH 5 近傍に保たれています。また内腔には酸性の最適 pH をもつ数十種類の加水分解酵素が局在しています。

 二次リソソームは内容が不均一で多様な形態が観測され、細胞外から取り込んだ異物や、不用になった自分の細胞小器官などを分解します。

 リソソームに局在する加水分解酵素が欠損すると、その酵素の基質がリソソームに蓄積し、リソソーム病を起こします。その結果、固体である人体では、小児期に多彩な症状を示す進行性の病気として現れ、中枢神経障害を伴うことが多いことがわかっています。
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2006年01月05日

細胞内部の構築 (2)

 前回の細胞内部の構築 (1)では、細胞内部にある、核の構造についての話をしました。今日はその続きとなりますが、「細胞内部の構築 (2)」と題しての、小胞体の話となります。



▼小胞体

 真核細胞の細胞質内には網目状に広がる膜系があり、ポーター( K. R. Porter :1953年)によって電子顕微鏡観察で見出され、小胞体( endoplasmic reticulum : ER )と名付けられました。一重膜に包まれた細管状または平板状をしており、細胞皮質全体に広がっています。その内部に小胞体内腔(ルーメン: lumen )をもちます。小胞体膜と核外膜はつながっています。

 細胞を破砕すると小胞体はちぎれて膜小胞となり、細胞破砕液の分画遠心によって、主としてミクロソーム画分に回収されます。小胞体は細胞内に存在する膜系についての名称であり、ミクロソームは細胞分画によって得られる膜小胞画分を意味するのが一般的です。

 小胞体には膜の細胞質ゾル側に多数のリボソームが付着している粗面小胞体と、リボソームが付着していない滑面小胞体に大別されます。粗面小胞体膜と滑面小胞体膜は連続しています。


  1. 粗面小胞体


  2.  リボソームが付着した粗面小胞体( rough ER )では、分泌タンパク質をはじめとして細胞膜タンパク質、ゴルジ体タンパク質、リソソームタンパク質、小胞体タンパク質などのタンパク質の合成と小胞体内への輸送が行われています。

     大量のタンパク質を細胞外に分泌する膵臓の外分泌細胞や内分泌細胞、肝細胞などでは粗面小胞体が著しく発達し、何層も平行して配列しています。通常は扁平な袋の形をとり、細胞質ゾル側の膜表面にリボソームが付いています。

     粗面小胞体の膜にはタンパク質を小胞体へ送り込むタンパク質透過チャネルが存在し、タンパク質はリボソーム上で合成されつつチャネルを通過して小胞体内腔へ輸送されます(翻訳を共役した輸送: co-translational transport )。

     小胞体を通過するこれらのタンパク質のほとんどは N 末端側にシグナルペプチド( signal peptide )をもち、これを介して小胞体膜に結合します。

     小胞体内腔ではシグナルペプチドの切断除去、糖鎖の付加、分子内または分子間ジスルフィド( SS )結合の形成、タンパク質の折りたたみや多量体形成などが行われます。

     小胞体内には Bip ( GRP 78 )やカルネキシンなどの分子シャペロンが存在し、新生ポリペプチドの折りたたみや会合体形成を促進します。異常なタンパク質が生じると、その凝集を防いだり、細胞質ゾルへ輸送して分解する品質管理の仕組みを備えています。


  3. 滑面小胞体


  4.  滑面小胞体( snooth ER )にはリボソームが付着せず、タンパク質の分泌を活発に行っていない細胞の小胞体はこの形態を示します。

     滑面小胞体ではリン脂質やコレステロールなどの脂質の代謝が行われ、複合脂質合成の盛んな細胞では滑面小胞体が非常によく発達しています。通常、管の形をとり複雑な網目を成します。リボソームの付かない平滑な膜が特徴です。 Mt, ミトコンドリア、副腎皮質細胞などがこの形をとります。

     また、シトクロム P450 やシトクロム b_5 とこれらの還元酵素から成る電子伝達系がおもに滑面小胞体に存在し、ステロイドホルモンなどの内因性物質やフェノバルビタールなどの薬剤や種々の発癌物質の代謝に関与しています。

     肝細胞ではタンパク質分泌と薬物代謝がともに活発に行われ、粗面小胞体と滑面小胞体がともによく発達しています。

     滑面小胞体はまた、細胞内 Ca^2+ プールとしてシグナル伝達に重要な機能を果たしています。

     骨格筋に存在する筋小胞体( sarcoplasmic reticulum )は滑面小胞体の Ca^2+ を取り込み、放出、貯蔵機能が高度に発展したもので、細胞質ゾルの Ca^2+ 濃度を制御することによって、筋を収縮させたり弛緩させたりします。

     滑面小胞体がもつ機能は粗面小胞体にも存在しますが、その活性は低いと考えられています。
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2006年01月04日

細胞内部の構築 (1)

 梵の場合、固体から見た医学よりも、分子ベースや細胞ベースがお気に入り分野です。アッテンボロー卿のものも梵のお気に入りなのですが、宇宙から生物を見ると、粒子素粒子あたりまで遡り、もっと面白いですねですね…(〃▽〃)

 まぁ…。今じゃ、世の中は逆転し、ゲノム視点は基礎中の基礎のようなものでもあるのですけどね…(苦笑)。それは、昔は、現在の教科書に載っているような内容は、nature などの科学誌では論文として挙げられてきたわけで、一般的にはマニアな分野として軽視されてきた分野でもありました。そんなわけで、教科書を見ては、ああ、これ…論文を見たことがあるな…なんて思い出してしまう梵でもあります。されど、論文…。論文であるだけに、論文で挙げられたものを繋ぐのに、教材の存在はとても嬉しい梵でもあります。

 さてと…。こんなところでむにゃむにゃしてないで、本題に入りますかね…。


 細胞とはいかなるものぞや? …ということで、細胞生物学よりみていけば、次のようになります。



▼細胞内部の構築

 真核細胞では、細胞膜と同じような膜が種々の構造を作り、動物の器官のようにいろいろな働きをしています。細胞小器官またはオルガネラ( organelle )とよばれ、これらの共同作業により細胞の生命活動が営まれています。細胞小器官には核、小胞体、ゴルジ体、リソソーム、ペルオキシソーム、ミトコンドリアなどがあります。植物細胞ではさらに葉緑体などが加わります。


▼核

 真核細胞は核膜で包まれた核( nucleus )(細胞核ともよばれる)を有します。核内には遺伝子情報を担う ゲノム DNA が折りたたまれています。核は一般的に球型ですが、細胞によっては楕円形、分葉形などの形をとるものもあります。

  1. クロマチン

  2.  核は核膜と、核膜に囲まれた核質からなります、核は塩基性色素でよく染まりますが、このように染色される物質はクロマチン( chromatin )または染色質とよばれます。クロマチンの本体は DNA とタンパク質の複合体であり、糸状の構造を作ります。これが折りたたまれて濃縮された部分は強く染まることになりますが、これをヘテロクロマチンと呼びます。それ以外の明調な部分はクロマチンが分散した状態にある部分で、真性クロマチンまたはユークロマチンと呼ばれます。一般的に、真性クロマチンの部分で遺伝子が活発に働いており、一方、ヘテロクロマチンの部分では遺伝子が働いていないと考えられています。細胞分裂の時はすべての染色質が凝縮し、大きく明確な塊を作ります。これが染色体です。

     核の最も大切な働きは、遺伝子情報の貯蔵と複製およびその発現です。 DNA 上の遺伝子情報は、まず、 mRNA 前駆体に読み取られ(複写)、核内でスプライシングなどのプロセシングを受けて成熟 mRNA となり、核膜孔を通って細胞質へ運ばれ、タンパク質に翻訳されます。

  3. 核小体

  4.  核小体( nucleolus )は核内でとくに塩基性色素で濃く染まる球状の構造体で、1〜3個存在します。この核小体はリボソーム RNA の合成の場であると言えます。核小体にはリボソーム RNA をコードするリボソーム RNA 遺伝子(ほとんどの真核生物で 100 コピー以上あります)が集まっており、リボソーム RNA の合成が活発に行われています。さらに、リボソーム RNA の結合タンパク質も含まれており、これを厳密に言えば、リボソーム粒子の前駆体を組み立てる場となっています。

  5. 核膜

  6.  核膜( nuclear membrane または nuclear envelope )は内外2枚の膜から成り、その間に内腔があります。内膜の核質側には核ラミナとよばれる繊維層が裏打ちしており、それを介してクロマチンが核膜に付いています。外膜表層にはしばしばリボソームが付着しており、粗面小胞体膜に繋がっています。

     核膜には直径 50〜100nm の小孔が多数開いており、これを核膜孔( nuclear pore )といいます。孔の辺縁では内膜と外膜が互いに融合しています。核膜孔を取り囲むように八角形状の複雑で巨大なタンパク質複合体が存在し、核膜孔複合体とよばれます。この複合体を通ってタンパク質や RNA などの物質が細胞質と核質の間を出入りします。


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2005年12月30日

生体のヒエラルキー

 部分部分の話に入る前に、全体図を把握するに生体のヒエラルキーについてまとめてみました。

   生体のヒエラルキー



▼生体のヒエラルキー

 私たち固体を作っている単位には、ヒエラルキー(階層構造)があり、最も小さな単位は分子です。勿論、分子を作っている原子、さらにそれらの元になっている素粒子などの構造を遡ることができますが、生物学系列の話では分子までを視野に知れておくだけで十分でしょう。

 細胞を作っている分子には、タンパク質(アミノ酸が1次的につながったものをポリペプチドとよび、それらが構造を取って機能を持つようになるとタンパク質と呼びます)核酸、多糖といった高分子物質の他に、ATP や GTP 、各種微量金属やイオンなど…といった低分子物質などがあります。

 さまざまな分種が集合して、一個の生命体としての細胞を形成します。分子と細胞との間には、細胞の内部構造を作る細胞小器官と呼ばれるいくつかの構造体が存在します。遺伝子の本体であるゲノム DNA を収めている核、分泌タンパク質合成の場である小胞体、エネルギーを生み出す装置としてのミトコンドリアなど、これらはいずれも膜系によって囲まれて、それぞれの機能を発揮しています。

 自己をコピーし、それを増やすことができるものを生命と規定すれば、細胞は最も小さな生命単位となります。動物細胞の大きさは、平均して直径 10〜15μm ( μm は 10^−6 m )、重要は 3 * 10^−9 g 程度のものです。この小さな空間に、平均して 100 万程度のタンパク質を含んでいます。それらが互いに相互作用し、機能を発揮して、1個の細胞が生きています。

 動物細胞にはさまざまな種類があります。もともとは一個の卵子と精子が受精して、それが分裂増殖を繰り返して、私たちの体を構成する種々の細胞を作るのですが、この分裂増殖の過程で、さまざまに分化した細胞の個性を作り出していきます。分化した細胞には、それぞれ特徴的な性格があらわれ、上皮細胞、血液細胞、筋肉細胞、神経細胞、生殖細胞などとして区分されます。我々ヒトの体を作っている細胞の種類は200以上あるといわれています。

 さらに、特定の種類の細胞同士がまっとまって集合体を形成したものを、これを組織とよびます。上皮細胞が一定の配向を形成して上皮細胞ができ、内蔵をはじめとする各種機関の表面を覆っています。神経組織や筋組織などは、それぞれ神経細胞、筋肉細胞が集まった組織です。組織を形成するためには、細胞が個々ばらばらに集まっているだけでは機能できず、細胞接着装置によって、一定の位置関係を保ちながら、細胞同士の間で相互作用をしつつ、緊密な連絡を取っている必要があります。このような細胞の集合を扱う分野を細胞社会学と呼ぶこともあり、細胞生物学の重要な一分野となっています。

 組織より高次の集合体は器官です。心臓、肝臓、腎臓などの内臓、目や耳などの感覚器官、生殖をつかさどる生殖器など、多くは肉眼で識別できるものです。胃を例にとれば、その外上面を覆っている上皮組織、、収縮を行うための平滑筋組織、粘液を分泌するための粘膜組織など、いくつかの組織が集まって、機能的な集合体を作っています。

 一般に組織と組織、組織と器官との間は、コラーゲンなどタンパク質繊維の網目構造からなる結合組織によって満たされています。細胞外マトリックスは、主に繊維芽細胞から分泌されます。

 これら組織、器官のさらに上位の単位が固体です。固体の集合は社会となりますが、自然科学が対象とするのは、個体までとなります。
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2005年12月29日

ミトコンドリアの構造 (2)

 引き続き、小十郎から「学会ー!」だと何度もやんやと言われている梵でございます。

 小十郎からミトコンドリアの話のおねだりがあったんで、先日のミトコンドリアの構造 (1)に引き続き、ミトコンドリア内でのアセチル CoA の生成とクエン酸回路あげることにしました。


▼アセチル CoA の生成とクエン酸回路

 ミトコンドリア内でのエネルギー代謝における、アセチル CoA の生成とクエン酸回路については、種々の呼吸基質は代謝されてアセチル CoA に集まります。すなわち、解糖で生じたピルビン酸はミトコンドリアに運ばれピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体によって酸化的脱炭酸を受け、アセチル CoA を生じさせます。

 脂肪酸は細胞質ゾルでまず CoA と結合して活性化されたアセチル CoA となり、ついでカルニチンの助けによって、ミトコンドリア内部に運ばれ、β酸化のサイクルを回りながら分解されます。1回転毎にアセチル CoA 、NADH 、NADH_2 が生じます、一方、アミノ酸の炭素骨格の分類は個々のアミノ酸により異なりますが、大半のものは分解されてアセチル CoA を生じさせます。

 アセチル CoA はクエン酸回路( citric acid cycle )またはトリカルボン酸回路( TCA cycle )により酸化されます。クエン酸回路は8段階の酵素反応よりなりますが、まとめると次のようになります。

  「アセチル CoA 」 + 「 3NAD^+ 」 + 「 FAD 」 + 「 GDP 」 + 「 Pi 」 + 「 2H_2O」

   → 「 2CO_2 」 + 「 3NADH 」 + 「 FADH _2 」 + 「 GTP 」 + 「 2H^+ 」 + 「 CoA 」
 
 ここで生産された NADH と FADH_2 は電子伝達系で酸化され、 ATP 合成に繋がります。
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2005年12月28日

ミトコンドリアの構造 (1)

 小十郎から「学会ー!」だと何度もやんやと言われている梵でございます。

 だけど、ほんとは、物理学よりも、生物学やゲノムが得意な梵です。学会でヒトゲノム解読戦争が行われていた当時、ちょうど、その頃から、nature を買い始めて、他のサイエンス誌の購入を止めることができずに、買い集めて読み漁っていました。その頃の nature では、論文にて激しい論争がなされ、特集なんかもされていましたっけね…。そこでは、報道では見えない世界を垣間見ることができました…(〃▽〃)

 その当時、どこぞやで「ゲノム信者」だの「ゲノム野郎」だと言われていた梵でありましたが、その頃の梵はといえば、「これからはゲノムだ」とか「ゲノムで真実の道が開ける」なんて言っていました。そんなこんなしていると、あっという間に、ほんとにその時代になったというわけで、今を考えると、なんか不思議な気持ちがしている梵です。我一番のゲノム解読戦争(実際は、同じ研究をしていた研究者同士の仲間割れから至っている内輪の激しい競争)、あの騒動はどこにいってるんだろうな…なんて思っている今日この頃…。その後、すぐにES細胞実用化戦争が始まったので、今、彼らはどうしているんでしょうね…。

 ES細胞といえば、骨髄幹細胞から全器官や全細胞ができることが実験によって去年にはわかっており、現在再生医療に応用するよう研究が進められていますが、あと20年もすれば実用化できるかもしれませんね…。これまで、神経細胞(脳細胞)は再生が不可能だといわれつづけてきましたが、神経幹細胞から神経幹細胞まで作れるとわかるだけでも凄い話なのに、骨髄幹細胞から神経幹細胞や神経細胞が作れるとは凄い話です。


 さて…。ウイルス以外の生物なら、固体を形成・DNAの生存維持にと、どれもがもっているミトコンドリア…(〃▽〃)♪

 ミトコンドリアの中にあるDNAがなぜ母親側の情報しかないのかは、実は寄生しているウイルスが父親からのものを異物として排除させてしまうからだということが、最近の研究でわかっています。この寄生ウイルスは、胎児を守るために異物を排除させてしまう働きがあり、体細胞や体内の細菌と共に、仲良く共存しています。自然の力って、すごいですね…(〃▽〃)

 小十郎からミトコンドリアの話のおねだりがあったんで、あげることにしました。



▼ミトコンドリアの構造

 ミトコンドリアは内外2枚の膜に包まれており、外側から外膜、膜間腔、内膜、マトリックスの4つの区画から構成されます。外膜と内膜はところどころ接しており、接触部位またはコンタクトサイトと呼ばれます。
  1. 外膜

  2.  外膜( outer membrane )にはポリンとよばれるチャンネルタンパク質が存在し、分子量約 5000 以下の非電解質分子はほぼ自由に通過できます。しかし、近年、ポリンが電位依存性アニオンチャンネルであることがわかってきました。また、外膜には、ミトコンドリアタンパク質の輸送に働く Tom ( translocase of the outer membrane )複合体が存在します。

     近年より外膜はアポトーシスによる細胞死との関係が注目されてます。膜間腔に存在するシトクロム C の細胞質ゾルへの流出がアポトーシスの引き金になりますが、外膜はこの段階を制御しています。

  3. 膜間腔

  4.  膜間腔( intermembrane space )は外膜と内膜に挟まれた区画で、膜間スペースとも呼ばれます。電子伝達系の一員であり、上に述べたようにアポトーシスに重要な役割を果たすシトクロム C が存在します。その他、アデニル酸キナーゼなどの酵素も存在します。

  5. 内膜

  6.  ミトコンドリアのエネルギー代謝のほとんどは内膜( Inner membrane )とマトリックスで行われます。内膜はマトリックスに突出して櫛状またはひだ状にクリステ( cristae )を形成し、内膜の表面積を広げています。内膜には電子伝達系を構成するタンパク質複合体や ATP 合成酵素複合体が存在します。また種々の輸送タンパク質が存在し、マトリックス内の低分子物質の組成を保っています。さらに、タンパク質内の輸送に働く Tim ( translocase of the inner membrane )複合体があります。

  7. マトリックス

  8.  マトリックス( matrix )は、内膜の輸送タンパク質の働きにより、細胞質ゾルとは異なる低分子組成を保っています。ミトコンドリアタンパク質のおよそ 2/3 がマトリックスに存在し、タンパク質濃度は大変高いものとなっています。クエン酸回路や脂肪酸β酸化系の酵素をはじめ、数百種類の酵素タンパク質が存在します。マトリックスにはまた、ミトコンドリア DNA および、その複製、転写、翻訳に関与する分子群が存在します。

  9. ミトコンドリアの数と形の多様性

  10.  ミトコンドリアの数と形は、細胞の種類やその活動状態によって大きく異なります。一般に、呼吸活性の高い組織・細胞ほどその数は多く、またクリステがよく発達しています。一方、特定の細胞では、細胞内の特定の場所にあったり、特定の形をしています。例えば、心筋細胞では、ATP を筋原線維に供給するために、多数のミトコンドリアが筋原線維に密に接して存在しています。また、精子では尾部の鞭毛を取り巻くよう存在し、鞭毛運動に ATP を供給している様子が電子顕微鏡にてうかがわれます。網膜の光受容細胞の内節にはミトコンドリアがぎっしり詰まっており、光受容シグナル伝達に必要な ATP を供給してます。ステロイド合成の咲かんな副腎皮質細胞や卵巣細胞では、ミトコンドリアのクリステは管状または袋状をしています。

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2005年12月27日

細胞生物学で見る生物の起源 (2)

 細胞生物学で見る生物の起源 (1)の続きです。今日は細胞の起源についての話です。


▼細胞の起源

 細胞が作られるためには、アミノ酸や核酸、脂肪酸などの有機物が必要となります。原始の地球においては、これら、有機物はどのように作られたのか、その生成過程については有名なミラー( Stanley L. Miller )の実験による結果があります。彼は、原始地球に存在したと考えられる水、メタン、アンモニアと水素を5Lのフラスコに封じ込め、フラスコ内の水を沸騰させるとともに、1週間にわたって火花放電を施しました。その結果、グリシン、アラニン、アスパラギン酸などの現在私たちの細胞の重要な抗生成分であるアミノ酸の生成が確認され、さらに核酸、尿素、乳酸なども合成されていました。放電を長期にわたって行うことで、さらに多くの種類の分子の生成が確認されました。このことは、原始地球にあって、比較的容易に細胞の構成成分が作られ得ることを示しています。

 このような種々の成分が細胞として生命機能を営むためには、ある一定の範囲にそれらが囲い込まれることがまず必要となります。両親媒性の脂質分子があれば膜による囲い込みは比較的容易に実現されます。脂質は、疎水性(水に不溶)の部分と、親水性(水に易溶)の部分の両方を1つの分子中に持った両親媒性の分子です。現存の細胞の膜を作るのは、このような両親媒性脂質のリン脂質です。両親媒性分子は、水の中では疎水性部分同士ができるだけ接触し合うように配向して、水分子から遠ざかろうとする性質をもっています。。水と油が混ざり合わないことはよく知られていますが、その境界面では、疎水性部分の尾を油の方に、親水性の頭部を水に整列させて、安定に存在しています。水中では、2つの存在様式をとります。油滴として疎水性部分を油の中に、親水性の頭部を水に向けて、ミセルとして存在するか、疎水性同士を内部に配向させた二重の膜構造をとるかです。実際の細胞においては、普通に見られる細胞膜は、このような脂質二重層からなっています。

 原始の地球において、最初に機能を持つようになった分子は、RNA であったと考えられています。原始の海の中の化学反応は無秩序であり、さまざまの物質が作り出されたはずですが、それらが生命と呼び得るものとなるためには、一定の物質が、自己生成をし、さらにその生成を触媒する能力が必要となってきます。

 現在触媒能を持つ物質の代表はポリペプチドですが、ポリペプチドは触媒能には優れているものの、自己複製能は持ち合わせていません。一方、ヌクレオチドが複合した《ポリヌクレオチド》( RNA = リボ核酸、 DNA = デオキシリボ核酸)は、触媒能こそ限られていますが、自己自身の正確なコピーを作り出すという自己複製能力は格段に優れています。これは、一方のポリヌクレオチドを合成するからです。

 機会があれば詳しいことは後述しますが、ヌクレオチドのアデニンには必ずその相補的なヌクレオチドであるチミン( RNA の場合は、ウラシル)が対合し、シトシンには必ずグアニンが対合します。このように対合する相手が決まっていることによって、一方のポリヌクレオチドに相補的な(裏側の配列を持つ)ポリヌクレオチドが作られます。このようなコピーの作り方は、分子の自己複製として極めて有利であり、進化の過程で、この複製式を採用したものが残っていったことが考えられます。

 自己複製能としては、DNA も RNA も同じですが、2本の鎖の二重らせんを形成する DNA は塩基配列に変異があってももう片方の鎖にある情報を元に修復することが可能ですが、鎖が1本のDNA には変異したものを元に修復することができません。しかし、触媒能という観点からは RNA は断然に有利でした。

 DNA はワトソンとクリックによって明らかにされたように、二重鎖(二重らせん)を形成し、その情報が子孫に伝えられるための情報の保存装置としては優れています。しかし、二重鎖を作ることによって、DNA は1本の鎖として以上の構造を獲得することはできません。一方、RNA は通常、二重鎖を形成しませんが、部分的に相補的な対合(アデニンにはウラシルが、シトシンにはグアニンが対合する)を形成し、複雑な立体構造を作り得ることができます。

 タンパク質からなる触媒においては、そのポリペプチドが作る分子の構造の複雑さが、分子表面に複雑な凸凹を作り、これが分子同士の相互作用を介した触媒能において大切であることがわかっています。RNA の作るこの原始的ではあっても、ある種の構造は、触媒を行わせるという観点から極めて有利であったということが言えます。実際に特殊な RNA 分子が他の RNA 分子の切断活性を持っていることが証明されていますが、これをリボザイム( ribozyme, RNA と触媒能 zyme を組み合わせた言語)と呼ばれています。

 RNA は、自己複製と自己触媒の両方の能力を兼ね備えた分子として、生命誕生の初期において最も活躍した分子であると考えられています。このような RNA が活躍した時代を称して、RNA ワールドという呼び方が定着しました。

 RNA の自己複製能と触媒能によって、次第に複雑な反応ができるようになると、やがてさらに触媒効率の良いタンパク質が反応の中心的な役割を担うようになります。おそらく、最初は RNA 自身がポリペプチドの合成を触媒したのだろうと考えられています。現在、タンパク質の中心はリボソームという巨大な RNA ・タンパク質複合体によって担われていますが、その中でもリボソームの60%を占める RNA が合成反応の中心的な役割を演じており、進化の痕跡であると言えます。

 タンパク質の合成には、そのアミノ酸配列を指定する遺伝暗号が必要となります。初期にはこの遺伝子暗号は RNA におけるヌクレオチドの配列としてコードされていたと考えられます。しかし、RNA がい1本鎖であることによって、不安定であり1個のヌクレオチドに変化が起これば、その変化はそのまま次に伝えられるという点からは、遺伝子暗号の貯蔵庫としては不向きとなります。一方の DNA は、2本鎖を形成しやすく、2本鎖になった DNA の場合には、一方の鎖に変化(変異という)が起こっても、それはもう1本の鎖の情報を元にして、修復することが可能です。この点において DNA は情報の貯蔵庫としては RNA よりは格段に優れています。

 こうして、大部分の生物の遺伝情報は DNA が担うことになりました。この大部分というのは、一部に RNA を遺伝物質として生きている RNA ウイルス(レトロウイルス)などの例があるからです。

:細菌には DNA がありますが、ウイルスには DNA がありません。ウイルス研究においての第一人者の知見では、ウイルスは核酸を持つ生物に寄生する、寄生生命体であると考えられています)

 以上、述べてきたように、もとは RNA を中心として進化し、RNA の持つ遺伝子機能と触媒機能によって自己複製を行ってきた生命は、その遺伝機能をより安定な DNA にゆだね、触媒機能をより効率のよいタンパク質に引き継いできたものと考えることもできます。そして RNA は、 DNA からポリペプチドに情報を繋ぐ役割(メッセンジャー RNA )と、一部触媒作用(リボソーム RNA )とを現在に残しているのです。
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2005年12月26日

細胞生物学で見る生物の起源 (1)

 真核生物の詳細な構造についてのおねだりを早速されてしまったので、急遽、予定を変更(本日挙げる予定だったものは先日のものに付け足ししています)して、宇宙の進化の話(「標準モデル」:地球の話)でさわりに出てきたものを取り上げることにしました。

 小十郎が気に入ってくれるといいのですが…A(^-^;



▼原核生物と真核生物

 原始細胞は今からおよそ30億年前に地球上のどこかに生まれたと考えられています。これらは、内部構造が比較的単純で核を持たない、原核細胞でした。原核細胞、所謂、最近には2種類あります。1つは真正細菌( eubacteria )で、土や水、生物体内などに普通に棲むバクテリアです。もう1つは、古細菌( archaebacteria )で、深海や酸性温泉、海底火山など過酷な条件に棲息しています。

 真正細菌のうち、シアノバクテリアと呼ばれるものは、30億年ほど前に最も栄えた細菌ですが、始めて光合成によって大気中に分子状酸素を大量に配給しました。この働きによって、大気中の酸素量は20%を超えるまでになり、それまでの嫌気的環境から大きく変化することになりました。

 酸素を利用できるということは、エネルギー産生の面からは、飛躍的な進化であり、当然酸素をうまく利用する生物が生き残ることになります。このような変化は生物界に大きな変化をもたらすことになります。すなわち、おそよ15〜20億年前の原始真核生物の出現となります。

 真核生物は膜によって囲われ、中に核をもつ細胞です。核は原核細胞の細胞膜がくびれ、それがやがてサイトゾルの一部を囲うようになったと考えられています。現存の真正細菌に存在するメソソームという膜のくびれは、その痕跡を示しています。

 原始真核細胞は、嫌気的な条件下で棲息していた古細菌に近いものであったと考えられています。現在、真核細胞は好気的な環境で、酸素を使ってミトコンドリアでエネルギーを生産しています。ミトコンドリアは好気的呼吸を行う最近が、原始真核細胞に取りこまれ、共生を始めたものであると考えられています。ミトコンドリア自身が DNA をもち、分裂もし、またタンパク質合成装置を持っており、真核細胞の中にあって、半ば独立した位置を確保していることも、そのような進化の跡を裏付けています。また、ミトコンドリアを囲っている膜は、内部にはミトコンドリアの DNA に由来するタンパク質が局在し、外膜はすべて核に由来するタンパク質が局在することも、進化の過程で取りこまれたであろうとすることを推測させるものとなっています。

 植物細胞の場合には、ミトコンドリアの他に、葉緑体も持っています。葉緑体は光合成を行う最近を取り込んだものであると考えられ、膜の組成もそのことを裏付けています。真核細胞の内部構造、各種オルガネラ(細胞小器官)については、機会があるときに後述します。

 進化的には、遺伝子の構造(塩基配列)が似たもの同士が共通祖先が別れた可能性が高いと見られています。種々の遺伝子構造を調べて、進化の後付けを行う学問が分子進化学にあたりますが、そのような成果の上に、われわれ生物界を3つに大きく分類することが行われています。その分類によれば、すべての現生生物の共通の祖先から、まず真正細菌が別れ、さらに古細菌が別れたと考えられています。古細菌はより真核生物に近く、古細菌の祖先の細胞が、真正細菌を取りこみ、共生することによって真核細胞が生まれたとする仮説に合致するものとなっています。

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