2010年12月12日

医学: RAF は 2 通りのシグナルを出す

RAS-RAF-MEK-ERK シグナル伝達経路の異常な活性化は、ヒトの多くのがんの特徴であることから、この経路は抗腫瘍療法の標的として関心を集めています。

数種類の RAF あるいは MEK 阻害薬については臨床試験が現在進行中ですが、予想外の合併症が出現しています。

BRAF に選択的に働く阻害剤は、 BRAF 遺伝子に変異がある黒色腫に治療効果があり、 RAF-MEK-ERK シグナル伝達を強力に制御しますが、 KRAS 遺伝子に発がん性の変異をもつ腫瘍に対しては効果がありません。

2 つの研究グループが今回、この大きな相違が生じるのは RAF 阻害剤が 2 種類の作用をもつためであり、細胞の状況と RAF の変異状態によって、阻害剤または活性化剤のどちらかとして作用することを報告しています。

News & Views では K Cichowski と P Janne が、これらの結果と Cell 誌に発表された同様の見解について、機構的、また臨床的なかかわりを考察しています。


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nature 464,317-456 18 March 2010 Issue no.7287
Letter p.427 / RAF inhibitors transactivate RAF dimers and ERK signalling in cells with wikd-type BRAF / P I Poulikakos et al.(スローン・ケンタリング記念がんセンター:米)
Letter p.431 / RAF inhibitors prime wild-type RAF to activate the MAPK pathway and enhance growth / G Hatzivassiliou et al.(ジェネンテック社:米)
News and Views p.358 / Drug Discovery : Inhibitors that activate / Karen Cichowski & Pasi A Janne

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2010年09月17日

細胞:タンパク質をデザインするリボソーム

望ましい性質を持つ新規アミノ酸を化学的に作成しても、細胞に備わる機構を使ってタンパク質へとうまく導入できるのは、これまでほんの一部でした。

また、導入可能な場合ですら、非天然型アミノ酸は 1 回に 1 個しか加えることができませんでした。

理論的には、天然のタンパク質合成系で使われている塩基 3 個からなるトリプレットコドンでなく、塩基 4 個が一組のクアドルプレットコドンを使えば、非天然型アミノ酸を割り当てられる「空白のコドン」を余分に作るゆとりが生じます。

天然のリボソームはクアドルプレットの読み取り効率が非常に悪く、効率を上げるように進化させるとプロテオーム全体を誤読してしまうと考えられています。

今回 J Chin たちは、この問題を解決するため、非天然型 tRNA シンテターゼと tRNA 対を使ってクアドルプレットコドンを効率よく読み取る平行あるいは「直交性」のリボソームを作り、人工的に進化させました。

この系を使えば、遺伝的にコードした「デザイナータンパク質」に、最大 200 種類もの新規アミノ酸を取り込ませることが可能となります。


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nature 464,317-456 18 March 2010 Issue no.7287
Letter p.441 / Encoding multiple unnatural amino acids via evolution of a quadruplet-decoding ribosome / H Neumann et al. ( MRC 分子生物学研究所:英)

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2010年09月13日

細胞: 3D で見るゲノム

出芽酵母の染色体間での相互作用を示す地図が、ハイスループットな染色体コンホメション捕捉法を用いてキロ塩基の分解能で製作されました。

その結果、核内にある染色体の三次元構造が明らかになりました。

ゲノム全体の形はスイレンの花に似ており、核の極の 1 つにセントロメアが集まり、この土台から染色体の腕 32 本が突き出しています。

この三次元地図は、染色体が動的存在であることは度外視して、ある一瞬をとらえたスナップ写真に相当しますが、真核生物のゲノムの構造を高分解能で初めてとらえたものであり、酵母という単純な生物のゲノムでさえ、非常に複雑な構造であることがはっきり示されました。


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nature 465,261-390 20 May 2010 Issue no.7296
Letter p.363 / A three-dimensional model of the yeast genome / Z Duan et al.(University of Washington)

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2010年08月21日

医学:HIV 感染に抵抗する

HIV 感染者の中でエリートコントローラーとよばれる患者では、治療を受けなくてもウイルス量が長期間にわたって非常に低いレベルに維持されます。

このような患者では、数種の HLA クラスT遺伝子座が多くみられ、その中でも HLA-B57 は最も際立っています。

今回、エリートコントローラーで HIV に対する効果的な免疫応答が誘導される仕組みについてのモデルが示されました。

このモデルによると、 HLA-B57 は結合する自己ペプチドがより少なく、その結果、交叉反応性をもつ T 細胞レパートリーが生じ、ウイルスに対してより効果的な T 細胞応答が誘導されます。

この研究は、ワクチン戦略に影響を与えることになりそうです。


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nature 465,261-390 20 May 2010 Issue no.7296
Letter p.350 / Effects of thymic selection of the T-cell repertoire on HLA class T - associated control of HIV infection / A Kosmrlj et al.(マサチューセッツ総合病院、マサチューセッツ工科大学およびハーバード大学ラゴン研究所)

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2010年05月31日

顕微鏡法:超高解像度の顕微鏡

回折限界を超える分解能での画像化の場合、例えば細胞内の微小な特徴を解像するような場合には、画像化対象を蛍光発色団で標識する方法か、或いは、蛍光にはよらないものの、はるかに感度の低いほかの顕微鏡法を使うかしなければなりませんでした。

今回、ハーバード大学の研究チームは、以前ほかの多光子顕微鏡法で使われたことのある実験手法を取り入れた、誘導放出顕微鏡として知られる別の方法を開発しました。

この方法の感度は、標識されていない微小血管画像化や発色レポーターを用いた lacZ 遺伝子発現の検出などへの応用で実証されました。

この手法は、吸収測定より感度が何桁も高く、資料中のほかの発色団に干渉されず、三次元切片法に適しています。

重要なのは、すべての分子が誘導放出顕微鏡法の対象となりうることであります。

したがって、この方法は、かつて超解像顕微鏡では見ることができなかったヘモグロビンなどの非蛍光性物質の画像化に使うことができます。


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nature 461,109-1162 22 October 2009 Issue no.7267
Letter p.1105 / Imaging chromophores with undetectable fluorescence by stimulated emission microscopy / W Min et al. (Harvard University)
News and Vews p.1069 / Microscopy : Light from the Dark / Stefan W. Hell and Eva Rittweger


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2010年05月27日

医学:軽く触れても痛い

外傷や炎症、日焼けの後には皮膚が知覚過敏となり、ごく軽く触っただけでも激しい痛みを感じることがあります。

この症状は普通すぐに消失しますが、ずっと続いて消耗性の疼痛(とうつう)となる場合もあり、どの神経回路が関与しているかが突き止められていないこともあって、その治療は困難であります。


今回、この慢性疼痛症候群に新規なクラスの一次感覚ニューロンが関与していることが、明らかになりました。

特殊な小胞グルタミン酸輸送体 VGLUT3 を欠損する変異マウスでは、強い機械的疼痛刺激に対する感受性が低下し、外傷後の触覚刺激過敏性は消失します。

脊髄後根神経節の VGLUT3^+ ニューロンは、ヒトで快感を感じる触覚に関与するとされていた髄鞘をもたない低閾値機械受容器ですが、外傷後の痛覚過敏時には痛みの感覚を伝達するらしいです。

このことは、研究や治療的介入に新たな道を開くと考えられています。


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nature 462,535-688 3 December 2009 Issue no.7273
Letter p.651 / Injury-induced mecanical hypersensitivity requires C-low threshold mechanoreceptors / R P Seal et al. (University of California, San Francisco School of Medicine)
News And Vews p.580 / Newroscience : Unbearable lightness of touch / Liam J. Drew and Amy B. MacDermott


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2010年04月11日

細胞:こっそり隠されている変異

細胞が適切に機能するためには、メッセンジャー RNA をタンパク質に翻訳する過程が、全体として正確に行わなければなりません。

しかし、HeLa 細胞を使った研究から、タンパク質合成に使用されるメチオニン残基はおよそ 1% がアミノアシル化されて、「教科書では誤りとされる」tRNA ができることが示されました。

ウイルス感染や、ウイルスあるいは細菌という Toll 様受容体リガンドの投与によって細胞がストレス条件下にあると、メチオニンが誤ってアシル化された tRNA の割合が、以外にも大幅に増加します。

ほかのアミノ酸について調べたところ、この現象は Met に限られたものであることがわかりました。

Met 残基は活性酵素種による損傷からタンパク質を保護することが知られているので、Met の誤ったアシル化はストレスに対する本来的な防御応答かもしれません。

自然免疫および化学的に引き起こされた酸化ストレスにより翻訳忠実度が変化することが(下記の論文により)示唆されました。


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nature 462,381-534 26 November 2009 Issue no.7272
Letter p.522 / Innate immune and chemically triggered oxidative stress modifies translational fidelity / N Netzer et al. (National Institute of Allergy and Infectious Diseases)


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2010年02月21日

地球:余震なのか、小さい地震なのか

これまでの大陸内部の地震災害の評価は、歴史記録にある小さい地震の位置が、これから先に大地震を起こしそうな継続的な変形と関係があるという仮定に大きく依存しています。

しかし、この仮定はどうも正しくないようだと考え始められています。

2008年5月の汶川地震で立証されたように、最近の地震活動が低い断層でも、大地震が起こらないわけではないからです。

S Stein と M Liu は、最近起きた多くのプレート内地震はおそらく、数百年前に起きた大地震の余震であり、したがって本来の大地震の場所を示してはいないと主張しています。

彼らは、余震系列の継続時間は、断層に負荷がかかる速度に反比例することを予測する、単純なモデルを示しています。

したがって、定常状態の地震活動として大陸の地震を取り扱う一般的な考え方は、現在地震活動が活発な地域の災害を過大評価し、それ以外の地域では過小評価している可能性があるといいます。


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nature 462,1-126 5 November 2009 Issue no.7269
Letter p87 / Long aftershock seqences within conttinents and impications for earthquake hazard assessment / S Stein & M Liu
News and Viiews p.42 / Earth Science : Lasting earthquake legacy / Tom parsons

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2009年12月03日

医学:パンデミックを起こしたウイルスの特徴

ブタを起源とする H1N1 インフルエンザウイルスの一連の臨床分離株の解析から、現在のパンデミックを引き起こしたウイルスが、マウスやフェレット、サルなどの哺乳類モデル系では、季節性の H1N1 株よりも重い症状を呈することが明らかにされました。

このウイルスはブタにも感染しますが、臨床的な徴候は見られません。

タミフルなどの調べられた抗ウイルス薬のすべてが、細胞培養系でこの新型ウイルスに対して有効であったといいます。

このことは、今回のパンデミックに対する最初の防衛手段として、これらの化合物が役に立つことを裏付けています。


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nature 460,925-1050 20 August 2009 Issue no.7258
Pandemic virus characterized
Letter p.1021 / invtro and in vivo characterization of new swine-origin H1n1 influenza virus / Y Itoh et al. (Shiga University of Medical Science)
Abstractions p.932 /
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