2006年05月03日

力学的エネルギー保存法則が成り立つ話

前回の「力学的エネルギー保存の法則の話」より…。

 今回は、「ばねにつけた物体が水平に振動するときのエネルギー」と「錘をつるしたばねの力学的エネルギー」などの話について進めていこうと思います…。


ばねつけた物体水平振動するときのエネルギーのエネルギー

 ばね定数 k のばねに質量 m の物体をつけて、これを水平ななめらかな面上におき、 S だけ引き伸ばして手をはなすと、物体は振幅 A の単振動すると共に、ばねの伸び縮みする。そのエネルギーの見方につき、次の二つの立場がある。


物体だけに着目する立場   ………@

 物体は F = −kx なる力を受け、これが復元力となって単振動する。このとき、物体のもつ復元力による位置のエネルギー Ep' と運動のエネルギー Ek は交互に移り変わるが、その和は「力学的エネルギー保存の法則の話」の末尾の式に従い、任意の時刻において一定である。


物体とばねを合わせて系と見る立場   ………A  

 ばねを A だけ伸ばしたとき手がばねにした仕事は 1 / 2 kA^2 で、弾性のエネルギー Ep' としてばねに蓄えられる。手をはなすと、ばねは物体に仕事をして次第に弾性のエネルギー Ep' を失い、同時にそれだけ物体は Ek を得る。原点 O では、ばねは自然長となり、弾性エネルギー Ep' は 0 、物体の Ek は最大となる。

次に物体はその Ek によってばねに仕事をしてこれを圧し縮める。従って、ばねは弾性のエネルギー Ep' を増し、同時に物体は Ek を失う。

 こうして振幅 A だけ変位すると、速度は 0 となって物体は引返し、O を中心として振動を続け、エネルギーは、ばねの弾性のエネルギー Ep' と物体の Ek と交互に移り変わるが、その和は常に一定である。


▼ Ep' = 1 / 2 kx^2 を

 @では、 復元力によって物体がもつ位置のエネルギー と見、

 Aでは、 ばねのもつ弾性のエネルギー と見た。

この復元力はばねの弾性による力であるから、両者は同じものを違った立場で見ているのである。

 よって、 ばねと物体とを一つの系と考える ときは、「力学的エネルギー保存の法則の話」の末尾の式

   1 / 2 kx^2 + 1 / 2 mυ^2 = 1 / 2 kA^2 = 一定   は

   (ばねの弾性のエネルギー)+(物体の運動のエネルギー)=一定

が任意の時刻において成り立つことを示している。

 但し、「重力 による 位置エネルギー」は、物体が 重力の場 と一帯となって 仕事ができる能力であった。 1 / 2 kx^2 を、物体がばねと一体となって 仕事ができる能力とみるときは、「弾性 による 位置エネルギー」であって、x は 弾性力の場 における物体の位置を示す(ばねからみれば伸び)。


錘をつるしたばね力学的エネルギー

 ばね定数 k のばねに、質ロ湯 m の錘をつるしたところ、s だけ伸びて O に静止したとすれば、
 mg = ks で、ばねの弾性のエネルギーは 1 / 2 ks^2である。

 この 静止位置 O から A だけ引き下げ (押し上げ)て はなす と、O を中心 とし、振幅 A 単振動する

  振動中の任意の時刻をとる。このとき例えば、O より下向きに x だけ変位しており、速さは υ とする。

ばね錘(重力の場) を合わせて とし、次の三つの x エネルギーを考える。

  ばねの弾性のエネルギー   Ep' = 1 / 2 k ( s + x )^2

  錘の運動のエネルギー  Ek = 1 / 2 mυ^2

  重力による位置のエネルギー  Ep = mgx


 但し、錘の静止位置 O を Ep の基準にとり 0 とした。それにより x だけ低いから、  Ep = −mgx

 これには、重力よる位置のエネルギーは、どこを基準( Ep = 0 )にとるか、はっきり決める必要がある


錘をつるしたばねの振動のエネルギー

 振動中の或る時刻、例えば、
ばねと錘(重力の場)の系 のもつ 力学的エネルギー

  Ep' + Ek + Ep

      = 1 / 2 k ( s + x )^2 + 1 / 2 mυ^2 − mgx
  (静止点で Ep = 0 )

      = 1 / 2 ks^2 + ( 1 / 2 kx^2 + 1 / 2 mυ^2 )

      = 1 / 2 ks^2 + 1 / 2 kA^2


で時刻に関係なく 一定。 力学的エネルギー法則成り立つ
 何故なら、

 1 / 2 k ( s + x ) ^2 + 1 / 2 mυ^2 − mgx

 = 1 / 2 ks^2 + ksx + 1 / 2 kx^2 + 1 / 2 mυ^2 − mgx

 = 1 / 2 ks^2 + 1 / 2 kx^2 + 1 / 2 mυ^2

   ( ∵ ks = mg   ∵ ksx =mgx )

 = 1 / 2 ks^2 + 1 / 2 kA^2

   ( ∵ 1 / 2 kx^2 + 1 / 2 mυ^2 = 1 / 2 kA^2 )

 即ち、 系のエネルギー は、 つり合いでのばねのエネルギー 1 / 2 ks^2 と、振動のエネルギー 1 / 2 ks^2 + 1 / 2 mυ^2 との  となる。


ばねにつるした錘徐々に下げた場合逆に離した場合

  1. 板を下げていくとき


  2.  離れるまでは、物体は板から抗力 N を受けているが、N は板が下がるに従って小さくなり、 N = 0 になったときに離れる。このとき物体のつりあいの式 ks = mg より

      s = mg / k  ……@

     物体とばねとを 系 と考え、重力および板の抗力を外力とみるならば、離れるまでに、重力は物体に mgs の正の仕事をし、抗力は W の負の仕事をする。

     物体は徐々に動き Ek は考えなくてよいから、外力のした仕事 mgs − W だけ、ばねの弾性のエネルギーが増す。

     それが 1 / 2 ks^2 。  よって

      1 / 2 ks^2 = mgs − W

     ∵ W = mgs − 1 / 2 ks ・ s = mgs − 1 / 2 mgs

        = 1 / 2 mgs = 1 / 2 ks^2
      ……A  
     
  3. ばねと物体(重力の場)を合わせて系と見る


  4.  ばねが自然の長さにある物体の位置を基準にとり、 Ep = 0 とする

     板を取り去った瞬間

      Ep' + Ek + Ep = 0 + 0 + 0 = 0  ……B

  5. ばねが最大の伸びの場合


  6.   Ep' + Ek + Ep = 1 / 2 ks^2 + 0 + ( −mgs' )  ……C

     B=C とおき   s' = 2mg /

  7. s' = 2s


  8.  よって 物体はつり合いの位置 O を中心として振幅 s で単振動する。ゆえに 伸び s のとき、速さ最大となる。

     このとき   Ep' + Ek + Ep = 1 / 2 ks^2 + 1 / 2 mυ^2 + ( −mgs )  ……D

     D=B とおき  1 / 2 mυ0^2 = mgs − 1 / 2 ks^2

       = mgs − 1 / 2 ks ・ s = 1 / 2 mgs = 1 / 2 ks^2  ……E

     これと@から  υ0 = ( √k / m ) s = ( √k / m ) g

  9. 伸び x では


  10.   Ep' + Ek + Ep = 1 / 2 ks^2 + 1 / 2 mυ^2 − mgx  ……F

     F=B とおき  1 / 2 mυ^2 = mgx − 1 / 2 kx^2  ……G

       ∴ υ = √( 2gx − ( k / m ) x^2 )


 但し、ばねの自然の長さから、錘を支えて徐々に下げると、重力のした仕事 mgs は、ばねの得た Ep' 1 / 2 ks^2 と抗力に逆らってする仕事 W = 1 / 2 ks^2 に使われる(上式A)。

 急に離すと、この W がないから、その分だけ、つり合いの位置での錘の Ek 1 / 2 mυ^2 になる。

 だから、  1 / 2 mυ^2 = 1 / 2 ks^2  となる(上式E)。

 こうして伸びる最大の長さ s' は、つり合いの伸びの 2 倍となる。



(...to be continue...)

 「次回はエネルギー保存」の話になります…。
posted by 梵 at 01:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 力学な話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月06日

力学的エネルギー保存の法則の話

 前回の「震動のエネルギーの話」の続きとなります…。

 話の流れでいえば、「保存力のする仕事 と エネルギー」に続く話です。



ばねと物体の系 における 力学的エネルギー保存の法則


ばね物体別々に考えた場合仕事とエネルギー

 なめらかな床上を、質量 m の物体が速さ υ0 で左向きに滑って来て、左端が固定され自然の長さにあるばねにあたり、 x だけ押し縮め、速さが υ になったとする。

 この間に物体は、ばねの押し返す力に逆らった仕事をして、 1 / 2 mυ0^2 − 1 / 2 mυ^2 の Ek を失い、ばねは、物体に押され 仕事をされて、 1 / 2 kx^2 の弾性のエネルギー Ep' を得る。

 物体がばねを押す力 kx (ばね←物体)と、ばねが物体を押す力 kx (物←ばね)は作用・反作用でその大きさは相等しい。ゆえに、それらがする仕事量は等しい。

 従って、  物体失った Ek = ばね得た Ep'

 即ち、  1 / 2 mυ0^2 − 1 / 2 mυ^2 = 1 / 2 kx^2  ……@

ばねの最大の縮み A とすれば、 υ = 0 だから、

   1 / 2 mυ0^2 = 1 / 2 kA^2  ……A

この状態からばねが伸びていくとき、ばねは物体に仕儀とをして弾性のエネルギーを失うと同時に、物体は仕事をされて Ek を得、縮み x では、

   1 / 2 kA^2 − 1 /2 kx^2 = 1 / 2 mυ0  ……B

となる。この式BにAを入れると、式@に等しくなる。


ばねと物体を合わせて系考えた場合 力学的エネルギー

 上に示すように、
 物体失った (得た) 運動エネルギー Ek
 ばね得た (失った) 弾性のエネルギー Ep' に 等しく
  物体ばね合わせ とみるときは
系の力学エネルギー Ek + Ep' は、時間にかかわらず 一定 である。

よって、物体とばねの系 には 力学的エネルギー保存の法則成立する

 ゆえに、  ばねの 弾性力保存力 である


▼水平な面上において

 ばねの一端を固定し、他端に物体を圧しつけて手を離すと、ばねが伸びるにつれて物体は速くなるが、物体ばね から 離れる のは、ばね自然の長さなったとき である

 何故なら、ばねが物体と接触しているということは、ばねが物体に圧されている力があるからである。従って、ばねが自然の長さより圧し縮められていることを意味する。物体がばねから離れるときは、この圧する力がなくなり、ばねは自然の長さになるからである。



単振動のエネルギー

▼質量 m の質点が振幅 A 、角速度 ω 、周期 T で一直線を O を原点として単振動する場合

 【単振動】では、質点の

原点からの変位は  x = A sin ωt  但し  ω = 2π / T

速度は  υ = ω A cos ωt

加速度は  a = −ω^2 x  で原点に向かい、

運動方程式  ma = −mω^2 x  より

質点に働く外力は  F = −mω^2 x   或いは  F = −kx  で原点に向かう。

但し  mω^2 = k  従って  T = 2π √m / k  であった。


質点 P が  F = −kx  なる 復元力 (元に戻す力、原点 O に向かい、O からの変位に比例する)を受けて単振動している際

 原点 O より x だけ変位しているときは、質点 P は 原点 O に対して 復元力による位置のエネルギー をもっており、その大きさ Ep' は

   Ep' = 1 / 2 kx^2

 何故なら、地球上の物体は、地球から引かれる力によって、高い位置から低い位置に戻るときに、仕事をすることができるから、位置のエネルギーをもっていたと定義付けることができる。

 それと同様に、この質点は原点に引かれる力、即ち、復元力を受けているゆえ、原点に近づくに従い、他の物体に仕事することができる。

 即ち、位置のエネルギーをもっているということになる。

 この質点に働く力は変位に比例して kx であるから、質点 P が原点に帰るときは、伸ばしたばねがもとの長さに帰るときと同様に 1 / 2 kx^2 の仕事をすることができる。

 ゆえに、質点の復元力による位置のエネルギーは Ep' = 1 / 2 kx^2 である。


▼この質点が変位 x において 速さ υ で運動しておれば、運動エネルギーは

   Ek = 1 / 2 mυ^2
ゆえに  F = −kx  なる 復元力 を受けて 振幅 A単振動 している 質量 m の質点が 任意の時刻においてもつ 力学的エネルギー E 即ち、

  (復元力による位置のエネルギー)+(運動のエネルギー)  は

E = Ep' + Ek = 1 / 2 kx^2 + 1 / 2 mυ^2 = 1 / 2 kA^2 = 一定

で、 力学的エネルギー保存の法則が成立する

 何故なら、  x = A sin ωt ,  υ = ωA cos ωt ,  k = mω^2  を代入すれば、

  1 / 2 kx^2 + 1 / 2 mυ^2 = 1 / 2 kA^2 sin^2 ωt + 1 / 2 mω^2 A^2 cos^2 ωt

     = 1 / 2 kA^2 ( sin^2 ωt + cos^2 ωt ) = 1 / 2 kA^2

となり、一定。

 但し、 1 / 2 kA^2 は、質点が端にあるときの Ep' を示しており、端では Ek = 0 である。
 


(...to be continue...)

 次回は、「ばねにつけた物体が水平に振動するときのエネルギー」と「錘をつるしたばねの力学的エネルギー」などについて、ばねのエネルギーの話をします…。
posted by 梵 at 17:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 力学な話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月27日

震動のエネルギーの話

 前回の「保存力のする仕事 と エネルギー」の続きとなります、「震動のエネルギー」の話です。

 この話は、波動の基礎になる話であり、「波動」・「波の速さ・強さ・振動数」と関係が深い節となります。



弾性のエネルギー

 ばねを引っ張って伸ばす時、引く力 F は、はじめは小さくてよいが、伸ばすに従って大きくなり、伸び x に比例する。

 即ち   F = kx

 この関係は直線に示される。従って、同じ長さだけ引き伸ばすために、手がばねにする仕事は、伸ばしはじめは小さいが、終わりほど大きくなる。

 但し、kばね定数 で、 1 cm  或いは 1 m  あたり伸ばすに要する力を意味し、 dyn / cm  或いは  N /m  の単位で示される。

 ばね定数 kばね を、自然の長さから x だけ 伸ばす (縮める)とき、手がばねにする仕事 W

   W = ( 1 / 2 ) kx^2

 何故なら、手の力は、はじめは 0 , x だけ伸ばした時 kx , 平均 kx / 2 である。よって、手のした仕事は、はじめから、この平均の力 kx / 2 で、x だけ伸ばす仕事に等しく、

   W = ( kx / 2 ) * x = ( 1 / 2 ) kx^2


▼ばねの手からされた仕事は、 弾性のエネルギー としてばねに蓄えられ、ばねがもとの長さにかえるまでに、他の物体に対して、同じ量だけの仕事をなし得る能力を持つ。よって、
 ばね定数 k の ばね が、 自然の長さから  x  だけ 伸びている (縮んでいる)ときは、 ( 1 / 2 ) kx^2  の 弾性のエネルギーもっている。これを Ep' で示すと

   Ep' = ( 1 / 2 ) kx^2

 Ep'  を  弾性による位置のエネルギー  ともいう。

 何故なら、手の力を少しずつゆるめると、伸びたばねがもとの長さにかえるまでに、手に仕事をし、その量に伸ばすに要した仕事に等しい。よって、エネルギーの大きさは  ( 1 / 2 ) kx^2  である。

 また、ばねを x だけ縮めるには  ( 1 / 2 ) kx^2  の仕事を要するゆえ、縮められたばねも同様のエネルギーをもっている。

 但し、位置のエネルギー であるから Ep 出表す。「重力による」位置のエネルギーと区別するため、「弾性による」ものには「 ' 」をつけている。

 また、 エネルギー を 「 J 」で 求める には、すべて MKS 単位 にする必要がある。



(...to be continue...)
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2006年02月10日

保存力のする仕事 と エネルギー

 さて、前回の「エネルギーの話」の続きの話となります…。

 見るからに、筋金入りの力学の話でありますが、何です…。「保存力のする仕事とエネルギー」と言えば、すぐに脳裏に浮かび上がるのが、かの放送大学の物理担当講師による物理学・熱力学の講義です。それにしても、うーん、こてこてですね…。何とも言えない、力学の匂いが…(苦笑)。

 物理学の理論展開においては、「保存則」の問題がよく出てくる、その基礎中の基礎となる話です。そのため、物理学の見解においては、なんで今ごろ力学なんだと思われることだと思います。しかし、この高度に発展した科学技術においては、物性や現象の構造をよく知るためには、生物学系列においても、化学においても、熱力学は、今や、必要な基礎知識となっています。

 また、最近では地球環境問題を考えて技術開発が試みられていますが、熱力学上の振る舞いを考えると、その効果は、それに使われるエネルギー消費に比べれば、結果、効果がなかったり、微々たるものであったりするものが多くあります。それだけにとどまらず、それを行うことで熱力学上の問題が発生する場合もあります。特に電力供給や運搬車などのエネルギー源関連等のエネルギー産業、環境汚染対策技術などはそのような傾向が多く見られ、安全面における問題や新たに起こる環境問題、コスト高やインフラ問題等も出てきます。それを考えると、少しでも多くの知識を蓄え、よほどグローバルに対処しなければなります。覿面に対処するというのも、非常に難しいですね…。

 こうやってグローバルに基礎を固めていれば、いつか見た目上に隠れた真や実を見出せるのではないかとやっていますが、再学習するにも良い機会ですね…(^-^)



保存力 と エネルギー

重力だけで受けて運動している物体では、 Ek が減ればそれだけ Ep が増え、力学的エネルギー保存則が成立する。重力のように、力学的エネルギー保存則を成立させる力を 保存力 という

 保存力には、重力の他に、ばねの弾力、万有引力、電気力などがある。保存力のする仕事は、始めの位置と終わりの位置のみできまり、途中の道筋には関係しない。従って、保存力の場(保存力の働く空間、重力の場、電場(電界)など)には位置のエネルギーが考えられる。

 木片に水平に打ち込まれた弾丸は、木片の抵抗力により、 Ek が減るが、Ep の変化はないから、力学的エネルギー保存の法則は成立しない。粗い水平面上を摩擦力を受けながら運動する物体が止まる場合も同様である。このとき、熱を発生する。上の抵抗力や摩擦力のように、力学的エネルギー保存則を成立させない力を 非保存力 という


重力のする仕事重力による位置のエネルギー変化

 物体が P から Q まで高さ h だけ自由落下して速さ υ になるとき、次ぎの関係がある。

   1 / 2 mυ^2 = mgh   これには2つの解釈がある。

  1. 物体の得た運動エネルギーは 失った位置のエネルギー mgh に等しい。


  2. 物体の運動のエネルギーの増加は 重力にされた仕事 mgh に等しい。
同じ mgh を
  1. では 物体が失った位置のエネルギー  と考え、

  2. では 重力が物体にした仕事   と見る。
 (2) では、物体だけに着目し、重力 mg を外力と見て mgh をその仕事と考えるが、(1) では、物体が重力の場と一体(系)となって仕事をなし得る能力(エネルギー) mgh をもつと考える。

 従って、 mg は内力とみて、その仕事は考えない。

 例えば、点 Q を上向きに速さ υ で運動している物体が高さ h の点 P で止まる時は、

  mgh = 1 / 2 mυ^2  の式が成り立つ。これを、上の2つの見方で説明すれば、

  1. 物体の得た位置のエネルギー mgh は失った運動のエネルギーに等しい( mg は内力)。


  2. 重力のした負の仕事(物体が重力に逆らってした仕事) mgh だけ Ek が減少する( mg が外力)。


▼斜面上の物体の運動について、もっとくわしく考えてみれば、

 例えば、傾角 θ のなめらかな斜面上の物体 P (質量 m )が、糸の張力 T によって滑り上がり、s だけ離れている2点 A , B (高さ h )を通る速さは υ , υ' ( υ' > υ )であった。この時の張力 T のする仕事と物体のもつエネルギーの変化と関係を求めた場合を示す。

 物体の受ける外力は、斜面に平衡には糸の張力 T と重力の分力 mg sin θ の二力であり、 υ' > υ であるから、上向きの加速度 a で運動している。よって運動方程式は

         ma = T − mg sin θ   ………@

両辺に s をかけ  mas = Ts − mgs sin θ   ………A

然るに      mgs sin θ = mgh   ………B

また       υ'^2 − υ^2 = 2as  ………C

Aに入れ      1 / 2 mυ'^2 − 1 / 2 mυ^2 = Ts − mgh  ………D

 Ts は張力のする仕事であり、T と s は方向が一致しているから正である。− mgh は重力のする仕事とみる立場では、重力と変位(上向き)とは反対向きで、その仕事が負であることを、負号(−)が示している。よって、式Dは「張力と重力なる外力のする仕事は、Ek の増加に等しい」ことを示している。式Dを変形して

   Ts = ( 1 / 2 mυ'^2 − 1 / 2 mυ^2 ) + mgh  ………E

とすれば、式Eは、「張力のする正の仕事は、( Ek + Ep )の力学的エネルギーの増加に等しい」ことを示している。

 式Dは、重力を物体に働く外力と考えて mgh を外力がする仕事と見る立場であり、式Eは、物体と重力の場と系を考え、重力を系の間に働く内力と見て、mgh はその内力による位置のエネルギーと見る立場に立っている


▼或る物体 A が「位置が高いとき、位置のエネルギーをもっている」

 即ち、「低い位置に移るとき、他の物体に仕事をなし得る能力がある」のは、地球が物体 A を引く力があるからで、物体 A と地球とが一体となって、他の物体に仕事をするのである。ゆえに、重力の場において「位置のエネルギー」という場合には、物体と地球とを合わせて系と見ているのであるゆえに、この場合には、物体に働く重力は、物体が受ける外力と見ないで、系の内力と見る

 従って、位置のエネルギーを考る ときは、保存力のする仕事外力のする仕事中に入れるべからず。逆に、重力を物体に働く外力と見るとき は、その Ep を考えるべからずEk だけを考えるべき となる。



(...to be continue...)
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2006年01月25日

エネルギーの話

 小十郎のすねのおかずにと、エネルギーについて簡単にまとめてみました。



▼エネルギーの原理

 物体外から仕事される (外力が物体に の仕事をするときは、それに相当する量 だけ、物体のもつエネルギー増加 する。

 質量 m の物体が 外力 F を受けながら、その方向に s だけ 変位 する間に、速さυ から υ' になったとすれば、

   Fs = ( 1 / 2 ) mυ'^2 − 2 / 1 mυ^2

  物体がされた仕事 = エネルギーの増加


 何故なら、外力 F は変位 s と同じ向きであるから、そのする仕事は で(物体は仕事を され、大きさ Fs である。この力は、物体に F の方向の加速度 a を与える。

   ma = F   ……@

 この加速度により、物体は速さを増し、Ek は増加する。その増加 僞k は、

  僞k = ( 1 / 2 ) mυ'^2 − ( 1 / 2 ) mυ^2 = ( 1 / 2 ) m ( υ'^2 − υ^2 ) ……A

 これに、   υ'^2 − υ^2 = 2as  ……A

 と @を入れ   僞k = ( 1 / 2 ) m * 2as = mas = Fs

 但し、重力は、重力による Ep を考えていないときは外力であり、考えているときは外力ではない。

 一般に、(終わり−始め)の差は 増加量、(始め−終わり)の差は 減少量 を表す。

 物体外力に逆らって(抗して)仕事する(外力が物体に の仕事をする)ときは、それに相当する量 だけ、物体のもつエネルギー減少 する。

 質量 m の物体が 外力 F を受けながら、反対向きs だけ 変位 する間に、速さυ から υ' になったとすれば、

   Fs = ( 1 / 2 ) mυ^2 − ( 1 / 2) mυ^2

  物体がした仕事 = エネルギーの減少

 例えば、弾丸が木板にあたり、これをつきぬけたとする。このとき、木板は弾丸に変位 s と反対向きに抵抗力 F を及ぼすゆえ力 F は弾丸に の仕事をする。このとき、弾丸は F と等大逆向きの力を木板に及ぼしながら s だけ変位するゆえ弾丸は力 F に 逆らって 仕事をするわけである。

 この力 F の大きさは、板の厚さ s を通る間変わらないとすれば(これを 平均抵抗力 という)、その仕事の大きさは Fs である。この力 F は υ と反対向きの加速度 a を弾丸に与える。

 よって、   F = ma ……@

 このため、通りぬけたときの速さ υ' は、木に当たる直前の速さ υ より小さく、Ek は減少する。

 その減少量 僞k

   Ek = ( 1 / 2 ) mυ^2 − ( 1 / 2 ) mυ'^2  ……A

 これに、   υ'^2 = υ^2 − 2as    ……B

 と@を入れると  僞k = mas = Fs

 となり、弾丸の Ek の減少量は抵抗力のした負の仕事(物体が抵抗力に対してした仕事)の大きさに等しい

 但し、上の場合、弾丸の失ったEk の量だけの熱を発生する。


 物体変位 に 垂直 な 外力 は、物体に 仕事 しない

 従って、物体のエネルギー には 関係ない


 例えば、斜面を物体が下がるときは、垂直抗力 N は変位 s に対して垂直であるから仕事をしない。従って、Ek には関係が無い。しかし、摩擦力 F は関係する。

 また、なめらかな球面に沿って物体が動くときは、面が物体に及ぼす抗力 N は中心に向かい面に垂直である。従って、この力は物体に仕事をしない。よって、物体の Ek には関係が無い。物体の Ek の変化は、重力 mg のする仕事による。

 以上の、外力のする仕事と物体のエネルギーの変化との関係を 《エネルギーの原理》 という。


 エネルギーの原理は 物体の集まり(系)においても成り立つ


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