2010年03月12日

白亜紀末期の生物大量絶滅説、やっと解決する

 ◇ 恐竜絶滅 1回の小惑星衝突が原因 直径10〜15キロ

 恐竜など白亜紀末期の生物大量絶滅は、現在のメキシコ付近への1回の小惑星衝突が原因とする論文を、日本など12カ国の国際チームが5日の米科学誌「サイエンス」に発表した。約6550万年前に地球環境を一変させた破壊的衝突の全容も明らかにした。大量絶滅をめぐっては、複数の地球外天体衝突説、火山噴火説も出されているが、研究チームは「否定された」と結論付けた。

 チームには、地質学、古生物学、地球物理学、惑星科学など専門家41人が結集。メキシコ・ユカタン半島の巨大クレーター「チチュルブ・クレーター」(直径約180キロ)が形成された時期の世界各地の地層などの最新データを、解析し直した。

 その結果、チチュルブ・クレーター形成と大量絶滅の時期は一致▽他の天体が前後に衝突した痕跡はない▽6550万年前ごろは火山活動が活発ではなかった−−と判明。クレーター形成による環境変化は、大量絶滅に十分だったとした。

 チームによると、衝突した天体は直径10〜15キロの小惑星、衝突速度は秒速約20キロ、衝突時のエネルギーは広島型原爆の約10億倍、衝突地点付近の地震の規模はマグニチュード11以上、津波は高さ約300メートルと推定された。

 衝突による放出物は世界約350地点で確認された。放出物は大量のちりとなり、太陽光がさえぎられて地球上が寒冷化。5〜30度の気温低下が約10年続き、海のプランクトンや植物が死滅、食物連鎖の上位にいた恐竜などが絶滅したと考えられるという。

 この際、海底に生きる一部のプランクトンや、体が小さく食料が少なくてすんだ哺乳(ほにゅう)類は生き延び、後に多様化したとみられる。

 チームに参加した後藤和久・東北大助教(地質学)は「チチュルブへの衝突によって生物の大量絶滅が起きたという説が揺らぐことは、もはやないだろう」と話している。


 ◇ 白亜紀の生物絶滅の学説

 米の物理学者が1980年、「地球外天体の衝突で引き起こされた」との仮説を発表。91年にチチュルブ・クレーターが見つかり、主流の学説になった。一方、一部の古生物学者は「生物種は長期間かけて多様性を失い絶滅する」との従来の学説を基に反発。別の天体衝突が原因との説や、インドでの大規模な火山活動が原因など新しい説も出されている。



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2009年12月02日

進化:細菌融合の名残

形態の異なる生命体が融合して新しくより複雑な生命体を形成する「細胞内共生」は複雑な細胞の進化に重要であったと考えられています。

核やミトコンドリアをはじめとする個々の細胞内区画は、かつての独立した生命体の名残です。

では、細菌などのもっと単純な生物の進化にも細胞内共生がかかわったのでしょうか。

こうした生物は区画化された内部構造を持たないことから、一般にそのようなことは考えられてきていませんでした。

しかし、繁栄している重要な細菌の多くは細胞膜が二重になっています。

このような二重膜構造は、クロストリジウム属細菌と放線細菌という 2 種類の細菌が融合した名残であることを、 Hypothesis で J Lake が示唆しています。


### database ###
nature 460,925-1050 20 August 2009 Issue no.7258
Bacterial combinations
Hypothesis p.967 / Evidence for an early prokaryotic endosymbiosis / J A Lake

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2006年04月28日

ハップマップで疾患を見る方法

 前回の「連鎖不平衡の特性」の続きになりますが…。

 簡単にではありますが、国際ハップマッププロジェクトが発表したヒトゲノムのハプロタイプ地図についてプレスされているものの中から疾患を見出すことに関連するものを、いくつか抜粋して下記にしまします。



■ハップマップデータによる構造的多型の発見

 構造的多型、つまり DNA が欠失、重複、再編成されている染色体セグメントは広く見られ、疾患において重要な役割を果します。ハップマップからは構造的多型についての洞察が得られます。

 何故なら、多くの場合、構造的多型は SNP の遺伝子型のデータ上に痕跡となって見えてくるからです。特に、染色体領域の欠失多型は SNP の遺伝子型に異常なパターンをもたらしますが、これらの欠失は遺伝子の喪失・機能的変化につながることから重要であると考えています。そういったパターンは、 SNP の対立遺伝子の見かけ上の非メンデル遺伝、遺伝子型の非検出、そしてハーディ・ワインバーグ平衡からのずれなどの現われとなりますが、しかし、こうした SNP は通常、タイピングの技術的な失敗とみなされ捨てられます。

 そこで国際ハップマッププロジェクトは、異常な遺伝子型のパターンをもつ SNP 群の情報から欠失多型を同定するために開発された手法を用いて、フィルターを通過しなかった第T期ハップマップデータをスキャンしました(複数の解析センター間およびタイピングプラットフォーム間にわたって同じ解析ができるように調整しました)。その結果、合計で 541 の欠失多型の候補が同定され、うち 150 はマイナー対立遺伝子のホモ接続合体の頻度が優位に高いという結果を見出しました。

 これらの欠失候補の特性については、90 の候補に対する実験的検証結果も含めて Nature Genet ( in the press )に記述してあります。検出した多型のうち 10 は、遺伝子の翻訳領域が欠けており、そのため多くの場合、固体はその遺伝子がコードするタンパク質が欠失していると考えられます。

 確認された欠失を解析すると、近傍の SNP との 強い LD がしばしば見られます。これは、 LD を利用した手法が、構造的( SNP と同様に)多型による疾患との関連性の検出に役立つことを意味します。

 染色体の部分的逆位も、複数の SNP が互いに完全に相関する長い領域という形になってハップマップデータ中に現れる可能性があります。即ち、逆位コピーと非逆位コピーの間の組換えはしばしば致死性なので、その領域の逆位と非逆位のコピーはそれぞれ独立に保存されます。

 明らかな例として、 CEU では染色体の 20 % に出現します。17 番染色体上の既知の逆位多型が見られます。この逆位多型は、アイスランド人女性において多産という形質および組換え率の違いとの関連が報告されています。しかし、長い LD は低い組換え率もしくは先述したような特定の種類の自然選択によっても生じます。


■疾患の原因と推定される SNP に絞った LD の見方

 家系と組換えから、なぜ近傍の複数の SNP がしばしば相関しているかについて手がかりが得られますが、関連性研究の立案と解析に最も重要なのは、SNP の選択方法です。真に網羅的な遺伝的関連性研究を行うには、疾患の原因と推定されるすべての対立遺伝子について、疾患との関連を 1 つ 1 つ調べなくてはなりません。もし原因となる多型が患者のサンプルで直接調べられていなくても、既に直接調べられた SNP もしくはパフロタイプとの相関があれば、その効果を間接的に調べることができます。


▼ SNP は近傍の多くの SNP と赤い関連性をもつ

 ENCODE データから、一般的には SNP が数ヶ所の近傍の SNP と完全に相関し、他の多くの SNP と部分的に相関していることが明らかになりました。

 国際ハップマッププロジェクトは、他の 1 つ以上の SNP と強い相関を示す SNP を「プロキシ( proxy )」としています。 2 つの多型が完全に相関している場合、 1 つを調べるということはもい 1 つを調べることに等しいことになります。国際ハップマッププロジェクトではそのような SNP 群(ハップマップサンプルで r2 = 1.0 )を「完全プロキシセット( perfect proxy set )」とよんでいます。

 ENCODE データの CEU におけるコモン SNP (ハップマッププロジェクトの研究対象)だけについて考えると、SNP の 5 つに 3 つは 5 以上の完全プロキシがあります。これと対照的に、 5 つのうち 1 つは完全プロキシがありません。

 予測した通り、YRI では完全プロキシセットは少なく、完全プロキシのない SNP は 2 倍( 5 つのうち 2 つ)、20 以上の完全プロキシをもつのは 4 分の 1 ( 5 % )になっています。これらのパターンは、対立遺伝子頻度の全範囲にわたっておおむね一致していますが、MAF < 0.10 ではプロキシの少ない傾向が見られます。言い換えると、ENCODE 領域内の平均的なコモン SNP は YRI サンプルでは 3 つの他の SNP と完全に情報が重複することとなり、その他のサンプルセットでは 9 〜 10 の他の SNP と完全に重複します。

 勿論、関連性研究において、 LD を用いて疾患と関連する多型を検出するために、タイピングされた SNP と完全に相関している必要はありません。たとえば、複合疾患モデルにおける単一遺伝子座のX2 検定の場合、関連性を検出するのに必要なサンプルサイズは 1 / r2 に比例します。即ち、疾患関連 SNP がタイピング情報のわかっている SNP と r2 = 0.5 であれば、サンプルサイズを 2 倍にすれば同等の検出能力が維持され得ます。

 このように、完全ではありませんが、ある程度の相関を示す SNP の数はもっと多くあります。例えば、相関を決めるのにより穏やかな閾値を用いると( r2 ≥ 0.5 )、CHB + JPT において 1 つのコモン SNP に対して見つかるプロキシの平均数は 43 であり、 RRI での平均は 16 となります。これらの部分的な相関は、ハプロタイプ解析に用いることで、先述したような原因と推定される対立遺伝子の検出力をあげることにつながります。



### 補足 ###

 ハップマップデータを利用すると、タグ SNP 選定の重要な参考データが得られるだけでなく、その後の疾患関連性研究の解析や解釈を行う際の手助けにもなります。また、タグの選定とは別の話として、ハップマップは関連性検定の際にも使えます。


### その他・関連データ ###
■「国際ハップマッププロジェクト



 以上。

 連日にわたって、ざっとハップマップを挙げてきましたが、まぁ、こんなところです…。

2006年04月26日

連鎖不平衡の特性

 夜分遅くまで、…むにゃむにゃ…言っていた梵でありますが…。

 物理学や工学の見解があるのなら、もっと詳細なことがわかるであろう、ヒトゲノムにみられる連鎖不平衡の特性…。

 結局、「国際ハップマッププロジェクト」の続きになりますが、土台となる知識なので下記に示します…。



■ヒトゲノムに見られる連鎖不平衡の特性

 連鎖不平衡( LD )の記述は従来 2 つの SNP 間で計算され、物理的距離のと関連に焦点が当てられてきました。ハップマップデータに対するそのような解析によるこれらのデータは、サンプルのサイズや対立遺伝子頻度分布、マーカー密度、領域の長さといった既知の関連遺伝子について補正すると、これまでの結果ときわめてよく似たものになったと国際ハップマッププロジェクトは言います。

 LD は 1 〜 100 kb のスケールでは顕著に変化し、多くは距離と共にゆるやかに低減するのではなく、非連続的に変化するので、平均値をみてしまうと LD 構造の重要な特徴はぼやけてしまうといいます。

 LD の詳細な構造をさらに深く探求することで、 LD が生じる原因を知る手がかりが得られるだけでなく、疾患研究への応用に際しても重要になってくると国際ハップマッププロジェクトは考えます。


▼組換えがなければ LD のパターンは単純

 LD 構造を解明するのに最も自然なやり方は、まず染色体を組換え(もしくは遺伝子変換)のない最も単純な事例を考え、次にそのモデルに組換えを加えることです(話を簡単にするため、この議論ではタイピングの誤りや高頻度の異変を考慮していません。どちらも、これらのデータでは非常に稀と思われるからだと国際ハップマッププロジェクトは考えたからです)。

 組換えがなければ多様性は異変だけで生じます。それぞれの SNP は、現代の集団がもつ染色体の類縁関係を表す系統樹の特定の枝に生じたものであり、多数のハプロタイプが観察されます。系統樹の同一の枝に生じた SNP 同士はサンプル内で完全に相関しますが、異なる枝に生じた SNP では、相関性が不完全か、相関性がまったくありません。

 国際ハップマッププロジェクトは、ある ENCODE 領域( ENr131.2q37 )の 36 の隣接する SNP の実験的データを用いてこれらの考えを検証しました。これらの SNP を選んだのは、CEU ではこれらの間に染色体相同組換えが起きていないと推測されたからでる。(少ないサンプル数で明らかな組換えがみられないからといって、組換えが起こらなかったことにはならないが、大まかな説明になると判断しました)

 原理的には、36 のこうした SNP からは 2 種類のハプロタイプが出現し得ます。組換えや遺伝子変換もしくは反復突然変異が伴わなくても、最大で 37 通りのハプロタイプが生じ得ます。このように、多様性が非常に大きくなる可能性を秘めているにもかかわらず、調べた CEU の親の染色体 120 本にはわずか 7 種類のハプロタイプしか見られません(うち 5 種類は複数見られた)。これは、明らかに血縁関係のない者であっても最も近い共通祖先以来の祖先が共有されていることを反映しています。

 このような設定においては、D' と r2 という LD の 2 つの最も一般的な測定値を説明するのは容易であるといいます。D' は明らかな組換えがなければ 1 と定義され、組換えと反復突然異変によってのみ減少します。これと対照的に、r2 は単純に 2 つの SNP が同一の系統樹の枝から生じ、組換えによって分断されていなければ、r2 1 となりますが、SNP が異なる枝から生じるか、若しくは、組換えによって当初の強い相関がなくなった場合は 1 より小さい値をとります。

 この領域では、過去の進化的組換えがみられないもので、すべてのマーカー対についで D' = 1 となります。これと対照的に、ハプロタイプ構造が単純であるにもかかわらず、r2 の値は物理的距離とは無関係に 0.0003 から 1.0 まで幅のある複雑なパターンを示します。しかし、これには意味があり、組換えがなければ、SNP 間の相関性はそれらが生じた順番に依存し、染色体上の SNP の物理的な並び順には依存しないからであると考えているからです。

 最も重要なことに、r2 値の見かけ上の複雑さを簡単な方法で解きほぐすことができます。即ち、この領域には SNP の組み合わせが 7 種類しかみられず、それは 2 つの染色体を除くすべてが 5 種類の一般的ハプロタイプのいずれかであり、4 ヶ所の SNP をタイピングすることで互いに区別できます。つまり、この領域の情報を完全に得るためには、ごく少数の座位のみを調べればよいということです。


▼局所の組換え率の変動は LD の主要な決定要因

 集団の祖先で起こった組換えは通常、先述したような単純な系式を突き崩してしまいます。ゲノムでは、酵母、マウス、その他のゲノムと同様に、詳細にみれば組換え率は部位によって劇的に変化し、「組換えのホットスポット」では交差が多いことがわかります。このモデルの一般性は、遺伝子型データから組換え率(ホットスポットやコールドスポット[逆に組換えが異常に少ない領域]など)を推測できるコンピュータープログラムを使って実証されました。

 ENCODE 領域では、一般的な DNA 多様についてのぼぼ完璧な情報が利用可能になり、以前のどの研究よりも厳密な組換え率の算定が大きな領域にわたってできるようになりました。国際ハップマッププロジェクトは、既に報告された手法を用いて、ENCODE データにおける組換え率を見積もり、組換えのスポットを同定しました。ホットスポットとは、組換え率が周囲と比較して劇的に高くなる領域のことをさします(典型的には約 2 kb の範囲)。

 ヒトゲノムの 500 kb あたりの平均組換え率は 0.5 cM であるのに対して、ENCODE の 500 kb 領域について推定された組換え率は、最小の 0.19 cM ( ENm013.7q21.13 )から最大の 1.25 cM ( ENr232.9q34.11 )までの 10 倍近くの幅がありました。

 しかしながら、小さなスケールでより劇的な変化があることはわかりづらく、88 ヶ所の組換えスポットが見つかりましたが、これは平均 57 kb につき 1 ヶ所のホットスポットが存在するということです。また、10 ヶ所の領域のそれぞれからホットスポットが見つかりました( 12q12 の 4 ヶ所から 2q37.1 の 14 まで)。5 Mb の全領域をみると、全組換えのおよそ 80 % が約 15 % の領域で生じたことになります。


▼ヒト LD ブロックの構造

 ヒトのほとんどの組換えが組換えホットスポットで生じることから、LD は往々にして非連続的であるということが言えます。

 ブロックとは、 D' の一貫して高い領域であり、高い組換え率、組換えホットスポット、明らかな組換え現象がすべて起きる部位で急激にブロックが切断されます。

 ENCODE データにおいてハプロタイプブロックをより正式な形で定義すると(局所の D' 値の合成に基づく方法か、4 種の配偶子検定に基づく別の方法を用います)、ヒトゲノム配列の大半は強い LD をもつ長い領域のいずれかに属することになり、また、この LD ブロックには多数の SNP が含まれますが、検出されるハプロタイプの数には限りがあります。

 特に、このプロジェクトで規定したブロックはマーカーの密度が低いために生じた人工的産物ではないかとの懸念が示されていますが、詳細な解析結果から、大半のゲノム領域は 4 つ以上の SNP を含むブロックのいずれかに含まれ( YRI の 67 % から CEU の 87 % まで)、しかも、、それらのブロックの平均サイズは当初の推定値に近いものとなっています。平均すると 1 つのブロックは多数の SNP ( 30 〜 70 )を含んでいますが、各ブロックに存在する一般的ハプロタイプは平均すると、4.0 ( CHP + JPT )から 5.6 ( YRI )種類であり、各ブロックに見られるほぼすべてのハプロタイプがこれら少数のハプロタイプのいずれかとなります。これらの結果から、疾患遺伝子研究や、少ないサンプル、および不完全なデータを用いたゲノム研究から導かれた種異論に、不変性があることが裏付けられると国際ハップマッププロジェクトは考えます。


▼長い領域に及ぶハプロタイプの組換えの局所パターン

 ハプロタイプは組換えホットスポット(やブロックの境界)で途切れることが多くありますが、この原理は絶対的ではありません。フェーズを決定したデータを用いて、269 サンプルでの頻度が 0.05 以上のハプロタイプをすべて同定し、それらを詳細な組換え地図と比較しました。例えば、19 番染色体の領域で、同定された組換えスポットでこうしらハプロタイプの多くが途切れる現象が起こりますが、連続しているハプロタイプも存在します。従って、組換え部位と同じ部位に存在する傾向があるからといって、各々の組換え部位ですべてのハプロタイプが途切れるわけではありません。

 いくつかの領域は、組換えが見られないために、顕著に長いハプロタイプ構造を示します。当然のことだとしても特筆すべきはセントロメアの領域であり、ここでは組換えが起こらず、数 Mb にわたって 100 以上の SNP により定義されるハプロタイプが広がっています。X 染色体には非常に長いハプロタイプをもつ多数の領域がありますが、他の染色体では一般的にはそのようなドメインは数少ないものとなっています。

 LD の大まかな測定値は、物理的距離よりも遺伝的距離で測定したときの方が一致します。例えば、物理的距離に対してプロットしたとき、LD の程度は染色体によって変わります。また、各染色体上の平均組換え率に対してプロットしたとき(家系に基づく遺伝地図から推定)、これらの差異は認められなくなります。

 同様に、それぞれの染色体のハプロタイプの長さの分布は、物理的距離よりも遺伝的距離で測定したときの方が変動は少ないものとなっています。たとえば、21 番染色体上のハプロタイプの長さの中央値が 34.8 kb であるのに比べて、1 番染色体上のそれは 54.4 kb となります。しかし、遺伝的距離に対して測定した場合、ハプロタイプの長さは類似したものになります。21 番染色体上で 0.11 cM なのに対し、1 番染色体上で 0.104 cM となります。

 ここでも例外は X 染色体で、組換え率を考慮しても、他より広範囲のハプロタイプ構造をとっています(ハプロタイプの長さの中央値 = 0.135 cM )。X 染色体上の異なるパターンは、他より低い SNP 頻度、小さなサンプルサイズ、組換えが女性に限定されること、そして、有効集団サイズが小さいことです。



 どーっすかー

2006年04月25日

組換えと自由選択に関する洞察

 実は、先日の「ハップマップの話(2)」をまだまだ引きずっている梵であります…。

 ここ数日間ハップマッププロジェクトのデータと睨めっこしている梵です…。

 複雑系の方がわかりやすかったといえば、変な話かもしれませんが…。

 もともと見た目上のものを科学する生物学を物理を知る物理学を融合させて、わかっては喜んでと、考えて遊んでいる梵には、その奥があるかもしれない真実を見た目上だけに終わっている見解になっているのを見てしまうと、どうも、居心地わるいのです…。

 俄然、見た目上の方向なので、物理的流れが見えないので、いまいちすっきりしない梵ではあります…。

 ハップマッププロジェクトが報告した資料中の「ヒトゲノムに見られる連鎖不平衡の特性」というのも、見た目上の結果だけが記されているだけなので、挙げる気にもなれず、欲求不満となっているわけですが…。

 「組換えと自由選択」については、生物学においては長い間のミステリーゾーンだったので、どのように報告されていたか、下記に示します。



■組換えと自由選択に関する洞察

 ハップマップデータは、本来意図されたように疾患研究用の情報源として役立つと共に、染色体組換えの研究や自由選択の歴史をうかがい知る手がかりともなります。


▼組換え率の詳細なゲノム全般のマップ

 ハップマップデータに基づいて、国際ハップマッププロジェクトは、 21,617 の組換えホットスポット( 122 kb につき 1 )を同定し、それらを含むヒトゲノム全域の詳細な遺伝地図を設定しました。

 ホットスポットの数と強度の両方が、組換え率の全般的な多様性を左右しています。例えば、 deCODE の遺伝的地図(家系に基づく)で、最も高い組換え率( > 2.75 cM Mb−1 )と最も低い組換え率( < 0.5 cM Mb−1 )の領域として 5 Mb の 25 の領域を選択しました。そして、最も低い組換え率を示す領域を含むすべての領域で組換えスポットを検出しました。しかし、 cM Mb−1 値の高い領域のホットスポットは、低い領域( 208 kb ごとに 1 で、0.051 cM )に比べて間隔が狭く( 84 kb につき 1 )、平均強度も高い( 0.124 cM )ものとなりました。

 組換え率の推定値や同定されたホットスポットは、マーカーやサンプル数に影響されず、ぶれが少なく、これを具体的にいうと、これらの結果を文献 77 のデータ( 71 人でタイピングされた約 160 万 SNP )の同様な分析結果と比較しました。そして、粗いスケール( 5 Mb )の組換え率推定値に関し、2 つの研究間( r2 = 0.99 )と、家系ベースの遺伝的地図( r2 = 0.95 )に対してほぼ完全な相関を見出しました。もっと細かいスケールでもかなりの相関が見られ、50 kb で r2 = 0.8 、5 kb で r2 = 0.59 となりました。さらに、ハップマップデータを使って付き止められた 21,617 のホットスポットのうち 78 % ( 16,923 )が、文献 77 のデータを用いても同定されました。

 組換えホットスポットの検出力はマーカー密度に依存し、文献 77 で調べられた、より多くの SNP を用いたときにはホットスポットの検出力が増し足し、おそらく組換え率の推定値の密度も上がっていることであろうことが推測されました。

 しかし、ハップマップデータの方がより SNP 密度が高いゲノム領域が多くあります。例えば、ハップマップデータから 9 番および 19 番染色体上により多くのホットスポットが検出されます。ハップマッププロジェクトの見込みでは、ハップマップの第U期によって、文献 77 や第T期より大幅に高い密度で詳細なゲノム全般の組換え地図が得られるはずだと考えました。

 組換えスポットの分子レベルでの決定要因については、ほとんどわかっていません。文献 77 のデータを解析した別の研究(文献 76 )で、組換えスポット内に THE1A / B というレトロトランスポゾン様エレメントが過剰にあることを有意に示す根拠が見つかりました。もっと驚くべきことに、ホットスポット内のそれらのエレメントのコピー内には特定のモチーフ( CCTCCCT )が、ホットスポット外のそれらのエレメントのコピー内に比べて 6 倍もあることを示す根拠も見つかっていました。

 ハップマッププロジェクトは、ハップマップデータの解析でこれらの知見を確認しました、さらに、このモチーフをもつ THE1B エレメントは、ホットスポットの中心の 1.5 kb の内に、周辺の配列に比べて特に多かったことを見つけました( P < 10−16 )。


▼ LD とゲノム特性との相関

 組換え率の変動は、主に連鎖不平衡( LD )に影響を及ぼすという点で重要です。そこでハップマッププロジェクトは、ゲノム全般の LD と組換え率、塩基配列構成、遺伝子特性との相関について調べました。

 ハップマッププロジェクトは、一般に LD はテロメアの近くで低く、セントロメアの近くで高まり、染色体の長さに相関するというこれまでの観察結果を、改めて確認しました。これらのパターンは、上述したように、組換え率の変動に起因します。また、これまでに報告されている LD と G + C 組成、塩基配列多型、反復構造との間の関係についても確認しました。

 そして、新たに、 LD が遺伝子の密度とも機能的分類とも対応することを初めて観察しました。LD の高さに基づいてゲノムを 4 つの段階に分けて調べ、遺伝子密度との相関がないか探してみたところ、意外なことに、 4 段階のうち最上位も最下位も中位に比べて遺伝子密度が大きく( Mb 当たり中位が 6.1 に対して最上・下位は 6.7 )、しかも、コドンにおける塩基のパーセンテージも同様となる(同じく 1.08 % に対して 1.24 )ことを見出しました。この観察結果に対する説明付けは、今のところは、ありません。

 遺伝子の大部分のクラスは、この LD の高さに基づく四分類の最上・下位に等しく分かれていますが、いくつかの遺伝子クラスは著しく偏った分布を示します。免疫応答や神経生理過程に関与する遺伝子は LD の低い領域に位置するものが他の遺伝子群に比べて多いですが、 DNA や RNA の代謝、DNA 損傷への反応、細胞周期に関与する遺伝子は強い連鎖不平衡の領域に多くなっています。

 これは、自然選択の影響によって LD (と塩基配列の多様性)の高さが遺伝子の機能と一致している可能性があり、免疫応答など環境との相互作用に関する遺伝子では多様性のある方が有利であったり、DNA の修復や凝縮など、細胞生物学的な基本プロセスに関与する遺伝子では多様性があると不利になるのではないかという興味深い予測ができます。


▼自然選択

 前述の観測結果から、ハップマップデータには自然選択の痕跡が残っているという説が浮かび上がります。ゲノム全般の多型データを利用することにより、ヒトの進化の仮定で選択を受けた遺伝子を発見するために、そのような痕跡を探してゲノムをスキャンできます。ハップマップデータからは、(理論的なコンピューターシミュレーションだけに依存するのではなく、)これまでの選択圧の存在を支持するような知見も得られます。

 自然選択は様々な形で遺伝的多型のパターンに影響を及ぼします。例えば、有害な突然変異の除去や有利な多型の集団内への固定、安定化選択(多型を維持する方向に働く自然選択)による複数対立遺伝子の維持などがあります。各々の種類の選択は、世界の全域で均一に起こってきました(そのため、すべてのヒトの集団に現れています)が、若しくは、地理的に局所化されてきた(そのため集団間で異なる)可能性があります。

 自然選択を見つけ出す方法のほとんどすべては全塩基配列データに基づいています。ハップマッププロジェクトは、一般的な多型に焦点を絞り、ひいては SNP 選定プロセスにより圧倒的多数の高頻度対立遺伝子の検出を達成したものであるため、これらの自然選択検出法をそのまま直接適用するわけにはいきせん。

 さらに、ハップマッププロジェクトが用いた SNP 選定基準が、時間と共に、また、dbSNP が拡大するにつれて変わり、しかも、各センターで独自に決定されたために、自然選択を検出するには条件が揃っていません。

 これらの理由から、ハップマッププロジェクトは今回、2 種類の解析に焦点を絞りました。第一に、ゲノム全域で選択圧があったと思われる痕跡の分布を調べましたが、これらの判定は絶対的とは言えないものの(タイピング対象 SNP の分布の問題のせいで)、ゲノム全般で最も極端な例を調べてみることは自然選択を考察するための手だてとして重要なアプローチとなると考えました。第二に、機能別カテゴリー間での比較を行いました。その理由は、SNP 選定は遺伝子の機能的な違いをほとんど配慮せずに行ったため、もし機能別カテゴリー間で違いが見出せれば、選択がかかったことを示す指標となる可能性があるからです。

 これらの解析の結果から、自然選択に関する従来の仮説のいくつかが裏付けられ、自然選択がかかったと考えられる新しい候補遺伝子座を見つけ出せます。


▼特定のゲノム領域における選択圧の根拠

 ハップマッププロジェクトはまず、集団間の差について考察しました。これは、複数集団のうちの 1 つで過去に起こった自然選択をとらえる手がかりとなると一般的に考えられています。ハップマップデータから、自然選択の有名な例として知られている Duffy ( FY )遺伝子座と同等な程度に極端な違いを示す、解析パネル間で対立遺伝子頻度が異なる 926 の SNP が明らかになりました。これら 926 の SNP のうち 32 は日同義的なコード領域 SNP であり、他の多くは転写される領域に存在します。

 そのため、これらの SNP は、地理的に限定された選択圧を受けたと考えられる機能的多型の候補になります。特に 2 番染色体上の ALSM1 遺伝子には、アミノ酸に違いを起す多型が 6 つもあり、それらの対立遺伝子頻度は集団間において非常に大きいものでした。

 自然選択によって、特定の集団に固定されたと考えられる対立遺伝子を示すもう 1 つの痕跡は、その領域で多様性が失われていることです(選択的一掃 [ selective sweep ] として知られます)。

 ハップマッププロジェクトは、集団間の違い、もしくは、各解析パネルの比較で見つかった稀な対立遺伝子への対立遺伝子頻度の偏りを、ヘテロ接合性(ショットガン塩基配列決定法を使った SNP 発見プロジェクトから評価しました)の割合を調べ、極端な外れ値があるものを同定しました。そして、今後の研究対象の候補として、こうしたゲノム領域を(常染色体上に 13 、X 染色体上に 6 )見出したこれらには、集団特異的な選択的一掃と、祖先集団における選択的一掃の候補領域が含まれています。

 当プロジェクトの仮説を支持するデータとして、この解析でトップコアグループの中に LCT 遺伝子が含まれていることが挙げられます。これは、乳製品の消化能力に影響する遺伝子で、かつて自然選択を受けたことが明らかにされています。


▼自然選択の候補を示す長いハプロタイプ

 安定化選択だけでなく、集団内への固定がうまくいかなかった選択的一掃でも、比較的頻繁度が高く、長く繋がったハプロタイプを生じます。HLA 領域(安定化選択の影響を受けたきたと広く考えられています)では、500 の SNP からなり、長さ 1 cM 異常にわたる、1 % 以上の頻度のハプロタイプが多数認められます。この他にも、ゲノム全域でそのような長いハプロタイプの存在を発見しました。

 部分的な選択的一掃を過去に受けた領域を特定するために特にデザインされた、長いハプロタイプに基づくアプローチとして、ロングレンジ・ハプロタイプ( LRH )の検定があげられます。この検定では、各ハプロタイプの長さを同じ遺伝子座にある他のハプロタイプの長さに対して比較し、それらのハプロタイプの頻度に対する分布をゲノム全域でとります。LRH 検定のゲノム全般の分布で外れ値をとり、自然選択の候補として同定されてきた既知のものとして、CEU サンプルでの LCT 遺伝子(経験的 P 値 = 1.3 * 10−9 )、先述したヘテロ接合性/対立遺伝子頻度検定で外れ値となった)と、YRI サンプルでの HBB 遺伝子(経験的 P 値 = 1.39 * 10−5 )があげられます。しかし、LRH 検定で最も強かったシグナルのほとんどは、自然選択を受けたと従来考えていたものではありませんでした。

 これら 4 つの検定法のもととなる仮説は、部分的にしか重なりません。例えば、ヘテロ接合性検定は古い選択的一掃への感度が高く、ハプロタイプ検定は部分的一掃に最も力を発揮するといった具合です。しかし、2 つ以上の検定で見つかってきた候補領域もあることに期待が持てると推測しています。特に、長いハプロタイプと低いヘテロ接合性によって 6 つの領域が同定され、また 3 種類の異なる検定によって 3 つの領域( 2 番染色体上の LCT と、X 染色体上の 20 および 65 Mb の 2 領域)が同定されています。


▼進化的に保存された非コード領域での浄化選択の検証

 最後に、ハップマッププロジェクトは、ハップマップデータを用いて、ゲノム比較研究から出てきた重要な仮説を検証しました。ゲノムの塩基配列解析から、ヒト塩基外列の約 5 % が種を超えて高度に保存されていることがわかっていますが、このうちエキソンなどの既知の機能的エレメントは半分もありません。それは、保存された非遺伝子配列は選択による制約(即ち、浄化選択)のせいで多様性がないと考えられています。しかし、こうした領域は突然変異のコールドスポット(低頻度領域)に過ぎないのかもしれません。従って、機能研究の候補としてはほとんどないのかもしれない、という疑問が出てくるかもしれません。

 この不明な点を解決するのに、対立遺伝子頻度の解析が役立ちます。機能的制約(低い突然異変率ではなく)があると、保存された配列では中立的な配列と比べて対立遺伝子頻度の分布が低い側に偏ります。

 ハップマッププロジェクトは、保存された非遺伝子配列では遺伝子間領域に比べて、対立遺伝子頻度の分布が稀な側に大きく偏ることを見出しました。これは、浄化選択仮説で予想されたとおりです。この偏りはエキソンに対して見られるものほど極端ではありませんでした。これは、コード領域の SNP に対するより強い浄化選択のためか、もしくは、ハップマップの各センターがコード領域の SNP を優先してタイピングしたことが反映されたものだろうと考えています。保存された非遺伝子配列が突然変異のコールドスポットではなく、従って、機能解析研究にとって非常に興味深い対象として残されていることを示しています。



 が、しかし…。背中が痒いところに手が届きません…。

 分子でみるのなら、せめて、化学系の学者や物理学者、或いは生物物理学者や生物工学者をメンバーに加えるべきで、もし、その知見が組み込まれるのであれば、もっとわかっていたに違いない、と梵はの思うのでした…。

 解明までの先行きは、まだまだ長いようです…。

2006年04月24日

ハップマップの話(2)

 「ハップマップの話(1)」の続きとなりますが、ハプロタイプの地図がどのようなものであるのか、それによって、どのようなことができるようになり、どのような発展が見込めるのか、その可能性について、研究から得た結論を見ていくことにしましょう。

 その前に、このハプロタイプの地図がどれぐらいの精密度があるのかについて先に述べれば、主旨の関係上、基本ベースとなる知見を優先させており、イレギュラーなもの(奇病や特殊な疾患などに見られる特殊な遺伝子など)ものにたいしては扱ってはいないので、性質的には国際ヒトゲノムプロジェクトが解読した功績と同じような程度のもので、今後も研究によって追加されていくものと思われます。

 その詳細を示せば、膨大なデータ数量になるので省略しますが、前回、医学系や生物学系において大きな進展を示す内容を挙げましたが、それは、あくまでも基本となるベースに対してのものであって(まだまだ荒削りの状態です)、例えば医療にすぐに使えるといった状況ではなく、これから、さらに発展させなければならない位置にあります。

 次に示す結論の内容でどの程度のものか分かるかと思うので、見てみましょう。



▼結論

 国際ハップマッププロジェクトは、医学的に重要な形質に影響を及ぼす遺伝的要因の発見を加速する研究基板の構築に成功しました。

 本論分で報告した解析結果によって、組換えホットスポット、長距離にわたり LD が強く保たれたセグメント、ハプロタイプ多様性が抑えられた領域が普遍的に存在することが実証されています。

 最も重要なことは、近傍 SNP 間での LD が大変強いこと、つまり、1 ヶ所の塩基を読み取れば他の相関する SNP の塩基も高い確率で測定できる情報重複の特性です。このため (1) 各個人の全塩基配列を改めて読み取らなくても遺伝的多型に関する豊富な情報を取り出すことができ、 (2) タグ SNP 選定と最適化された関連性解析により解析を効率的に行うようにできるようになります。

 このデータを使うことにより、生物医学の問題の解決以外にも、ゲノム中の欠失多型を付き止めたり、組換えの詳細な特性を探ったり、自然選択を受けた可能性のある領域を見つけ出したりすることが可能になりました。

 ハップマッププロジェクトは(それ以前のゲノム全般の LD 上かと共に)、ヒトゲノムプロジェクトからの自然な発展形態であり、ヒトゲノムプロジェクトによって明らかになったヒトゲノム配列は、個人間で変わらない大多数の塩基に関する情報源となるのに対し、ハップマップは DNA 塩基配列の個人差に焦点を当てます。

 本プロジェクトに取り組んだのは日本、英国、カナダ、中国、ナイジェリア、米国の研究者たちによりなり、その研究分野は、サンプル収集、塩基配列決定やタイピング、生命情報学、集団遺伝学、統計学から、倫理、法律、遺伝子学研究の社会への影響に関する研究まで多岐にわたります。

 サンプルを提供した集団についての SNP の多様性や一般的な多型の LD に関する研究者の理解は完璧なものになったと自負しており、今回明らかになった塩基情報は今後データが追加されても変わらないだろうと推測しています。 

 ごく近傍の SNP 間の相関や、もっと頻度の低い対立遺伝子、構造的多型、集団間の際の詳細などに関する情報は、まだ不十分な点が残されていますが、ヒト集団がもつ遺伝的多型の特性の完全解明に向けた道筋の第一段階は達成されました。

 第T期地図の延長として計画されているものとして第U期ハップマップがあり、ハップマップと同じサンプルでさらに 460 万 SNP が追加タイピングされ、ハップマップ ENCODE 領域に対しても各ハップマップ集団にサンプルを追加したり集団そのものを追加したりした詳細なタイピングがなされます。

 これらの結果は LD に関する推論や現在のハップマップサンプルセットから選定されたタグ SNP の、有用性や集団間での応用可能性を理解するための指針となるはずだと考えられています。

 ハップマップデータによってもたらされた成果の 1 つは、網羅的なゲノム全般の関連性研究を実現するのに非常に有用なことです。

 今後のゲノム関連のある研究上の課題(問題)として、今やそのような研究を実際に行える研究室レベルの実験ツールがあり、これまでに報告された結果はその有用性を示しています。しかし、ゲノム中の各 SNP の遺伝的な影響がさほど大きくないことを考えると、偽陽性の結果が氾濫するのを回避する配慮が必要であり、統計的有意性に厳しい基準が必要となります。大規模なサンプルセットで複数の追試を行うことが、大きい集団についての関連性を見つけ出すための確実で、且つ、一番の近道となります。妥当性の不確実な関連性が広く報告されることによって混乱する可能性があります(しかも、一般の論調には遺伝的決定論に向かう根強い傾向がある)のでそのような研究成果の一般社会への情報発信や論評にあたっては、充分な配慮が必要となります。特に医学の進歩に直接関与しない表現型が調べられた場合には、保守的で節度を持った態度を強く求めたい、とハップマッププロジェクトは最後で述べています。

 関連性研究の結果はポジティブなものもネガティブのものもすべて、隔たりなく報告し議論する仕組みを作り出す時期が来ているとプロジェクトは考えています。

 ハップマッププロジェクトの意義については、今後、これらの成果が、いかに遺伝学上の発見や、病因の知識向上につながったかによって判断されるだろうと推測しています。特にどの遺伝子やパスウエイがヒトの疾患の病因になっているかを突き止めることは、生物医学研究に新たな揺ぎ無い基盤をもたらす可能性があるの考えます。このことは、病因遺伝子の発見に繋がった多型自身が稀だろうと一般的だろうと、作用が大きかろうと小さかろうと同等に当てはまります。

 しかし、診断や標的を定めた予防法に対する対立遺伝子がどのくらい予測因子として応用可能であるかに左右されるであろうことが考えられます。治療への応答性(効果・副作用)の機序に遺伝的要因が関わっている場合には、それらをもとに今よりもっと効率の良い臨床試験や、個人に応じた予防・治療戦略が実現できるかもしれません。

 ありふれた疾患への感受性や抵抗性をもたらす対立遺伝子をうまく突き止められれば、疾患の発生メカニズムをもっと深く理解できるようになるはずであり、それぞれの疾患に何種類の遺伝子が関与しているのか、臨床的な表現型が現れるまでに、対立遺伝子どうしや対立遺伝子と環境暴露による因子とが相互作用したりするか、する場合はどのような形で相互作用するかが明らかになるでしょう。

 この点に関して、以下の項目に重点的に力を注ぐことが重要になります。関連する生活習慣の要因や環境暴露の同定、臨床表現型の詳細な分類、および、適切な規模の体系的網羅的研究でそのような情報を得ることです。環境要因やライフスタイルが研究対象間で大きな違いがある場合には、これらの変数を遺伝子の違いと同じような精度で科学的に捉えられるようにならない限り、再現性(そして臨床的有用性)は得られないであろうと考えます。ヒトのありふれた疾患を理解し、究極的には予防するという共通の目標に向かって前進するには(ヒトゲノムプロジェクトとハップマップがそうであったように)これらの領域における技術革新と国際協力がおそらく必要になるであろうとハップマッププロジェクトは考えています。



 ヒトゲノムプロジェクトのときは、ゲノム解読の争いで、その信頼性に陰りが見え、一時は、どうなるかと見ていましたが、ハップマッププロジェクトの場合は、着実に確実なところを見て歩んでいるようです。

 ただ、物理学的見解が入っていない(連鎖不平衡や物理的距離などは考えられても、それは物理学的な見解ではなく、現れた流れを見るだけのものとなっている。まして、人体の中でも熱力学では説明できないものもある)ので、変更される部分がいくつか出てくるかもしれないと見ている梵でありました。

2006年04月22日

ハップマップの話(1)

 昨年年末前から、科学雑誌の医学・生物学系の理論展開で頻繁に取り上げられやすくなった「ヒトゲノムのハプロタイプ地図」の話をしようかと思います。



▼ヒトゲノムのハプロタイプ地図

 親から子へと受け継がれる遺伝的多様性は、疾患の発症に大きく関わっていますが、具体的な疾患への関与はあまり明らかにされていません。そこで、国際ハップマッププロジェクトは、ヒトゲノム上に存在する頻度の高い一般的な多型についての公共データベースを作成し、nature 誌においては、2005 年 10 月 27 日号( nature 437, 1299-1320 27 October 2005 )で発表され、後に、nature DIGEST 日本語版 December VOL02, NO.12 で取り上げられたり、冊子として特集されたものが週間号に付属されるなど、さまざまな形で公開されています。

:以下のものは、nature 437, 1299-1320 27 October 2005 にて 報告されたものを参考文献として取り上げています。)

 これらは、100 ヶ所以上の一塩基多型( SNP :スニップ)のデータからなり、4 つのヒト集団から提供された 269 人の DNA サンプルを用いて、正確且つ網羅的な遺伝子型を得ました。

 500 キロベースにわたる領域 10 ヶ所については、すべての一般的な DNA 多型情報を明らかにし、これらの解析結果から、組織体組換えのホットスポットや連鎖不平衡のブロック状構造( LD ブロック)を示しました。

 ゲノム全領域にわたる LD ブロックを構築したことにより、 SNP が多くの近隣 SNP と強く相関することや、限られたハプロタイプしか存在しないことがわかりました。

 このハップマップ( HapMap :ハプロタイプ地図の省略)のデータは、遺伝統計学的関連性研究の立案、解析にあたっての指標となるだけでなく、ゲノム構造の多様性や組織体組換えの解明に繋がり、また、ヒトの進化過程で自然選択されてきた遺伝子座の検出も可能となることなどが示唆されています。


 生物医学研究が日々進歩しているにもかかわらず、ヒトのありふれた疾患の根本原因はあまり解明されておらず、予防手段は総じて効果が不充分であり、現在行える治療法では完全な治療にはほとんど至りません。

 家族歴は、心血管系疾患や癌、糖尿病、自己免疫疾患、精神疾患を含め、ほとんどすべての疾患において最大の危険因子の 1 つであり、受け継がれる DNA 多型は疾患の発症に繋がりのある要因を解明するための重要な手がかりとなります。

 疾患に関わる遺伝子やその多型をを突き止めることは、疾患の予防、診断、および治療法を向上させるための重要なステップと考えられます。


罹患頻度は低いが遺伝的要素の大きい「メンデル遺伝形式を示す」疾患については、既に 1000 種類以上の遺伝子が同定されており、この場合、疾患を引き起こすには単一遺伝子の異変だけが必要且つ十分な用件です。

 これとは対照的に、ありふれた疾患では研究がより困難であることがわかっています。というのも、こうした疾患では環境要因と相互作用するさまざまな感受性 DNA 多型が複合的に影響していると考えられるからです。

 ありふれた疾患の研究にはこれまでは以下の 2 つのカテゴリーに大別されていました。 家系を対象とした個別の候補遺伝子についての関連性拳研究す。これについては著しい成果があがっているものの、研究方法に自ずと限界があるために発展は早くありません。

 連鎖解析は、単一遺伝子座で疾患の大部分を説明できる場合を除いては効率的ではなく、他方、わずか 2 , 3 種類の候補遺伝子を検索する関連性研究では、個々の患者が持つ「宇宙」のように広大な DNA 多型のほんの一部しか調べられないからです。

 疾患に関わる遺伝子要因の網羅的探索には、多数の患者と対照群におけるすべての DNA 多型を調べ上げることも可能性としてはありえます。いずれは、全ゲノム塩基配列の再読み取りによって実現可能となりそうでありますが、そこまでいかなくても、現実的にはありふれた DNA 多型と疾患との関連を体系的に調べることができるようになっています。何故なら、こうした多型から、ヒトという種がもつ遺伝的な多様性の多くが説明できるからです。即ち、これは、ヒトが歴史的に小さな集団から出発し、共通の祖先をもっていることの現れだからでもあります。

 近年の研究成果により、一般的な多型が疾患に重要な役割を果たしているという仮説が裏付けられています。例を挙げれば、HLA (自己免疫と感染症)、APOEA (アルツハイマー病、脂質)、Factor VLeiden (深部静脈血栓症)、EPARG ( PPAR γ をコード: 2 型糖尿病)、KCNJ11 ( 2 型糖尿病)、PTPN22 (関節リウマチと 1 型糖尿病)、インスリン( 1 型糖尿病)、CTLA4 (自己免疫甲状腺疾患、 1 型糖尿病、NOD2 (炎症性腸疾患)、補因子 H (加齢性黄斑変性性)、および RET (ヒルシュスプリング病)などです。

 ある座位に特定の SNP 対立遺伝子をもつ固体は、近傍に存在する別の多型の多型の座位に、やはり特定の対立遺伝子があると推測できる場合が多くあります。この関係は連鎖負平衡( LD )と言われ、染色体上での特定の対立遺伝子の組み合わせをハプロタイプといいます。この現象を用いることで、一般的な DNA 多型の体系的研究を効率化することが可能になります。

 LD が存在するのは、現代の我々の染色体が共通の祖先をもっているからです。1 塩基置換、挿入/欠失、構造の変化といった変異によって疾患の原因となる新たな DNA 多型が生じると、当初はそれが生じた元の染色体上で、他の複数の DNA 多型と関連した組み合わせを形成する。その後、この相関は染色体組換えと突然変異によって崩れていきますが、その速度は突然変異が生じてからの世代数(通常は 104 〜 105 )から予測されるものよりゆっくりです(それぞれ平均して塩基対 ( bp ) ・世代あたり約 10−8 )。

 疾患の原因となる変異とハプロタイプとの関連は、長い間、遺伝学研究に用いられてきました。まず、ハプロタイプと疾患の関連性をみつけ、次にそのハプロタイプに含まれる変異を突き止めるという手法です。

 この方法は、まず HLA 領域の研究で始められ、メンデル型遺伝疾患(嚢胞性線維症や変異性異形成症など)の病因遺伝子の同定にも広く使われるようになり、ごく最近では、加齢性黄斑変性症のような多遺伝子疾患にも応用されています。

 ヒトゲノムに LD が存在することは以前の研究から既に明らかになっていました。しかし、これらの研究は(技術的理由から)データも不十分であり、また、多数の領域に限られていたことから、普遍的パターンを見つけ出すのは難しかったといいます。

 何故なら、ヒトゲノムの塩基配列決定とゲノム高速解析法の開発に伴い、ヒトゲノムには単純な集団遺伝学をモデルで想定されていたより高い LD が一般に見られることが明らかになりました。そして、LD は従来考えられていた以上に領域ごとにばらつきがあり、分節構造をとることもわかりました。

 これらにより、LD を利用した方法は概して非常に有用でありますが(近傍に存在する SNP の多くは通常、互いに関連しているため)、ゲノム全域にわたって高密度に多型を調べ、LD の広がりを把握しておく必要があるの考えられました。

 国際ハップマッププロジェクトは、ヒトゲノム全体の一般的な DNA 多型についての公共データベースを作製し、疾患遺伝子研究に必要な情報を提供することを目的として、2002 年 10 月に発足しました。このプロジェクトは以下の理由で現実に至ったと考えています。
  1. ヒトゲノムの全塩基配列情報


  2. タイピング(遺伝子の決定)が可能なコモン SNP (集団内頻度の高い SNP )についてのデータベース(本プロジェクトによっても結果的にデータが増えた)


  3. ヒト LD についての知識


  4. 高速度で SNP をタイピングするための安価で正確な技術の開発


  5. ウェブを使ってデータ保管・共有システムの構築


  6. 関係する倫理。社会上の問題に取り組み

などであると考えられています。本プロジェクトは、国際コミュニティリソースプロジェクトのデータ方針に沿い、迅速且つ利用制限なしで情報を共有・提供します、

 ハップマップデータは、医科遺伝学研究の立案や解析のための情報提供を第一の目標としていますが、それに加えて、ハップマップのようなゲノム全域にわたる多型情報によって、集団内の多様性を作り上げた進化圧についても調べることができることから、集団遺伝学に新時代を拓くといえると考えられています。



(...to be continue...)

 この話の研究結果によっての「結論」については、後日あげます…。

2006年04月21日

化学:発光しない白色光

 炭素系分子でできた発光ダイオード( LED )は極めて経済的な白色光源になると考えられてきましたが、これまでもっとも効率のよい LED が報告されました。

S Forrest らが開発した白色光有機 LED は、従来の同等輝度の電球の効率を既に 50 〜 75 % 上を上回っています。

 米国では建物で消費される電力の約 22 % が照明によるものであり、そのうち 40 % は効率の悪い( 〜 15 lmW−1 )白熱電球によって消費されています。

 Forrest らの LED では、燐光を発する分子と蛍光を発する分子の両方を使っており、電気から光への変換が最適に行なわれるようにそれらの分子が配置されています。

 そして、緑色および赤色の燐光を発する化合物と青色蛍光分子の組み合わせによって、安定した色バランスが得られています。


 白色エレクトロルミネッセント有機発光デバイスは白熱光源よりも著しく高い効率と低コスト、高スループットの構造を合わせて実現できる可能性があるため、その使用に対する関心が高まっています。

 こうしたデバイスの特性としてこれまで報告された中で最も優れたものは、内部量子効率 100 % の可能性をもつもので、全燐光体ドープデバイス( all - phosphordoped device )において実現されています。

 このデバイスでは、燐光体分子は電化注入時に生成する結合電子 - 正孔対の 4 分の 3 に相当する三重項励起子を使っています。

 三重項励起子は、使われない場合には(残りの一重項励起子とは異なり)非発光再結合を起します。

 今回、これとは別のデバイス・コンセプトが発表されました。

 下記に「高効率白色有機発光デバイスのための一重項および三重項励起子の操作」について報告されたものを示します。
参考文献:
nature 440,845-968 13 April no.7086
Letter p.908 / Management of singlet and triplet excitons for efficient white organic light - emitting devices
/ プリンストン大学(米) Y Sun st al.

 これは、一つの燐光ドーパントの代わりに青色蛍光分子を利用し、これと緑色および赤色燐光ドーパントを組み合わせて、内部量子効率が 1 となる可能性を維持しながらも、高い電力効率と安定した色バランスを実現するというものです。

 このデバイス内の 2 つの異なるエネルギー移動モードは、ほぼすべての三重項エネルギーを燐光ドーパントに伝達し、一重項エネルギーを青色蛍光ドーパントだけにとどめます。

 さらに、青色蛍光団への変換エネルギー損失をなくすことによって、全燐光体デバイスと比較して電力効率をおよそ 20 % 向上できるといいます。

 著者たちのデバイスは、総外部量子効率のピークが 37.6 ± 0.6 lmW−1 であり、
500 cdm−2 の高輝度では、これらの値がそれぞれ 18.4 ± 0.5 % 、23.8 ± 0.5 mlW−1 にまで減少するという性能を示し、白色光源に挑むものである、と述べています。



 問題は、いかにローコストに、より多く生産し、ローコストに市場提供するということにあり、これは、言わば、安い物勝ちということになりますが、しめて、市場ベースに乗せるとしたら、希望価格値は、いくらになるのだろう…?

2006年04月20日

生物物理:プロトンポンプ駆動のしくみ

 細胞呼吸における電子伝達は、ミトコンドリアや細菌の膜を通してのプロトン転位と共役しています。

 プロトン転位は生物エネルギー変換の主要現象の一つであり、この結果生じる電気化学的プロトン匂配は、ATP 合成などのエネルギー要素反応の駆動に使われます。

 シトクロム c 酸化酵素は、呼吸鎖の主要成分であり、二原子酸素を電子の受け取り手として使って、O2 の還元をプロトンのくみ出しと結びつけます。

 シトクロム c からの電子は、シトクロム c 酸化酵素の 2 個の金属中心である CuA とヘム a を通り、O2 還元部位へと順次移動します。

 この移動が、膜を横切る一定のプロトン移動と未知の機構によって共役されています。

 最近、膜の両側の水性領域でのプロトンの取り込みと放出の反応速度論的挙動に基づいて、シトクロム c 酸化酵素によるプロトンのくみ出しは内部の電子移動と機械的には共役していないことが提唱されました。

 このことから、今回、シトクロム c 酸化酵素内部の電子伝達と電荷当量の転位を実時間で観測した報告が挙げられました。

 下記に「プロトンと共役した電子移動がシトクロム c 酸化酵素のプロトンポンプを駆動する」ことについて報告されたものを示します。

参考文献:
nature Vol 440 | Issue no.7085 | 715-844 | 6 April 2006
Letter p.829 / Proton - coupled electron transfer drives the proton pump of cytoshrome c oxidase
/ ヘルシンキ大学(フィンランド) I Belevich et al.

 本論文によれば、その結果ヘム a から O2 還元部位への電子移動が、内部での一方向のプロトンポンプ機構を開始させることが示されたといいます。

 この反応が、プロトンポンプを駆動し、その後、膜の片側の水性空間からプロトンが取り組まれ、もう片方で放出されるという緩和段階が起こります。



 なかなか興味深い結果ですねぇ…。

 昔、「生物学においても、絶対制止系な見方では解明できないので、物理学的知見を取り入れるべきだ」などとアマチュア科学マニアの分際で吠ざいていた梵でありましたが、今では物理学的見解から研究が行われることが多くなり、このような興味深い結果が出ることがよくあります。

 一般的には、古典物理学では説明できないものが身近に存在するものとして、電荷製品や X-ray などが挙げられますが、それよりも身近な存在として、生物のつくり自体にもそれが認められるとなると、やはり、物性や現象という真実は一つにつながっているんだな…なんて、ますます嬉しくなってしまう梵でありました。

 何故なら、「生物といえど、人体は機械(物体)と同じ作りだ」と昔から吠ざいていたからでありました…。

2006年04月19日

細胞:テロメアと Taz1 の関係図

 テロメア複製は、通常の DNA 複製装置と逆転写酵素であるテロメラーゼとの組み合わせによって行なわれます。

 テロメア結合タンパク質はテロメラーゼ活性の制御に重要な役割を果していますが、テロメア DNA の大部分を合成している半保存的複製の制御における役割についてはほとんど解明されていません。

 分裂酵母( Schizosaccharomyses pombe )のテロメア反復配列には、多様なテロメア機能の制御因子である Taz1 が結合しています。

 一般には、テロメア結合タンパク質が複製フォークの進行を阻害すると考えられています。

 これに反して、テロメアでの効果的な複製フォークの進行には Taz1 が重要であることが示されました。

 そこで、下記に「テロメアでの DNA の半保存的複製には Taz1 が必要である」ことを報告したものを示します。
参考文献:
nature 440,715-844 6 April no.7085
Letter p.814 / Semi - conservative DNA replication through telometrs requires Taz1
/ 英国がん研究所 K M Miller et al.

 本論文によれば、2 次元ゲル電気泳動法を用いて調べたところ、 Taz1 の欠損により複製フォーク進行はテロメアおよび内側に位置するテロメア塩基配列で停止しますが、それはテロメアのグアニンに富む鎖がリーディング鎖とラギング鎖のどちらかの合成により複製されるかには関係ないことがわかりました。

 これとは、対照的に、Taz1 と相互作用するタンパク質である Rap1 は、テロメアの効果的なフォーク進行には必要ではありませんでした。

 このことから、テロメラーゼの欠損により、taz1 Δ テロメアが急激に消失することによって、Taz1 Δ テロメア反復配列は半保存的複製によって維持されないと考えられます。

 ヒトのテロメアタンパク質である TRF1 と TRF2 は Taz1 のオーソログであることから、ヒト TRF の片方または両方のヒトテロメアでの複製フォークの進行を調整している可能性があると著者たちは推測しています。

 異常なヒトテロメアで止まった複製フォークは、ゲノムの不安定性を促進し、腫瘍発生を引き起こされると考えられています。



 ということは、老化現象を引き起こすDNAが損傷するのは、DNAが不安定になることから起因されていることがいくつかの実験結果によってわかっていますが、その要因は、DNAが不安定になることから起因し、テロメラーゼの欠損により、taz1 Δ テロメアが急激に消失することによって、Taz1 Δ テロメア反復配列は半保存的複製によって維持されないから、フィードバック現象にて、老化現象が進行するということになるのでしょうかね…。

2006年04月18日

細胞:アラキドン酸の標的となる分子の正体

 神経突起の細胞体からの成長は、ニューロンの発生に不可欠な段階であり、細胞膜表面積の大幅な拡大を伴います。

 神経成長円錐にはアラキドン酸を遊離するホスホリパーゼが非常に多くなっており、この酵素が神経突起の成長に関係するとこれまで考えられてきました。

 細胞膜の拡張は輸送小胞と細胞膜との融合によって起こりますが、アラキドン酸の標的となる分子の正体は不明でした。

 今回、細胞膜タンパク質であるシンタキシン 3 ( STX3 )が神経突起の成長に重要な役割を担っており、オメガ 6 アラキドン酸の直接の標的となることが明らかにされました。

 以下に「オメガ 3 脂肪酸とオメガ 6 脂肪酸はシンタキシン 3 に作用して細胞膜の拡張する」ことについて報告されたものを示します。
参考文献:
nature 440,715-844 6 April no.7085
Letter p.813 / Omega - 3 and omega - 6 fatty acids stimulate cell membrane expansion by acting on syntaxin 3
/ MRC 分子生物学研究所(英) F Darios & B Davletov

 本論文によれば、シンタキシン 3 を用いてスクーリングを行ったところ、食事性のオメガ 3 リノレン酸とドコサヘキサエン酸も、アラキドン酸の代わりに効率よくシンタキシン 3 を活性化することがわかりました。

 今回の知見は、成長円錐の膜拡張に関してこれまでに確認されていたオメガ 3 、オメガ 6 多価不飽和脂肪酸の作用を分子レベルで説明し、これらの必須栄養素が作用するエフェクター分子を初めて同定するものです。



 上記の報告は、脊髄系疾患を多くもつ梵にも有益な報告でもありました…(^-^)

 もし、この知識を医療に適用させるならば、損傷した神経細胞の上から新しい神経細胞が構築されるため、痛みや障害が残ることがあります。それを考えれば、損傷した神経細胞を再構築できるような対応ができると、外傷の治療がもっと進むんでしょうがね…。

 今のところは、現在の治療では直すことが不可能なので、神経のシステムの再構築に、DHA と EPA に、神経のシステムにも変換されるコエンザイムを服用することで何とか補おうとしてきた梵でもありました。

 実は、ドコサヘキサエン酸も数ヶ月前から考えていた梵でもあるわけですが、悪化する可能性もあるので、もう少し資料が欲しいところの梵でもありました。

2006年04月17日

発生:モータータンパク質が非対称性を生み出す

 最初は左右対象な胚から、最終的に内臓器官が中心軸の右や左に配置されて非対称な生物ができるのはどのような仕組みによるのか、この問題は以前から生物学者の関心をよんできました。

 今回、特殊なモータータンパク質が無脊椎動物で非対称性を生じさせていることが 2 つの研究グループにより明らかにされました。

 S Noselli のグループと松野健治のグループはそれぞれ、ショウジョウバエの Myo31DF 遺伝子に異変が生じると、成虫の消化管と生殖器の左右性が正常な場合の逆になることを明らかにしました。

 左右性にかかわる遺伝子として同定されたのは、Myo31DF がまだ 2 個目です。

 この遺伝子がコードするタンパク質はミオシンの一種で、このミオシンは細胞内骨格に付着しています。

 これが非対称性の確率に重要な分子を適切な位置へと運ぶのに関わっているらしく、その際に細胞の一方の側と逆側とを識別しているのかもしれません。

 このような細胞レベルでの非対称性が、非対称的な内臓器官の発生につながるものと考えられています。

 今回の知見は、ヒトも含めたその他の生物で非対称性が生じる仕組みを解明する手がかりになる可能性があります。


 動物の内臓は左右非対称性であることが多い。

 ショウジョウバエの前後軸、背腹軸の形成は解明が進んでいるが、左右非対称性については広範な研究は行なわれていません。

 下記に「ショウジョウバエの非定型ミオシンが内臓器官の左右性を逆転させる」ことについて報告されたものを示します。
参考文献:
nature 440,715-844 6 April no.7085
Letter p.798 / An unconventional myosin in Drosophila reverses the default handedness in visceral organs
/ 東京理科大学 S Hozumi et al.

 今回、生存および生殖可能な Myo31DF 変異のホモ接合体では、ランダム化ではない状態で、胚の消化管、成虫の消化管と精巣の左右性が逆転することが発見されました。

 Myo31DF がコードするのは非定型ミオシン MyoIA (哺乳類では MyoID とよばれる)で、アクチン上を動くモータータンパク質としては左右のパターン形式に関わることを示された初めての例となります。

 胚が正常な左右性を生じるには、後腸上皮に Myo31DF が必要であることがわかりました。

 後腸上皮のアクチンフィラメントを破壊すると胚の消化管の左右性がランダムになることから、Myo31DF の機能に細胞骨格が必要なことが示唆されています。

 これと符合して、Myo31DF がアクチン細胞骨格と同じ部位に局在することもわかりました。

 別のI 型ミオシンである Myo61F を過剰に発現させると胚の消化管の左右性が逆転し、これをノックダウンしても左右のパターン形成に異常が起こります。

 これら 2 つの非定型 I 型ミオシンは、左右のパターン形成において拮抗的に働いている可能性があるらしいことがわかりました。

 これらのことから、アクチン細胞骨格と I 型ミオシンタンパク質は、無脊椎動物の左右非対称性の発生に重要な役割を果していると考えられています。


 左右相称動物の胚における左右対称性の破れは、極性をもつ成体の形態や器官の巻きの方向、心臓や脳の機能を生み出す体制作りにおいて非常に重要な現象であると考えられています。

 しかし、常に決まった方向性をもつ左右軸(位置選択)に対する決定因子については、分子レベルではまだほとんどわかっていません。

 左右非対称の完全な逆転(逆位)を起す突然変異は、非対称性を制御する機構を突き止める上で有用でありますが、そのような変異はマウスとカタツムリで 1 つ見つかっているだけとなっています。

 そこで、次に、「 ID 型非定型ミオシンはショウジョウバエの左右非対称性を制御する」ことについて報告されたものを示します。
参考文献:
nature 440,715-844 6 April no.7085
Letter p.803 / Type ID unconventional myosin controls left - right asymmetry in Drosophila
/ ニース=ソフィア・アンチポリス大学(仏) P Spéder et al.

 本研究では、ショウジョウバエ( Drosophila )で左右逆位を示す極めて稀な遺伝子座として、進化的に保存された ID 型非定型ミオシン 31DF の遺伝子( Myo31DF )を同定しています。

 生殖器の右巻き構造はショウジョウバエ成虫における左右性の顕著な指標であるが、Myo31DF 変異体ではこれが逆転します。

 遺伝学的モザイク解析によって、生殖器原基の A8 体節が左右軸の形成体であることが特定され、さらに右巻きの初期状態を抑制する Myo31DF の機能が、胚の前後軸に沿って区画化されることが明らかになりました。

 決定因子として期待されるように、Myo31DF は誘発因子様の機能をもち、形成体では発現しており、対照的な過剰発現は左右非対称性に影響しません。(:影響するのは、Myo61F であることがわかっています。)

 従って、Myo31DF はアクチン上を動くモーター活性をもち、位置選択を制御する右巻き遺伝子であることがわかります。

 マウスの inversin のように、この Myo31DF は、 β−カテニンと相互作用して同じ部位に局在しており、このことは逆位遺伝子が接着結合を介して左右の発生を方向付けることを示唆していると、著者たちは述べています。



 マクロで見れば、それらの機能ははごく当たり前の機能となっていますが、分子構造で見ると、如何に複雑で緻密なシステムであることがわかります。

 これらの報告は、非常に興味深い側面ですね…(^-^)

2006年04月15日

半導体:スプレーシリコン

 スプレー塗布で半導体チップが作れる液体状シリコンが開発されたという。

 今回新たに報告されたシリコンデバイスの作成法によって、多くのエネルギーを必要とし、コストがかさむプロセス方法は過去のものとなるかもしれない。


 古沢昌宏らは、マイクロエレクトロニクスに十分応用可能な品質の結晶シリコン膜を、「液体シリコン」のようなものから作製する方法について述べています。

 この液体状シリコンは、速度回転させた表面上に滴下して薄く延ばしたり、あるいはインクジェットプリンターから吐出することで表面上に塗布できます。

 シリコンチップ上にマイクロエレクトロニクスデバイスを製作するのはハイテクな作業で、極めて毒性が高い化学物質を扱う実験室と同程度の清浄さを保たれた場所で行なわれます。

 シリコンなどの半導体の層は通常、高真空中でチップ上に蒸着され、極微量の汚染ガスやチリがあれば半導体の層は使い物にならなくなってしまいます。

 しかし、古沢たちのシリコン「ソフトプロセス技術」は、高真空・高温、あるいは超清浄な環境は必要としません。

 このプロセスからは、平坦な微結晶がモザイク上に並んだ、いわゆる多結晶シリコンができます。その電気特性は、コストがかさむ従来の方法によって作製した多結晶シリコン薄膜に匹敵します。

 今回使われた「液体状シリコン」は、実際には、シリコン原子が短い鎖状に結合し、水素原子にキャップされた分子からなるポリシラン系物質です。この物質を合成するために、5 個のシリコン原子が環状に結合したシクロペンタシラン分子が出発物質として使われました。

 この液体化合物に紫外光を照射すると環のいくつかが開裂し、鎖がつながってより長くなる。次にこの混合液体をトルエンなど有機溶媒で希釈し、それを表面上に薄く延ばすか。スプレーで塗布します。

 この液体膜を 500 ℃付近でベークすると、膜が多結晶シリコンに転換されるのです。


 一般的に定着化している、シリコンエレクトロニクスはもう行き止まりだという予想は、どうやら、言い過ぎのようです。

 液体状のシリコン薄膜を作成する技術が開発されたことは、インクジェット方式で回路を印刷する時代の先駆けとなるかもしれません。
参考文献:
nature 440,715-844 6 April no.7085
News and Viws p.749 / Semiconductors : Spray - on silicon
/ Lisa Rosenberg

 溶液プロセスを使った電子デバイス作製は、従来型の真空プロセスや気相成膜に比べて作製プロセス費用を削減できるとの期待から、幅広い応用分野で多くの注目を集めています。

 特に、液相材料の使用により半導体デバイスが印刷で形成できることから、溶液プロセスは大面積のフレキシブルディスプレイなど将来のいくつかの応用で不可欠となることなどが考えられます。

 この分野における最近の研究は、主に有機半導体を中心に行なわれています。

 有機半導体には非結晶シリコン( a − Si )に匹敵する移動度をもつものもありますが、信頼性の問題が解決されていません。

 安定で高性能なトランジスターを形成できる金属カルコゲナイド化合物半導体の溶液プロセス技術も既に報告されています。

 シリコンからデバイスを作製するには、複雑で費用のかかる製造プロセスが必要であるため、この種の材料がシリコンに代わる材料として検討されている。しかし、高品質のシリコン膜が溶液プロセスで成膜できれば、この状況は大きく変わるかもしれません。

 下記に「溶液プロセスにより作製したシリコン薄膜とトランジスター」について報告されたものを示します。
参考文献:
nature 440,715-844 6 April no.7085
Letter p.783 / Solution - processed silicon films and transistors
/ セイコーエプソン社 T Shimoda et al.

 本論文では、液体状のシラン系前駆物質を使ってシリコン薄膜トランジスター( TFT )を作製する溶液のプロセス技術を実証しています。

 この前駆物質を使い、スピン塗布とインクジェットプリントの 2 つの技術によって、多結晶シリコン( poly - Si )膜を成膜し、これらの膜を用いて、移動度が各々 108 cm2V−1s−1 の TFT を製作しました。

 このプロセス技術の条件はまだ最適化されていないが、これらの移動度は溶液プロセスで作製された有機 TFT で得られている値よりも大きく、また、a − Si TFT の移動度( ≤ 1 cm2V−1s−1 )も上回っています。



 これは、凄いかもしれない…。

2006年04月13日

原始の不規則銀河から現在の楕円銀河への進化

 銀河の形成は、ガスと星の小さな塊の形成で始まり、その後断層的に巨大なシステムへと変化する「ボトムアップ」式に進行したと考えられています。

 バイオンのガスは、放射冷却によって熱エネルギーを失い、新しい銀河の中心に向かって落下しますすが、その一方で超新星はガスを銀河から放出します。

 従って、あらゆる現実的なモデルは、これらのプロセスを正しく与えられなければならないが、これまでのものは満足から程遠いものであったと M Mori と M Umemura はいいます。

 今回、彼らのシミュレーションによって、原始の不規則銀河から現在の楕円銀河への進化の過程がどのようなものかが報告されていますので、参考文献を下記に示します。
参考文献:
nature 440,581-714 30 March 2006 no.7084 /
Letter p.644 / The evolution of galaxies from primeval irregulars to present - day ellipticals
/ カリフォルニア大学ロサンゼルス校(米)および専修大学 M Mori
  筑波大学 M Umemora

 本論文では、銀河系形成の最も初期の段階から力学的緩和の時期を経て、最終的な形へと到達するまでの進化をたどるシミュレーションについて報告しています。

 彼らのシミュレーション( 3 * 10^8 年までの時間変化)の中で明らかになったガスのバブル構造は、高赤方偏移のライマン α を放射する天体に酷似してます。

 10^9 年後、星の連続放射がこれらの天体で支配的となり、その後高赤方偏移で星を形成している銀河であるライマンブレイク銀河とよく似た天体となります。

 この時点で、ヘリウムより重い元素の存在率(「金属含有率」)は、太陽と同程度になっています。

 1.3 *10^10 年後、これらの銀河は現在の楕円銀河に似たものとなることがわかりました。

2006年03月27日

今時の突然変異決定説の話

 先日の「生命の特性 (3)」で、有性生殖集団の進化の話に関連する話ではありますが…。


 有性生殖の起源と維持に関する突然変異決定仮説では、性の存在が、組み換えによって 1 個のゲノムへと持ち込まれた有害な変異を追い出す自然選択の能力を高めると考えられています。

 この説明には、負のエピスタシス、即ち、複数の異変が組み合わさると個々の異変の作用から予測されるよりも有害度が高くなるという遺伝子の相互作用様式が必要になります。

 負のエピスタシスの機構や進化過程を解明することができないために、これまで突然異変決定仮説の概念は魅力あっても、説得力に掛けていました。

 今回、人工の遺伝子ネットワークで、負のエピスタシスが有性生殖自体の結果として進化しうることが示されましたので、ここで参考資料をちょっとだけご紹介しましょう。
参考資料:nature 440,1-126 2 March 2006 no.7080
Lettes p.87 / Sexual reproduction selects for robustness and negative epistasis in artifical gene networks
/ ヒューストン大学(米) R B R Azevedo et al.

 上記の報告によれば、人工の遺伝子ネットワークモデルを用いて Azevedo らは遺伝子ネットワーク間の組み換えにより遺伝子のロバストネスが強まるような選択が起こり、負のエピスタシスはこの選択の副産物として進化することを見出すことに成功したといいます。

 今回の結果により、彼らは、有性生殖が自己の維持を有利にする条件を選択すること、すなわち、進化が自身の筋道を作る場合がある ことを示していると述べています。


 生物進化論については、一つの仮説に対して信じ込んで討論されることが多いのですが、このように、クローバルな見解から生物進化のシステムが一つずつ解明されていくと、嬉しくなる梵でありました…(^-^)

2006年02月11日

2つのタイプの偽遺伝子

 前回の「偽遺伝子の話」の続きの話となります…。…ぜぇ…。今日は偽遺伝子のタイプの話となります。


 生物が進化する過程で、遺伝子はきわめてダイナミックな変化を遂げてきました。高等生物に見られる遺伝子の多様性はまさにその結果といえます。しかし、新たな遺伝子を獲得する裏側で、逆に遺伝子としての機能を失い、偽遺伝子となる場合もあります。

 遺伝子が機能を失ったとき、その遺伝子のつくるタンパク質が生物にとって不可欠なものであり、代わりの仕事をする分子が他になければ、その生物は生きていけずに淘汰されてしまいます。こうした場合は、偽遺伝子として集団に集まることはありません。

 では、偽遺伝子はどのようにして生じたのでしょう。これにはその環境によってそれに至る形質は異なります。偽遺伝子は、その成り立ちや構造から、大きく2つに分けることができます。一つは「 Processed タイプ」、もう一つは「 non - Prosessed タイプ」です。後者は「重複偽遺伝子( Duplicated Pseudogene )」と呼ぶこともありますが、後述するように「重複」の名にふさわしくないタイプもこれに含まれます。

 重複偽遺伝子は、生物が新しい遺伝子を獲得しようとして失敗したものといえます。新しい遺伝子ができるときには、元の遺伝子が変異しなくてはなりませんが、変異によって遺伝子が機能を失えば、その生物固体は淘汰される可能性が高くなります。そこで、生物が行ってきた方法は、遺伝子のコピーをつくっておき、一方は本来の機能を持たせたまま、他方を変化させるというものです、変化した遺伝子は、新しい機能を獲得することもあれば、機能を失うこともあります。

 重複偽遺伝子が変異を起こした結果、もはやタンパク質をつくれなくなると「重複偽遺伝子」となります。遺伝子としての機能を失っているので、その意味では《死んでいる》ことになりますが、偽遺伝子の DNA そのものは、ゲノム中にとどまって親から子へと伝えられていきます。重複偽遺伝子はそのでき方からすれば、本来の遺伝子に近い形に保っており、実際にタンパク質のアミノ酸情報をコードしているエクソンと mRNA が作られる際に切り取られるイントロンの両方を含んでいます。

 あまり例は多くありませんが、重複していない遺伝子が偽遺伝子化することもあります。ヒトでは8番染色体にある GLO はビタミン C の合成に関わる酵素で、ヒトではこれが偽遺伝子化したためにビタミン C を自前で合成できません(マウスやイヌでは合成できる)。しかし、食物からビタミン C を摂取できるので、重複していないにもかかわらず偽遺伝子化しても淘汰されずに広まったと考えられています。

 もう1つの Processed タイプはこれとは全く別な経路を辿ってきたものです。遺伝子からタンパク質がつくられるときには、まず DNA の塩基配列を RNA に転写します。その後、不要な部分(イントロン)が取り除かれて mRNA となり、次ぎのステップへと進みます。この時、mRNA に逆転写酵素が働いて、 DNA に戻り、ゲノムに挿入されてしまったのがこのタイプのものです。

 Processed タイプは、重複偽遺伝子とは異なり、いったんは mRNA になっているので、本来の遺伝子とは違ってイントロンがありません。また、両端に反復配列などがつくこともあります。こうした特徴があるので、このタイプである場合、ゲノムの生データからも比較的見つけやすいものとなっています。

 何故、このような奇妙なことが起きるのかについては、それは、ヒトゲノムには大量に見られるレトロポゾンが mRNA に作用したせいだと考えられています。レトロポゾンという DNA 断片はいったん RNA へと転写された後、逆転写酵素の働きで DNA に戻り、染色体の中に再挿入されます(これを繰り返すたびにコピー数が多くなります)。逆転写挿入タイプの偽遺伝子はこのレトロポゾンの逆転写酵素が mRNA に働いた結果であると思われています。

 いずれにしても、偽遺伝子は本来の遺伝子と極めて類似した塩基配列をもつにもかかわらず本体の遺伝子のような機能を持っていません。

 (もし、外来遺伝子が何らかで挿入され、直接機能している DNA が変異を起こしてしまえば形状異変や死亡等が引き起こります。)

 だからこそ、そこにどのような突然異変が生じてもその固体は生き残っていくことができると考えられています。

 従って、本来は自然淘汰によってすぐに消えていくような変異も、偽遺伝子では蓄積されうることが考えられます。そして、その分だけ進化速度が大きくなると推定できます。これは、進化論においては、分子進化の中立説の理論かでは偽遺伝子の進化速度が速いことが予想されていたのに沿う推定となっています。

 これらのことから、「ジャンク DNA 」である偽遺伝子は、(これまでは)中立説においては重要な指標とされており、単なる遺伝子の化石として進化のスピードを測定する指標の1つと考えられていただけでした。

 2005年の5月。機能を失った残骸が新たな役割を担った偽遺伝子が発見されたことによって、分子生物学においても、医学においても、見た目上では見えない、新たな未知の開拓地への扉が開かれました。更なる発見の進展が期待できます。先が楽しみですね…。しかし、医学系や生物学系の論文の資料を見ると(特に医学系は)、マウスが非常に痛々しく思います…。……ジレンマですね……。



(...to be continue...)

2006年02月10日

偽遺伝子の話

 前に、「一部の学者の討論で汚染された「常識」という妄想」というお題で、偽遺伝子 Makorin1 - p1 のことを触れたので、今回は偽遺伝子 Makorin1 - p1 の話をしましょう。

 偽遺伝子という言葉はポストゲノムが進展してきた間に(ごく最近)に使われ始めた言葉なので、「《偽遺伝子》とは何?」…と思われることと思います。

 そこで、「偽遺伝子とは何か?」の話に入りますが、偽遺伝子とは、タンパク質を作る能力を失い、「遺伝子の残骸」或いは「遺伝子の化石」などと呼ばれるものをさします。ヒトゲノムには多数の偽遺伝子があることが知られています、これまでは、何の働きもしていないと考えられてきていましたが、そうではないらしいことがわかっています。

 ゲノムの中には「遺伝子の残骸」或いは「遺伝子の化石」などと呼ばれる DNA 配列があります。もとは遺伝子として働いていたのに、何らかの原因でタンパク質をつくる機能を失ってしまったもの(と考えられているもの)を「偽遺伝子( pseudogene )」と言われます。

 しかし、ある遺伝子(つまり、偽遺伝子 Makorin1 - p1 )が重要な役割を持つことを、当時埼玉医科大学(現在は大阪市立大学医学部)の広常真治氏の研究チームが発見し、nature 誌の2003年5月1日号に報告しました。日経サイエンス2004年8月号、或いは(同文)別冊日経サイエンス『崩れるゲノムの常識』においては、この発見は、従来の常識を覆すもので、発見した研究者たち自身が驚いていると広常氏本人が述べています。

(日経サイエンスで取り上げられたこの報告書には、nature 誌へ研究結果発表に至るまでの具体的な研究法やその流れ、研究者の苦悩などが生々しく語られており、結果によって推測できる仮説等、科学好きには読んで楽しめ、親しみを感じ受けられるような内容になっています。)

 偽遺伝子のメカニズムは、RNA は DNA より優れているというような思想を持った RNA ワールド支持者の自説の擁護として使われることが多く、科学雑誌等で nature 誌に報告されたと取り上げても、実際に nature 誌で報告された内容とは異なり、RNA ワールド説を支持するに都合の良い擁護的な展開を見せたり、知識不足から誤った見解で取り上げられることが非常に多くあります。

 この最近再浮上してきた「 RNA ワールド 」については、そもそもは、「生命の起源は RNA だ」とする説を言いますが、最近浮上している 「 RNA ワールド」は、DNA より優れた機能を持つと過大評価し、いささか信仰宗教染みた流れになってきています。

 この「 RNA ワールド」について、広常氏は、「 RNA は遺伝情報を担うだけでなく、リボザイムにみられるように酵素として働くことも可能だ。だが、進化と共に前者の役目は DNA が、後者の役目はタンパク質が担うようになった。そして、RNA はそれらを繋ぐ役目を引き受けると同時に、両者が果たせない高度な機能を獲得した。その意味では《 DNA ・タンパク質の時代》であると同時に《新たな RNA の時代》なのかもしれない」と述べています。

 しかし、広常氏の見解はその座標の見解からでは間違いではないのですが、梵の見解としては、進化の過程上(現在の生物という一つの座標と、宇宙の進化上の中で生まれた生命の進化の過程という一つの座標をおいての見解では)、DNA や RNA は環境に適応して生き延びるために、共存することを選び、自身の不得意な分野は相手に任せ、お互いの得意分野を担って共存しながら進化をしてきた所以に、その成果がアミノ酸であったり、タンパク質など(のシステム)が存在し得ると考えています。これは、両者が共に協力し、共に進化していかなければ成し得なかったものだと考えています。従って、RNA により優れた機能があるのなら、DNA にもそれに相当するものがある筈だと見るほうが妥当だと思えます。(勿論、これは反論を含んだ意味合いのものではありません。真や実に対する探求心からくるものです。)

 実際に、片方だけではうまく事が成されないものばかりで、RNA の優れた機能が取り上げられても、DNA 系列の協力無しには成り立ちません。科学雑誌等では、RNA の高度な機能ばかりが取りあげられていますが、それと同時進行で、地味ではありますが、DNA のより高度化された緻密な機能がわかり、nature 誌に次々と報告が挙げられています。また、情報科学で考えれば、DNA がエラーに対して非常に強いことは、分子構造が変わりやすいという不安定さを持ち、コードしてまわる性質にある RNA にとっては、心強い援護者(或いは保護者)のようなパートナー的存在でもあるでしょう。逆に、 DNA にとっては、RNA は進展をもたらす援護者のようなパートナー的存在でもあると言えます。

 されど、そのような(上記に挙げたような)混沌とした情報の中から、真や実を見出すのは大変な労力がかかるわけで、それをまとめるのも気の遠くなるような労働力であるので、少しずつ纏め上げていこうと思います。

(偽遺伝子のメカニズムについては、分子レベルでの体機能を作るメカニズムと同様、簡単に説明することは難しいので、後日、再編集するなり、続編するなりして取り上げる予定にしています。)

 まず、手始めに、前に触れた 偽遺伝子 Makorin1 - p1 について、 nature 誌ではどのように取り上げられていたのか、当時のその原文より抜粋し要約したものを示します。


分子生物学:遺伝子と偽遺伝子の共犯関係

「偽遺伝子」は機能を持った遺伝子から進化の間に生じるもので、分子化石以上の意味はないとされている。ある偽遺伝子が生物学的に機能しているという予想外の見解は、この一般的な見解に疑問を投げかけることになった。

Jeannie T Lee
nature 423,1-100 1 May 2003 no.6953 news and views p.26 /
Complicity of gene and pseudogene

 つまり、分子生物学やその他の生物学系そのものの学問自体では、「覆された」と論じられておらず、体構造というグローバルな見解からの、分子構造上のシステムでは、新たに詳細なメカニズムがわかってきたことから、見た目上のものだけで決めつける一般的な見解に疑問を投げかけることになったということが述べられています。

 勿論、医学上においては、ポストゲノム到来以来、それまでは見た目上の病理遺伝子が発現したものばかりを追ってきたわけですから、嚢胞腎と骨変形を呈する遺伝子 Makorin1 のマウスでの研究でたまたま見つけた偽遺伝子 Makorin1 - p1 が病理の原因を作っていたことや、正常な遺伝子や偽遺伝子を挿入したことから、救済できたことは、これまでの一般的な見解に疑問を投げかけることになったことも言うまでも無いでしょう。

 ちなみに、誤解を招かないように補足すれば、上記の邦題の「共犯」とは、つまり、体構造のシステムの安定性を図るために、DNA と RNA が(対となって)相互に工夫を凝らし、緻密なシステムを組んでいることを比喩化した言語です。これを、例に挙げれば、正常な遺伝子を崩壊させるものに対し、偽遺伝子 Makorin1 - p1 が囮となって本体の遺伝子 Makorin1 を助けることなど(これ以外にも様々な機能構造が)がわかってきているからです。

 さて…。その疑問を投げかけた論文を下記に示します。


発言される偽遺伝子が対応する相同なコード遺伝子のメッセンジャーRNAの安定性を制御する

偽遺伝子は、機能を持った完全長タンパク質を作り出せない遺伝子コピーである。ヒトゲノムに含まれる後尾電子は、20,000 個にもなると想定されている。偽遺伝子の働きを解明しようとの試みが盛んに行われているが、その生物学的役割は未だにほとんどわかっていない。本論文では、嚢胞腎と骨変形を呈する遺伝子挿入によって作られた変異マウスにおいて、発現される偽遺伝子がメッセンジャー RNA の安定性を制御する役割を担っていることを報告する。

 このマウスへの挿入遺伝子は、 Makorin1 遺伝子の発現される偽遺伝子( Makorin1 - p1 )の近傍に組み込まれていた。この挿入によって Makorin1 - p1 の転写が制御され、その結果、 Makorin1mRNA がトランスに不安定化された。この不安定化には、 Makorin1 の 5' 領域内にあって Makorin1 と Makorin1 - p1 の間で相同性が認められるシス動作性の RNA 分解因子が介在している。Makorin1 , Makorin1 - p1 のどちらかを導入することで、このマウスの変異表現型が救済された。これらの結果から、発現される偽遺伝子がコード遺伝子の制御に特異的な役割を持つことが示され、(タンパク質へコードしない DNA や RNA は分子化石以上の意味はないとされてきたことに対して 非コード DNA や 分子生物学ではその対となる)非コード RNA の機能的重要性が浮き彫りとなった。

埼玉大学: S Hirotsune et al.
nature 423,1-100 1 May 2003 no.6953 letters p.91 /
An expressed pseudogene regulates the messenger - RNA stability of its homologous coding gene

 この発見から、 Makorin1 - p1 を「新たな役割を担った偽遺伝子である」と広常氏は考えています。前述したように、偽遺伝子とは「機能を失った遺伝子の残骸」と記述しましたが、ここでいう新たな役割を担った機能とは、もともとの遺伝しての機能を取り戻したのではなく、偽遺伝子になってから二次的に新たな役割を獲得したものをさします。

 その彼らがまず手がけたのはマウスの受精卵に遺伝子(外来遺伝子)を打ち込んで「変位マウス」を作ることでした。この技術自体は25年ほど前に確立されており、生物学研究では常套手段の1つと言ってよいものです。打ち込まれた外来遺伝子は、一定の頻度でマウスのゲノムに挿入されます。高等生物のゲノムは大部分が機能を持たない領域なので、外来遺伝子が入り込んでもたいていの場合は問題とはなりません。しかし、外来遺伝子が、たまたま遺伝子やその近くに挿入された場合、その遺伝子の機能を破壊することがあります。これを「挿入変異」とよび、とくにショウジョウバエで突然変異体をつくる有力な方法となっています。

 彼らがつくった形質転換マウスは、骨密度が低下したために骨が変形したり、腎臓に水の溜まった袋が生じる嚢胞腎の症状を示しました。こうした異常をもたらした原因を探るには、外来遺伝子が入った場所を調べ、挿入によって壊された遺伝子とその機能をつきとめればよいのですが、実はそう容易なことではありません。何故なら、外来遺伝子がはゲノムの様々な部分に入りこんで広い領域に異常を引き起こす場合もあるからです。こうなると、変異の候補となると、異変の候補となる遺伝子があまりに多数あって、特定が難しくなってしまうのです。(これは PC の場合でもそうなのですが、PC の場合はクリーンインストールという容易な手があります。が、生物の場合はそういうわけにもいきません)

 広常氏によれば、「実は最初から偽遺伝子を目標として研究していたわけではなく、マウスの遺伝子を調べようとしているうちに役割を持つ偽遺伝子に辿り着いた。この遺伝子が働かなくなると、マウスに目で見てもわかる変化が生じるのだ。……(中略)……。私たちの変位マウスを調べたところ、外来遺伝子は幸いにも極めてシンプルな挿入のされ方をしていた。これならば機能を壊された遺伝子の特定もすぐにできるだろうと考えていた。まさかそれに3年もかかるとは思わなかった。こんなに時間がかかってしまったのは、異常をもたらした要因が、全くノーマークだった偽遺伝子の変位だったせいだ。…(省略)…」と、nature 誌に発表後、日経サイエンス誌で述べています。

 では、偽遺伝子とは、いったい、1生物にあたり、どれぐらいあるのでしょう? 参考に広常氏の資料を参考に見てみましょう。

 参考資料:「偽遺伝子研究の資料として

 この偽遺伝子は何をしているのか…これについては、詳細を挙げてしまえば、話が更に長くなってしまいます。結論から先に述べれば、彼らの研究で「偽遺伝子が囮になる」ということがわかりました。つまり、囮になって本体を助けるという、先述した機能のことです。

 ここからが面白くなる話ですが、既に長文ですね…。今日はこれまでとしておきましょう。



(...to be continue...)

 さて…。どう編集しましょうかね…。

2006年02月03日

インフルエンザウイルスの話

 先日ウイルスの話をしましたが、最新号の nature 439,369-508 26 January 2006 no.7075 号ではインフルエンザウイルスの内部構造が明らかになったと挙げられています。小十郎が《すねネタ》としてほしがっている、一連の RNA 関連の話は挙げ終えていないわけですが、今冬季のインフルエンザウイルスは猛威を振るっているので、ちとふれてみましょうか…(^-^)

 ウイルスといえば、ウイルス研究者としては第一人者となる山内一也東京大学名誉教授ですね…。2005年2月〜3月期のNHK人間講座『ウイルス:究極の寄生生命体』の講義は楽しく勉強させていただいた梵です。録画を取って本を買って、梵のストックにしてあります…(〃▽〃)

 さて…。これまでは、どんどん形を変えてしまうインフルエンザウイルスを追うだけで精一杯な研究が続いていましたが、最近は内部構造の解明の努力が進められています…。最近は、インフルエンザウイルスの分子構造上の報告などが挙げられていましたが、その内部構造の詳細が解明されつつあります。

 今回、インフルエンザウイルスの内部詳細な観測結果が報告されました。これは、細胞内でウイルスが複製する仕組みを解明する手がかりとなりそうです。

 以前からわかっていたことからを話すと…。インフルエンザウイルスのゲノムの RNA は 8 個に分かれてタンパク質と共にまとめられており、リボ核酸タンパク質複合体、すなわち RNP を形成しており、これはヒトの染色体の凝縮に通じるものがあります。しかし、感染細胞の中で新しいウイルス粒子が出来る際に、これらの RNP がランダムに取り組まれるのか、選択的に取り組まれるのかは長い間議論が交わされていました。

 今回、この謎を解明するに、河岡義裕たちは、インフルエンザウイルスの RNP が中心の1個の7個が取り巻く独自なパターンを取っていることを、電子顕微鏡を使って明らかにしました。つまり、各 RNP はシグナルを発していて、複数の際にウイルスが RNP の完全な一揃いを選んで粒子に取り込めるよう助けていると考えられています。今回の発見で坑ウイルス薬の開発が早まるかもしないと著者たちは述べています。

 ウイルスの真核生物と同様に、ゲノムを保護し、適時に複製し、確実に子孫へ伝達するための巧妙な仕組みを進化させてきました。A 型インフルエンザウイルスは、直径の約 80〜120 nm 球形または繊維状のウイルスです。外被の中には、890〜2,341 塩基の長さの 8 本の一本鎖 RNA (マイナス鎖)からなるゲノムが入っています。

 この 8 本の RNA は、核タンパク質や PA 、PB1 、PB2 と呼ばれる 3 個のポリメラーゼサブユニットと結合したり、こうしてできた RNA ― 核タンパク質複合体( PNP )は細長い棒を折り返してより合わせたような形になっています(太さ 10〜15 nm 、長さ 30〜120 nm )。
 ウイルスの感染後期には、新たに合成された RNP が核から細胞膜へと運ばれ、ウイルス粒子内に取り込まれることで、感染性のある子孫ウイルスが作られます。

 今回彼らは、ウイルス粒子を透過電子顕微鏡で観察することにより、A 型インフルエンザウイルス内に存在する RNP が独特な形に配置されていることを明らかにしました。中心となる1本の RNP の周りを、長さの異なる7本の RNP が囲み、個々の RNP は、出芽するウイルス粒子の遠位端の外被内側に結合し、垂直に吊り下げられたように配置されていたといいます。

 これは、RNP がウイルス粒子にランダムに取り込まれるという見方に反する観察結果であり、各 RNA 断片が持つ特異的な取り込みシグナルにより RNP が一揃いのセットとしてまとまって取り込まれるというモデルの裏付けとなります。複製を繰り返してもウイルスゲノムを完全に保つには、このような RNP の選択的取り込み機構と、8 本の RNP の独特な配置が不可欠らしい。…と述べられています。

(参考文献:「 nature 439,369-508 26 January 2006 no.7075 号 p.490 『 Architecture of ribonucleprotein complexes in influenza A virus particles / 東京大学、北海道大学および科学技術振興機構 T Noda et al. 』)

2006年02月02日

ニュートリノの補足

 既に要点を掻い摘んで記述してありますが、わかりにくかったんでしょうね…。補足をつけます。

 (コメントとしてつけようと思いましたが、何しろ、ノートに取ったものを挙げているのものなので、この Blog を見ている人にもわかりにくいかと思い、挙げることにしました。だから、小十郎には、TB で返答しますね…^-^)

 46億年溜めてきた地球内部にある放射性エネルギー(反ニュートリノ)のことが知りたいようですが、既に先述してあるように、KamLand の実験においては、「電子ニュートリノ νeと、その反粒子=反電子ニュートリノ ¯νe」と述べてあり、わかりやすいように、その講義では、反ニュートリノと述べられています。

 つまり、νe(電子型)、νμ(ミュー型)、ντ(タウ型)とそれぞれの反粒子。…ということは、 νe とその反粒子が ¯νe であれば、 νμ とその反粒子が ¯νμ 、 ντ とその反粒子が ¯ντ となります。

 上空からくるニュートリノと下からくるニュートリノについては、「 νμ ― ντ (タウ型)振動確認のデータ」で結果が示され、カミオカンデでは、電子ニュートリノとミュー・ニュートリノ(下からくるミュー粒子)の差を区別できます。また、スーパーカミオカンデでは、「ANNETTE」という、反ニュートリノによる地球のトモグラフィー(断層撮影)というシステムが作られていますが、これらのそれまで観測された検出データはありましたが、誤解を避けるためか、反ニュートリノのその名称は述べられていませんでした。

(梵はそれを研究する研究者でないので、著作権の都合上、そのデータ結果を挙げることが出来ません。)

 この講義はノーベル賞を受賞した後のものなので、まだわかっていないことや、これからわかるであろうこと、これからの研究課題も含めて講義がなされています。

 また、講義時点では、θ_1-2 と θ_2-3 はわかっていても、 θ_3-1 がわかっていません。

2006年02月01日

RNA が開く、新たな認識の誤差

 小十郎に催促された、別冊の話の前置きのようなものですが、これを知っているのと知らないのと大きな違いが出るので、今回は、本題に入る前に、これまでの流れを踏まえての話にすることにしました。

 これまでの流れから「今」を話せば…。



RNA が開く、新たな認識の誤差 (ポストゲノムから現在へ…)

 ポストゲノムで盛んに研究がなされている頃、生物学や医学などの総合的な見解から見ずに、対 DNA といった、RNAという小さな世界だけを見ての、RNA ワールドを過大評価し、その力を支持する学者たちとの討論も盛んに行われてきましたが、ヒトゲノム解読(第1回目は2000年から数回にわたり再解読され、ワトソンとクリックの受賞50周年記念を目処に2003年に解読プロジェクトが終了)から更にそのシステムの構造が総合的に明らかにされた以後は、RNA ワールドを過大評価してそれを支持する勢力は衰えていました。

 この2003年のヒトゲノム解読終了を目処に、生物学系の各科目や、医学や、それらに関連する科目は大幅に大改定され、DNA と RNA の構造は、生物や生命体を形成するメカニズムとして、大きな設計図で説明できるようになりました。それらは、扱う種類は違っても、底辺は同じ(原理は同じで、どの科目から入ってもわかる)という、ちょうどフラクタルな展開法で確立させました。これが、RNA ワールドを過大評価してそれを支持する勢力は衰えていた理由の一つとなっています。

 2005年には、解読できたヒトゲノムで、アミノ酸からタンパク質へ変換できる DNA については、形成される土台となる構造については、ほぼ解明し尽くされ、後は細かい構造を残すだけとなりましたが、当然、それらは、DNA だけではなく、RNA 等の構造の解明が進んできたからにあります。

 同年、タンパク質を作れないジャンク DNA が実は《見えないゲノム》であり、 ジャンク DNA には見えなかった真実が隠されていたことがわかってきたことから、生物を形成するシステムが明らかにされるという意味で、更なる真実の解明の扉が開けたと喜んでいたところの梵ではありましたが、多くの生物学者やジャーナリストは、ごく少数の例外を除いて、タンパク質をつくるDNA 塩基配列のみが「遺伝子」なのだというようにセントラルドグマを解釈していたため、これを契機にしてか、RNA ワールドを過大評価してそれを指示する勢力が息を吹き返したのか、RNA ワールドを指示する学者とジャーナリストの隔たった見解による記述が科学誌等で頻繁に目にするようになりました。

 当然、タンパク質を作れないジャンク DNA の構造の発見で覆されたのは、「タンパク質をつくるDNA 塩基配列のみが《遺伝子》なのだというようにセントラルドグマを解釈していた」人のみ、であって、それまでわかっていた 分子構造上の形成上の理論を覆すものではなく、生物学系や医学等の関連するものを否定するものではありません。人間の見解がどうであろうと、物理面においては、設計図が更に精密になっていくだけで、それはちょうど新たに地図が(小さな町名まで)書き加えられるだけのようなものです。

 これも、当然な話ではありますが、RNA の構造を研究している学者の中でも、RNA ワールドを指示しない、生命の設計図を明らかにすることを意図としている有能な学者もいるわけで、その成果を、自説を展開するための道具に使われてしまうというのは、当事者にとっては、意図に反するため心外なことであるのは言うまでもないでしょうが…。

 残念ながら、RNA ワールドを支持することを意図とした研究者やジャーナリストに悪用されるケースも多く見受けられます。

 この一連の状態によって、一般の人々が誤った見解に惑わされなければよいのですが、ヒトは情報によって惑わされやすいので、情報による混乱は避けられないことと思われます。これまでのケースがそうだったように、きれいに整理されるまで待つしかないでしょうが、この状態は梵が危惧している問題の一つとなっています。


 RNA ワールドを指示する学者とジャーナリストの隔たった見解による記述については、nature にも見られ、それは、『 nature DIJEST 日本語版 1月号 January 2006 Vol.03,no.1 p.12-15 :RNA が開く、ゲノムの新たな扉/西村直子(サイエンスライター)』で見ることが出来ます。

 上記の文献には、生物学系の学術には、生物を形成する分子構造上の発見として説明されるものを、「 RNA 研究は、1960年代の分子構造の登場とともに始められた」と(あたかも別枠の RNA 学というものがあると誤解させるような記述を行い)説明し、独自の「 RNA 研究」として切り離してその成果を取り上げる、といった、狭く隔たった見解で理論が展開されてあります。

 その流れは、RNA ワールドを指示する学者を指示する記述となっていたのは言うまでもありません。

 やれやれ…。

 上記の文献から引用すれば…
「ゲノムの大半は、がたくた」。こうした見解が誤りであることがますますはっきりしてきた。〜(中略)〜。これらの RNA のうち 53%は「タンパク質を合成する」という遺伝子発現の機能を担っていなかった。タンパク質を作らない RNA は一体何をしているのだろう? 〜(以下省略)〜」
 …などといった、明らかに生物を形成する子構造を知らない者が書くような、滅茶苦茶な理論展開をしています。

 太陽系の進化の過程上の中で、太陽系第3惑星である地球で生物が先ず始めに RNAを持つ生命体で、 のちに DNA を持つ生命体が出てきたと仮定しても、進化の流れ上、保存能力を持たない RNA 生命体が、保存能力を持つ DNA 生命体と共存することによって、互いに助け合って来れたからこそ、環境に沿って進化をしつづけることによって、今の生物が存在できたわけで、我々がその実体や進化を解き明かすのは、宇宙では地球が基点となって考えられるのと同じで、生物学では、今現存しているヒトを筆頭とする生物たちが基点となっています。科学(学説)の進化の流れもそのようになっています。それらを基準においてわかってきた事実を見ない限り、物象や現象をそのまま見ることは不可能でしょう。



 ちなみに、私は、どこにも属さない(趣味で、最新情報から科学市場の流れに留まらず、現在の科学技術や、教育機関の学説をチェックするといった)、ただの科学マニア(典型的なマニア?)に過ぎないものですが…。



 RNA の製薬においても、RNA の本質が RNA 生命体が「高速度に進化しやすいこと」や、 RNA そのものは、一本鎖であるがために、保存に適していないことを考えると、大きな危険性があることぐらい察知できる筈です。

(因みに、補足としてではありますが、ウイルスの構成成分として、二本鎖 RNA などがありますが、現在のところは研究が進められている段階で、その詳しい構造はわかっていません。)

 また、現在の一般的な薬剤においても、病で歪んでしまっている生体にとって、個々に性質が違い、固体によっては、治療に適用されている薬物が劇薬となったり、副作用が生じる事がよくあります。他に病がある場合、人体機能を阻害してしまうこともあります。

 また、生物には環境のストレスによって機能が阻害されることもあります。人間である場合、精神的なストレスで自立神経の働きが崩れたり、免疫低下で病気が発生する場合もあるのです。すなわち、生活環境や当事者の心理作用も影響してくるので、その場合、機能障害が起こったり、いくら薬剤投与をしても効かずに逆に悪化したり、栄養摂取してもそれを取り込めないといった状態に落ち込みます。尚、心理的ストレスは、本人は気がつかなくても体機能に直接影響してくるものなので、注意しなければなりません。ある検査で異常なしと出ても、内部環境調節機能の障害であることなどもあります。

 本当の意味で、分子サイズで個々に合うようにカスタマイズするとなれば、特に合併症を引き起こしやすい病気や複数の病気がある場合(複数である場合、現在の状態でも使えない薬剤があります)、大幅なコストアップとなるはずで、一般化はむずかしいでしょう。

 また、分子サイズで個々に合うように RNAをカスタマイズしても、分子構造が変わりやすく、安定性がないので、安全性はありません。これを、固定したからといっても、本来のその RNA のシステムが働くべき流れ(プログラムソース)がわからずに固定した場合、機能阻害されることとなります。

 また、ジャンク DNA 中にある(その中の1つのデータですが、ちょうど車でいう「マップ」にあたる DNA の構造…等の)個々のジャンク DNA の構造までわからない限り、確実性のある詳細なカスタマイズは出来ず、このあたりの領域になれば(医療技術の安全性を求めるならば)、ナノテクノロジーの進展(ナノベースによるカスタマイズ技術)がなければ難しいこととなるでしょう。

(所謂、それは、コンピュータのシステムにおけるゲノムのでいう、データ、或いは、ソース、若しくは、プログラム…と置きかえれば、わかりやすいのかもしれませんね…)

 細かく言ってしまえば、まだたくさんありますが、その危険性は DNA 治療や ES 細胞の…所謂、クローン胚の研究での問題よりも(現実面では倫理上の問題や物理的な問題、或いは提供者や母体に生じるリスクなど、実際に生じている問題として)大きな問題がありますが、RNA のカスタマイズでの問題は(RNAの性質が不安定な性質をもつため、より問題が生じやすく、人体の免疫力による拒絶反応の可能性などを考えると)多くあります。

 それは、ポストゲノムで白熱していた当時、DNA治療の失敗から3桁の被害者が出たことから訴訟問題に発展していると大きく報道されていた事件(その後の経過はチェックしていないのでわかりませんが)より、大きな被害がでることが想定できます。


 無知なまま、危険な行動を犯してしまう人間は恐いですね…。
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