2006年06月13日

細胞の構造と構成成分 (1)

 さて…。今回からこのカテゴリーは、微生物機能に学ぶ化学(微生物バイオテクノロジー)から見た「細胞の構造と構成成分」を見ていきます。講義上の流れでは、序論にあたるものです。

 前に「発見運」でも概要をちらっと述べましたが…。

 微生物も細胞からできており、生きている細胞の満たすべき基本的条件を満たしています。その細胞を構成する成分や細胞内で行なわれる化学反応を理解することが微生物を理解する第一歩となります。



細胞説と生命の基本的条件


  1. 生命の基本的条件


  2. すべて生命のあるものは、細胞質膜という膜に包まれた袋状の構造をもっており、これが細胞であります。そして新たな細胞は母細胞が 2 つの娘細胞に分裂して作られ、それ以外に細胞があららに生まれることはありません。

     これが 19 世紀のシュライデン。シュバンらにより提唱された細胞説であり、今日の細胞学の重要な基礎となっています。単一の小さな細胞( 1 mm の 1/1000 の長さである μm レベルの大きさ)で 1 つの生命固体である細菌から主として数十 μm レベルの大きさの細胞約 60 兆個からでいているヒトのような生命固体まで、固体を形成する細胞の大きさや数には多様な変化が見られますが、各々の細胞は、ただ単に細胞という形をしているだけではなく、生きています。そして、生きている細胞は、いずれも以下に述べるような生命の基本的条件を備えています。


    1. 細胞という基本構造、即ち、内部(生命)と外界の間に境界(膜)を持つ。


    2. 境界(膜)を通した外界との物質や情報の交換ができる。


    3. 細胞外部からの物質(光などの物理的エネルギーを利用できるものもある)から、化学反応(代謝)よりエネルギーを得(=エネルギー源)、化学エネルギーとして貯蔵、利用することができる。


    4. 細胞外部からの物質を代謝することにより、自己のもつ化学物質の再生産ができる。


    5. 細胞を二分し、増殖することができる。


    6. 細胞構造の形成、物質変換(代謝)、分裂・増殖のための反応の働き手はタンパク質であり、そのアミノ酸配列の情報プログラムを、ゲノム上のヌクレオチド配列(塩基配列:遺伝情報)として持ち、そのプログラムを実施することができる。


     尚、代謝と働き手である酵素(タンパク質)による燃料(エネルギー)と材料(化合物)の作り直しであり、化学反応であります。また、遺伝情報とは設計書(コピーされる構造をもつ 4 種類の文字で書かれたレシピ)である核酸( DNA と RNA のうちの主として DNA )が持っており、ここに働き手の構造の情報があります。

     一方、化学反応とは化学結合エネルギーの受け渡しであり、結合を作り、結合を移動させ、あるいは結合の崩壊などの組み合わせです。このとき、結合エネルギーの吸収、移動熱への変換などを伴います。

     結合には、通常のエネルギーのものと、非常に高いエネルギーのものがあり、後者の代表が細胞内でのエネルギー通貨として用いられている ATP でありますが、この他、糖の代謝における基質レベルのリン酸化反応で合成される糖のリン酸エステルの中にも高いエネルギーをもつものがあります。

     生物が行う化学反応も、物理学で示されている以下の 2 つの熱力学の方式に従います。

    第一:エネルギー保存の法則
    第二:秩序→拡散(エントロピーの増大)

     また、生物のもつエネルギーの起源は、そのほとんどが太陽光からであり、一部は熱として拡散(無秩序)されてしまいますが、一部は化学結合(秩序)として保存される点が生物の特徴です、

     生物が行う化学反応(生化学反応=代謝)は、秩序だった化学反応でありますが、これは生体触媒(酸素=タンパク質)の利用によるものであり、この触媒は酸素(鍵穴)と基質(鍵)の特異性をもつことにより、特定の化学反応に必要なエネルギーが低減化され、その結果、その反応のみが推進されます。

     また、この働き手である酵素の構造(アミノ酸配列)の情報は設計書である遺伝情報に書きこまれています。


  3. 原始細胞と真核細胞


  4.  さて、細胞の構造を少し詳しく見てみましょう。現在私たちが知っているさまざまな生物の細胞は、すべて 2 種類の細胞に分類されます。 1 つは上に述べた遺伝子情報が 4 種類のヌクレオチドの配列情報として書き込まれている遺伝子の総体であるゲノム染色体(ほとんどの生物においては DNA と呼ばれる化学物質です)が、細胞の中で他の生物有機化学物質と共存している原核細胞であり(核を持たない細胞の意)、もう 1 つはゲノム染色体が核膜と呼ばれる核によって包まれている真核細胞です。

     後者の場合には、細胞質膜で囲まれた原形質の中に、さらにもう 1 つ別の膜で囲まれた領域(核)が存在します。原核細胞をもっている生物固体が原核生物であり、部生物の仲間の細菌(真正細菌と古細菌)がすべてこれに属します。

     即ち、細菌は原核生物で、しかも多くの場合には、単一細胞で 1 つの生命体です。

     一方、真核細胞をもっている生物固体が真核生物であり、植物や動物などいわゆる高等動物や、微生物の仲間でも酵母や糸状菌(かび)がこれに属します。

     なお、真核微生物も細菌と同様、単一細胞(大きさは 10 μm 程度で、細菌よりかなり大きい)で一固体のものもありますが(主として酵母など)、糸状菌では多細胞の構造をとるのも多くあります。

     ところで、現存する細菌と真核生物とを比較したとき、気がつくのが、この大きな 2 部門の差異が、決して核膜の有無だけではないということです。本講義では微生物の化学に関することを中心とするため、詳しい説明は省きますが、両部門では、染色体の存在状態は(細菌では環状のもの一本の場合が多く、真核生物ではすべて線状で、複数存在します)、遺伝情報の流れにおいて、DNA から RNA へと写しとられる転写の段階で、前者は 1 種の RNA ポリメラーゼのみ持ちますが、後者は異なる 3 種の酵素を持ちます。

     DNA 配列中に後者はイントロンと呼ばれる RNA に転写された後で切り取られる配列をもつちますが、前者にはイントロンはありません。この他にも、転写された RNA への修飾の有無、RNA からタンパク質を合成する場であるリボソームの大きさの差異、など、数え上げれば十指に余る断絶があり、進化の過程で核を獲得し、真核生物が誕生したときに、遺伝情報の保持や流れの過程にドラマチックな変化が起きたことが推定されます。



(...to be continue...)

 次回は「細胞の構造成分」の話です…。
posted by 梵 at 16:51| Comment(0) | TrackBack(1) | 体構造の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: RNAポリメラーゼRNAポリメラーゼ (RNA polymerase) とは、ヌクレオチドを重合させ、リボ核酸|RNAを合成する酵素のこと。「ポリメラーゼ」は、より英語発音に近い「ポリメレース」と呼ば..
Weblog: 酵素BOX
Tracked: 2007-09-08 10:30
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